荒ぶるA子ちゃんのこと
423:ハカセ
なんかA子ちゃんが怖ひ……
424:名無しの戦闘員
どしたん? またエレスちゃんにちょっかいかけたとか?
434:ハカセ
うんにゃ いきなり電話かかってきたかと思ったら、
A子『今すぐうち学校に来てください。アニキさんも呼びますから』
ワイ「え? ワイ仕事中」
A子「今、すぐです! フィオナちゃんも待ってます! ああ、くれぐれも気合い入れず! 自然な感じでお願いしますね!」
えぇ、なんなの……?
435:名無しの戦闘員
なんかしでかしたんじゃない?
436:名無しの戦闘員
ハカセだしなぁ、変なところで怒らせたんだろ
437:ハカセ
ワイへの厚い信頼
まあでも、アニキも来るんならって、とりあえず書類は後回しにして出かけたんや
せっかくフィオナたんと会える機会やしな
438:名無しの戦闘員
元戦闘員に押し負ける統括幹部代理……
439::名無しの戦闘員
というかハカセ基本的に年下に弱いというか甘いもんな
440:ハカセ
正直自覚はある
言われた通り学校に行ったらアニキが既に来とった
アニキ「こっちだ、ハカセ」
ワイ「どもっす。アニキもA子に呼ばれたんですか?」
アニキ「ああ。なんか妙に怒ってるみたいだったけど」
アニキに対してもぷんぷんモードは中々レアや
で、校門のところにフィオナたんとA子ちゃん
あと学校のお友達かな? 数人おったんやけど
なんでか、いきなり崩れ落ちて膝をついた
四つん這いになって呻いとる奴までおったな
442:名無しの戦闘員
ほんとになんで⁉
443:名無しの戦闘員
ハカセなにした⁉
444:ハカセ
なんもしとらんわ⁉
いきなり呼び出されて仕事中断してまで行ったのになんなんや……
◆
その夜、ベッドの上で私はスマホを眺めていた。
ハルっち【くだらない話に付き合わせたかな?】
Sayuki【いえ、とても楽しかったです】
ハルっち【そう言ってくれると助かる。それじゃ沙雪ちゃん、おやすみ】
Sayuki【はい、おやすみなさい晴彦さん】
晴彦さんとは以前より大分親しくなったと思う。
毎日連絡は少し恥ずかしいから、三日おきくらいにメッセージのやりとりをしていた。
「にへへ……」
普通に今日はこんなことあった、みたいなお話なのに何故か頬が緩んでしまう。
なんというか、そういう感情を自覚してから特に。
でも初めての経験だからなかなか前に進めない。
誰かに相談できないかな……そう考えたところで、私には思い当たる人物がいた。
そうだ、英子先輩は晴彦さんのことを以前から知っているじゃないか。
「へ? 好き? 晴彦さんって、あのハルさんのことが?」
翌日、私は久谷英子先輩に相談を持ち掛けた。
喫茶店ニルのマスターは晴彦さんの会社の元幹部らしい。その繋がりで、英子先輩も晴彦さんとは親しくしているとか。
「は、はい。実は……」
「えぇ……。だ、大丈夫、沙雪ちゃん? 騙されてない? ハルさん、ぱっと見は貴公子だけど行動は奇行種だよ?」
ひどい。
「でも、前は英子先輩も褒めていましたよね?」
「う、うん。確かにハルさんは真面目で義理堅い、優しい人だよ? 優秀なのも間違いない。だけど、バカと天才の紙一重の上で反復横跳びしているような面白お兄さんだから」
とてもひどい。
「カッコいいのは認めるし、凄いし、頼れるの。でもそれはそれとして恋愛対象としては、うーん……。トランクス一丁でお酒飲むし、鈍感だし突発的に変なことするし。抱え込み過ぎる性格だし」
腕を組んで唸っている。
英子先輩からすると、晴彦さんの評価はすごく微妙らしい。
「ほんとに、変な人だよ?」
「その、はい。ちょっとずれてるな、ってところは私も知っています。でもそれを含めて可愛いと、言いますか」
「恋は盲目だなぁ……。うん、でも応援、しづらいなぁ。ハルさんの周囲を色々知ってる身としては」
最後の方はよく聞こえなかったけど、英子先輩はあまり賛成してくれないようだ。
ちょっと残念。
結局相談は上手くいかないままお流れになってしまった。
もちろん、そのくらいでは仲違いしない。
今日は喫茶店ニルがお休みなので、私は英子先輩と下校することになった。
でもその途中、同じクラスの男女グループに呼び止められる。
「あっ、神無月さん今帰り? これから遊びに行くんだけど、どう?」
「うっそ、隣にいんの久谷先輩じゃーん! 先輩もどうすか?」
男子はとても盛り上がっている。
不本意ながら神無月沙雪の名はこの学校では有名だ。
全国展開する百貨店の社長令嬢で、自分で言うのは自惚れが強くて嫌だが、今時珍しい清楚な美少女との評価を受けている
そのおかげでクラスメイトは好意的に接してくれるが、誰からも好かれるわけではない。
実際、グループの中の派手な女子は私を馬鹿にするような眼で見ていた。
「やめといた方がいいよぉ、神無月さんオジ専だから」
その女子はたぶん私が嫌いなのだろう。
すごく刺々しい言い方をする。
「へ、オジ専?」
「そうそう。前さぁ、聞いちゃったんだぁ。神無月さん、なんか26歳のおっさんにご執心なんだってぇ?」
確か、前にクラスで恋バナに巻き込まれた時、クラスメイトに少しだけ晴彦さんのことを知られてしまった。
それが回り回って彼女に伝わってしまったようだ。
「うわ、マジかよ」
「えー、人は見かけによらないねぇ」
「でっしょ? しょぼくれたおっさん好きとか、まじないわー」
皆、くすくすと笑っている。
すごく居心地が悪いし、嫌な気分だ。
その中で、一人が前に出る。よく私を誘ってくる男の子だ。
サッカー部で活躍しているそうで、イケメンだということもあって女子に人気なのだとか。
ああ、派手な女子はちらちらとその彼を見ている。
彼が好きで、誘われる私を目障りに思っているのかもしれない。
「神無月さん、やっぱりさ遊びに行こうぜ」
「いえ、これから先輩と帰りますので」
「なんかさ、そういうおっさんとか、よくないって。同年代で遊んでさ、カレシ作ったりして健全な方がいいんじゃないか?」
健全じゃないみたいな言い方をしないでほしい。
というか、私は彼の誘いをいつも断わってるのに。
派手な女子はさらに憎々しそうに私を睨む。
「やめときなよー、その子にはしょぼくれたおっさんの方がお似合いだって」
「でもさ、そいつロリコンじゃん。んな変態と神無月さんが、とかないって。たぶん、そのおっさんが妙な粘着してくるんだろ? 大丈夫、俺がびしっと言ってやるからさ」
サッカー部の男子の発言に、カチンときてしまった。
そして私は──
「ハルさん? こんにちは、すみませんけど今すぐ根戸羅学園に来てください。零助さんも呼びますから」
『ああ、英子か。どうした、なにかあったのか?』
「はい。今、すぐお願いします! 沙雪ちゃんも待っています! くれぐれも気合いを入れず! 自然な感じでお願いしますね!」
『……まあ、ちょうど手が空いたから構わないが』
─────私が怒るより先に、何故か英子先輩の方が怒りの頂点に達していた。
◆
448:ハカセ
いやな? ホンマにワイも状況が分かっとらんのや
一から順を追うけど、なんも悪いことしとらん
合流したアニキと雑談するワイ
アニキ「学校かぁ、こっちの教育機関は22歳まであるんだよな?」
ワイ「専門的なことを学ぼうとすると、もっと上の年齢まであるようです」
アニキ「すごいな、そんな年齢まで勉強とか」
ワイらの次元やと15歳で基本教育が終わるからちょっと不思議な感覚や
もちろん専門に進もうとすれば何年も多く学べるけどな
445:名無しの戦闘員
そっかぁ やっぱ別次元でも勉強はあるのか……
446:名無しの戦闘員
異世界なら学校行かなくていいなんて都合のいい話はないよね
447:名無しの戦闘員
「学ばなあかん」じゃなくて「学べる」と自然に書く時点でもう通じ合えないと分かる
448:ハカセ
久々にアニキと二人でのお喋りたのちい
ワイ「アニキ、店の調子はどうですか?」
アニキ「おかげさまで。今度、新しいケーキを出すんだ」
ワイ「ほう。それは見逃せない。ちなみに、せくしーやA子とは?」
アニキ「……聞いてくれるな」
ワイ「安心してください。ワイは既に日本での結婚式の作法をマスターしています。新郎と新婦二人の友人代表として挨拶する準備はできてますぜ」
アニキ「有難いけど嬉しくない……! 完全に三人での結婚を前提にしてやがる」
一頻りからかい終えると、そろそろ学校に到着
校門のところにはフィオナたんとA子ちゃん、とそのお友達の男女グループの姿があった
449:名無しの戦闘員
ハカセはアニキをいじるの好きだな
450:名無しの戦闘員
元上司なのに遠慮がないw
451:名無しの戦闘員
jk嫁……せくしー嫁…羨ましすぎる……
452:ハカセ
遠慮するような仲でもないからな
てか、もういい加減に観念して二人とも妻にすりゃええのに
せくしーにしろA子ちゃんにしろアニキに任せりゃ安心やし
452:名無しの戦闘員
時々パパ目線になるよね
453:せくしー
ですよねぇ
悪い気はしないですけど
454:名無しの戦闘員
ハカセが激重なのはもうバレてるからな
455::名無しの戦闘員
……ん?
456:名無しの戦闘員
あれ?
457:せくしー
元デルンケム四大幹部が一人にして作戦参謀だった私を舐めないでくださいね~
ついにプロテクトを破ることに成功……はしていませんが
どうにか「にゃんj歴二年以上」を偽装して潜り込むことは出来ました
そうですよね、ハカセさんは神霊工学者なんですから
情報技術じゃなくて電子霊体を使った隠蔽に決まっていますよね、気付くのが遅れました
というかスレの隠蔽のためにどれだけの力をつぎ込んでいるんですか
458:名無しの戦闘員
おおー、せくしーさんおひさー
459:名無しの戦闘員
よく分からん単語出てきたけど気にしないのが俺らクオリティ
そんなことより歓迎するぜ、せくしー!
460:名無しの戦闘員
( ゚∀゚)o彡゚た・に・ま! た・に・ま!
461:ハカセ
え? マジにせくしー?
………ワイがゴリマッチョに人間砲弾された時の年齢は?
462:せくしー
>460 さすがにお酒が入ってない時は恥ずかしくて無理です……
ハカセさんがゴリマッチョさんに敵軍目掛けて投げ飛ばされたのは22歳の時ですね
その時の台詞が「ああ、人って空を飛べるんだね……」です
そもそも飛翔魔法があるから普通に人は空を飛べますが
463:ハカセ
間違いない、せくしーや
464:名無しの戦闘員
どんな確認の仕方だw
465:名無しの戦闘員
敵軍目掛けて投げ飛ばされるって何があったw
466:せくしー
あとハカセさん、仕事中ってA子ちゃんに
467:ハカセ
あ、やめて ワイのクールなイメージを崩さないでね?
468:せくしー
はーい でもそういう気遣い方がハカセさんって感じで嬉しいです
469:名無しの戦闘員
???
470:名無しの戦闘員
そもそもクールなイメージなんてねえよw
471:せくしー
さて、茶化すのはここまでですね
ハカセさん、話の腰を折ってごめんなさい
こういう場でも交流できるのが嬉しくて少し調子に乗ってしまったみたいです
これからは余計なことは書き込まないので続きをお願いします
472:ハカセ
むう 分かったわ
言っとくが、せくしーがおることを嫌がっとる訳ちゃうからな
ここでのワイはあくまでハカセ、そこさえ踏まえてくれるならレスは全然ええよ
さて、話の続きや
ワイらはフィオナたんとA子ちゃんに挨拶した
アニキ「A子、どうしたんだ急用って」
ワイ「A子ちゃん、フィオナたん。こんにちは」
A子「お待ちしていましたアニキさん、ハカセさん」
フィオナ「ハカセさん、こんにちは」
最近はだいぶ慣れたのか、フィオナたんはワイに対してにっこり笑顔で挨拶してくれるようになったわ
かわええ
473:名無しの戦闘員
やっぱせくしーと絡む時のハカセってちょっと印象違うな
474::名無しの戦闘員
しかしせくしーに見られて大丈夫なのかね
わりと変なこと言ってるし、ヤバいことも言ってるぞ
475:ハカセ
せくしーは基本いい子やぞ
ここで知ったことを悪用はせんし、現実のワイとはちゃんと分けて考えてくれる
そういう子やなかったら速攻で排除しとるわ
476:名無しの戦闘員
すげえ信頼だ
477:名無しの戦闘員
正直羨ましい ハカセもせくしーもどっちも
478:ハカセ
472の続き
A子ちゃんが今度は友達にワイを紹介する
A子「こちら、ハカセさんです。26歳の男性ですが、ハカセさんの妹とフィオナさんが友達なの」
フィオナ「はい、その縁で仲良くさせていただいています」
フィオナちゃんはにっこり笑顔
他にもワイが会社の幹部だの、いい人だの妙に持ち上げてくれる
なんや照れるなぁ、なんて思っとったら急に男の子の一人が膝をついた
ワイ「えぇ⁉ だ、大丈夫か⁉」
男の子「ごめんなさい、許してください……」
なんで謝んの? 慌てるワイ
A子「大丈夫です。あれ、彼の趣味なんです」
ワイ「いや、でも」
A子「ささ、行きましょう」
呼ばれたのに特に何をするでもなく帰る流れに
なんかお友達もぽかーんとしとるし
ワイ「よう分からんけど、A子ちゃんやフィオナたんと仲良くしてくれてありがとな。そんじゃワイらはこれで」
軽く挨拶したらA子ちゃんが「さすがです」と何故かご満悦
もうホンマに意味が分からんかった
479:名無しの戦闘員
俺らも意味分からん
480:名無しの戦闘員
単純にハカセ見せびらかしたかっただけかもよ
外見はイケメンだし
481:名無しの戦闘員
あー、あるかも
482:ハカセ
マジか ならもうちょっとアピールしといたほうが良かったかな?
483:名無しの戦闘員
そうしたら失敗するのが目に見えてるからの気合入れるな、だろうがw
◆
「う、うそ……」
「マジで」
「二人とも、すご」
英子先輩に呼び出されて、晴彦さんと喫茶店ニルのマスターがやってきた。
趣は違うけれど二人とも容姿に優れた男性だから、先程まで晴彦さんを「しょぼくれたおっさん」と馬鹿にしていた派手な女子も目を大きく見開いている。
「マスターの方は知っている人もいますよね。こちらが、葉加瀬晴彦さん。26歳男性です」
英子先輩は晴彦さんを紹介するついでに「電子系企業の幹部役員で、社長にも頼られるほど」と付け加えていた。
晴彦さんをロリコン呼ばわりした男子は驚き過ぎたのか、少しバランスを崩して膝をついてしまったほどだ。
たぶん、敗北感なんだと思う。晴彦さんが心配をして声をかけると余計に悲しそうにしていた。
「ふぅ、どうですか? しょぼくれたおっさんなんて言っていましたが、貴方達が社会人になった時が楽しみですね」
同じ26歳になった時のお前たちはどうだ、と男子たちを見る。
英子先輩にしては珍しいくらい、敵意をむき出しにした態度たった。
結局男子たちは何も言わなかった。勝ち誇った英子先輩は「さあ、帰りましょう」と私達を促す。
「ああ、君達。英子と沙雪ちゃんの友達なのかな。この子達と仲良くしてくれてありがとう。それじゃあ、これで」
残された男女グループを私達の友達だと思ったのだろう。
晴彦さんは優しく微笑みかけた。
今度は女子が完全に黙った。……うん、正直気持ちは分かります。
「さすが、意識していない時のハルさんは強いです。最強は零助さんですけど」
英子先輩はご満悦だ。
結局先輩は、晴彦さんを馬鹿にされて怒っていたんだろう。
たぶん私以上に。
自分では奇行種とか馬鹿とか普通に言っていたのに。
「あの……」
「断っておくけど、私はハルさんに恋愛感情とかないからね? 優しくて真面目な人ではあるけど。変な人だと思ってるし、鈍感だし。日常生活では、ほんっとーにポンコツだから」
私の質問を先回りして英子先輩は早口でまくし立てる。
「でもね、ハルさんをよく知らない人が、あの人の頑張りを見もせずに馬鹿にするのは、ものすっごく! 腹が立つの! ふーんだ。ちょっと部活で活躍しているくらいでハルさんに勝てると思わないでよ」
つまり、彼女にとって晴彦さんは、とても変で複雑な人物らしい。
「沙雪ちゃん。この後、用事はあるかな?」
「いえ、特には」
「それなら夕食でもどうだろう」
「えっ。はっ、はい。もちろん!」
思わぬ誘いに私はちょっと前のめりになってしまう。
「よかった。マスター、英子も行きましょう。あ、もちろんお酒はナシで」
………………とりあえず、英子先輩の言う通り鈍感だけは間違いなかった。
現状を変えるためには私の方から動かないといけないかもしれない。
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