彼女は見た
『いきなり……いきなりだったんだくそおおおおおおおっ!!』
「あはは、茜パイセンはまた今度楽しみましょ」
「そうですわ。またいつでもお誘いしますので」
夏休みのとある日、あの約束していた日がやって来た。
朝早くから美空の家が用意してくれた車に乗り、全員で隣県にあるとされる彼女の別荘に向かったのだが……まあ豪勢な建物だった。
俺と真治、そして幸喜は初めて見た彼女の別荘に絶句し、テレビでしか見たことねえよと言って辺りの散策に夢中になるほどだ。
「茜先輩、残念だったね」
「その割にはちょっとホッとした様子だけど?」
「なんか、水着姿をネットリ見られる気がしたからね」
「あ~」
ちなみに、冒頭の電話でも分かるように茜先輩は急遽用事が出来たらしい。
それで出発前に美空から伝えられてはいたのだが、未練があるらしく今また彼女は電話をしてきたというわけだ。
血染からしたらちょっと安心らしいが、別にこれは嫌っているというわけではなく単に疲れるからだろうか。
「にしても真白ちゃんか……血染ちゃんにそっくりだな」
「あぁ……まあでも、詳しいことは聞かねえよ。よろしく真白ちゃん」
「うん。よろしく二人とも」
真治と幸喜にも真白は紹介したのだが、血染にあまりにそっくりな容姿と人にはない体の僅かな模様であったりに驚きはしたものの、思いの外簡単に彼らは真白のことを受け入れてくれた。
「それにしても……ありがとな二人とも、真白のこと」
「良いってことよ。美少女だからな」
「うむ。美少女だからな」
あ、こいつらはこうだったわ。
変わりのない二人の様子に心の中で感謝しつつ、早速海に出ようということで女性陣は別室へと移動した。
俺たち男勢はすぐに着替え終え、美空のお付きの人たちがパラソルなどを用意してくれた海岸へと移動する。
「……おぉ」
「海だなぁ」
「青い空、白い雲ってか?」
遠くまで澄んだ青空と広大な海は正に絶景だった。
ちなみに、さっきも言ったが美空のお付きの人が何人か俺たちの為に来てくれており、パラソルの下でたこ焼きや焼きそばなんかも作ってくれて本当に至れり尽くせりといった感じだ。
「凄い贅沢な気分だぜ」
「……凄いなお嬢様」
金持ちだからこそ成せる技という気もする。
そもそもプライベートビーチということもあって他の利用客は当然居なく、俺たちがこの浜辺を独占している状態だ。
何をするにも自由ということで、釣り竿なんかも用意されており奥の岩場が釣りの穴場だとも教えられた。
「お待たせ兄さん」
そして、時は来たれり。
背後から聞こえた天使の声に俺は振り向く……そこには四人の天使、否! 天女と見違えるほどの美女が居た。
「おぉ!!」
「……………」
一人放心しとるがな……っと、まあそれは置いておくとして。
血染と真白、美空と結華はそれぞれ色が違うビキニスタイルなのだが、やはり俺が目を惹かれたのは血染と真白だった。
まずは血染!
彼女は水色の水着で花柄の模様が薄く描かれており、出会った時から更に成長したその大きな膨らみが大変眼福だ。
そして真白!
彼女も血染とそこまでの変化はないのだが、今回はオレンジの水着ということでより一層明るい色へとシフトした感じで……うん、もう言うべき言葉が何もない綺麗だとしか言えない。
「最高だぜ血染と真白!」
「うん♪」
「えへへ♪」
二人ともぴょんとジャンプをするように俺の元に飛び込んできた。
二人の柔らかさの存在感を多分に感じながら、俺は我慢できずに二人を力いっぱい抱きしめようとして、そこでハッとするように我に返った。
(やはりおっぱい、おっぱいは全てを解決する力を秘めている)
なんで女性の胸ってこんなに凄いんだろうなぁ。
抱きしめられた時に感じる僅かな感触もそうだが、直に触れた時の手の平に感じる感触も幸せの一言だし、揉んでも吸っても何をしても幸せになれるのだ。
最近はとあるゲームを参考にするように血染が顔を包んでパフパフしてくれるのだが……っと、考えに没頭しすぎるのも良くないな。
「……っ!?」
二人の破壊力が強いのはもちろんだが、更に奥に控える美空と結華も凄かった。
結華も美しいのは当然だが……やはり、ゲームの画像でも見ていたその圧倒的な胸が俺の視線を釘付けにしていた。
(……デカすぎだろ。流石105センチのバストゥ!!)
あまりにジッと見過ぎて血染と真白に優しく頬を抓られてしまい、結華は凄いよねと言って美空の胸を揉んでいる。
「ちょっと結華さん?」
「ごめんごめん。やっぱり大きいなぁと思ってね」
ちなみに男子二人はこの光景を見て鼻血を出していた。
その後、すぐに遊ぼうということになってみんな海に入って行った。
この辺りは整備されていることもあり、沖の方に網も張っているらしくクラゲなどが侵入する心配もないとのことで、普段こういう場所に来ない楽しみを思いっきり味わうように俺たちは遊んだ。
そして――。
「やっぱり、海に来たらこういうシチュエーションじゃない?」
「……………」
みんなから少し離れ、俺は真白をその身に取り込んだ血染と岩陰に訪れていた。
少し静かな空間で休憩したかったというのもあったのだが、ちょっとあっちに行こうよと言われて血染に手を引かれたのである。
「兄さん、ドキドキしてる?」
「そりゃするよ。だって大好きな女の子が目の前に居るんだからさ」
「っ……えへへ、兄さんったら本当にいつも好きな言葉をくれるんだから♪」
さっきまでビーチバレーなどをしてちょっと疲れてるけど、どうも血染の様子を見るに素直に休憩とはいかなそうだ。
ならば先手あるのみと、俺は血染の頬に手を添えてキスをするのだった。
『あちらの岩場は誰も特に寄り付きませんので、血染さんたちとイチャイチャするならおススメですわよ♪』
あれは一体……っ!?
「兄さん? あたしと一緒の時に別の女の子を考えるのはNGだよ」
そう言って俺は血染に更に激しいキスをお見舞いされるのだった。
▼▽
それは彼女、美空にとって別に意図したものではなかった。
夏の日差しを感じながら呑気に居眠りをする真治と幸喜、自分の家に仕える使用人と楽しそうにお話をする結華から離れていたその時だった。
美空が訪れたのは大河に教えた穴場の岩陰だ。
「……意識せずに来てしまいましたわ。それだけ、大河さんたちのイチャイチャを私の心が求めているということでしょうか」
そう、意図したものではなく勝手に体が動いたのである。
美空は無粋だと思いながらもただただ大河たちのイチャイチャする尊い姿が見たかった、それに……冗談だとは思うが血染も言っていたのだ。
『あたしと兄さんのイチャイチャする姿、別に見ても構いませんよ?』
『なんですとおおおおおおっ!?!?』
淑女にあるまじき雄叫びを上げてしまったのも仕方のないことだ。
もちろん覗きなんてものは無粋、二度目だがそれは美空も分かっている……しかし彼女は欲望に負けてしまった。
「っ!?!?!?!?」
そこで見たのは静かに寄り添う二人だった。
何もしておらず、何かをしようとしているわけでもなく、ただただ寄り添っているその姿が美しかった。
美空からすれば背中しか見えていないものの、それでも血染の肩を抱く大河の様子からはとてつもない優しさを感じさせるかのようで……美空はその後、すぐに引き返した。
「どうしたの?」
「いえ、何でもありませんわ」
ホクホクした顔で帰ってきた美空に結華はそう聞いたものの、最後まで美空は何も言わなかった。
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