(219)火の用心

 日本では、毎日どこかで火災が起きている。


 大火災もあれば、ボヤ騒ぎ程度のものもある訳で。


 しかし、今年は元旦から大火災が頻発していて、ちょっと気味が悪い程だ。


 1月1日は能登地方の震災による火災。

 1月2日は羽田空港で航空機の火災。

 1月3日は北九州の商店街で火災。

 1月4日は西新宿のマンションで火災。

 1月9日は田中角栄宅で火災。


 大きな火災だけでも年明け10日間で5件もニュースを騒がせている訳で。


 確かにこの季節は空気が乾燥しているし、小さな火種でも大きな火災になりかねない。


 昔は「マッチ1本火事の元」と言いながら街を練り歩く町内会の活動があちこちで見られたが、最近はマッチなんて使わないし、タバコも電子化してきて火災リスクはかなり減っている筈なんだよな。


 住宅も耐火性能が向上し、延焼が広がらない様になっている筈なのだが、何故か火災のニュースが目立つ訳で。


 で、そんな話をコンサル業務の際にしていたら、顧客の若い担当者が、


「マッチって、実物を見た事が無いんですよね~」


 と言っていた訳で。


 え、マジで?


「じゃあ、マッチ売りの少女とか、何を売ってるのかよく分からなかったって事ですか?」


 と訊くと、


「何だかよく分からないけど、ライターみたいなものなんですよね?」


 と逆に質問される始末だった訳で。


 …マジか。


 もはや、マッチ売りの少女は「ライター売りの少女」という認識な訳か…


「ちなみに、マッチ売りの少女って、どんな話か覚えていますか?」


 と僕が訊くと、若い担当者はしばらく考え込み、


「火事にならない様に、火の用心しましょう。みたいな感じじゃなかったでしたか?」


 だそうな。


 …そうですか。


 火の用心ですか。


 まあ、そうした教訓もアリだとは思いますがね。


 貧しい少女の儚い感動物語が、そうした形で解釈されるのは何だか寂しい気もするな。


 …そう言えば、YouTubeで邦楽のなつメロを聴きながらオフィスで高校生のアルバイト達と仕事をしていた時に、「ポケベルが、鳴らなくて〜」みたいな曲が流れていたのだが、その高校生が、


「ポケベルって何ですか? 防犯ブザーみたいなやつですか?」


 と言っていたっけな。


 あの時も自分が年老いた事を痛感したが、今日もなかなか衝撃だったな。


 まあ、ともあれ火事には気を付けなくちゃならないのは確かな訳で。


 僕はスモーカーでもあるし、大切だよね。


 火の用心。


 皆さんも、どうか火の元にはお気を付け下さいませ。

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