沙雪ちゃんと晴彦さん③



748:名無しの戦闘員

 なぁなぁハカセ

 この前書き込みしてたせくしーってさ、A子ちゃんと仲悪いの?


749:名無しの戦闘員

 そういやその質問だけ答えなかったよな


750:ハカセ

 うんにゃ むしろ仲ええぞ

   

751:名無しの戦闘員

 あれ、アニキを巡っての三角関係じゃなかったっけ?


752:名無しの戦闘員

 幹部と戦闘員が仲いいのも不思議な感じ

 

753:名無しの戦闘員

 それ言ったら統括幹部についていく一介の戦闘員ってのも変じゃない? 


754:ハカセ

 そこら辺の話か 

 A子ちゃんは、小さな頃に食うに困って組織入りした女の子でな

 慣れん環境で戸惑ってたところをアニキがしばらく面倒を見てたら「アニキさん、大好きです!」って恋愛感情を抱くようになってもたんや

 ある意味ワイと猫耳くのいちの関係に近いな

 まあ猫耳は恋愛感情ないし、いい感じにワイをいじってくるけど


755:名無しの戦闘員

 あー、アニキが憧れのお兄ちゃんな感じか


756:名無しの戦闘員

 そういや四人の戦闘員のアイドルの中でA子ちゃんだけ幹部連中と親しいもんな

 アニキが世話してたから他と繋がりもできた、みたいな?


757:名無しの戦闘員

 統括幹部が目をかける戦闘員とか嫉妬すごそう


758:ハカセ

 >756 せーかい


 アニキというか、統括幹部直属部隊の一員という形やから目に見えた嫌がらせはなかったと思う

 内心の不満までは読めんけどな

 首領とかは「むむむむ……」みたいな感じで睨んでることもしばしば 


759:名無しの戦闘員

 しゃーない


760:名無しの戦闘員

 お義兄ちゃんが構う可愛い女の子とか普通に嫌だろうしね


761:名無しの戦闘員

 自分のポジション奪う敵だわな


762:ハカセ

 A子ちゃんは離反するアニキについていく形で組織を辞めた

 I奈ちゃんとかは組織内に両親いるけど、A子ちゃんは違うからな

 アニキのおらん組織にそこまで執着もなかったんやろな

 ってことでワイはアニキとA子ちゃんの戸籍を偽造した、クソほど遠いけど一応親戚って形で

 一緒に暮らす際の理由付けになるし、いざとなったら結婚もできるようにな


763:名無しの戦闘員

 ハカセ面倒見いい上に気遣い屋だなぁ


764:名無しの戦闘員

 これで彼女いない暦=年齢なんだからすごいよねw

 

765:ハカセ

 褒めるか貶めるかどっちかにしてくれませんかね……

 そんなこんなでA子ちゃんは学生やりつつアニキのお店のウェイトレス

 付き合い長いからせくしーとも普通に仲ええよ、二人ともいい子やしね 


766:ハカセ

 たとえば、この前の日曜日のことや

 ワイはその日も忙しく仕事をしとった

 ついのめり込みすぎて気付けば三時 お昼も食べとらんからお腹がくーくーや

 とはいえ、ここでがっつり食べると夕飯が入らんくなるし

 そや、休憩がてらアニキのところで軽くサンドイッチでもつまもかな

 そう思いながら喫茶店に向かうと途中で偶然せくしーに出会った


 せくしー「あら、ハカセさんこんにちは~」

   ワイ「偶然やね。アニキんとこ?」

 せくしー「はい、実はお昼を逃してしまって今から軽く何か食べようと」

   ワイ「なんやワイと同じか」

 せくしー「よろしければご一緒してもいいですか?」


 もちろんワイはオッケーや

 ちなみにせくしーは短大卒って設定で既に就職しとる(ワイ偽造並感

 この子も結構忙しいみたいやな


767:名無しの戦闘員

 せくしーさんと一緒にご飯?!


768:名無しの戦闘員

 やっぱり仲良しだねぇw


769:名無しの戦闘員

 せくしーさんの作品は温かみがあって好きだからw


770:ハカセ

 あのちょっと 隙あらば弄ってくんのやめてもらえません?

 だいたい今回の主役はワイやなくてアニキや


771:名無しの戦闘員

 せくしーはアニキにベタ惚れなんだよな


772:名無しの戦闘員

 普通はA子ちゃんとも微妙な関係になりそうなもんだけど


773:ハカセ

 修羅場期待した人たちよ、申し訳ない

 三角関係ではあってもあの二人ギスギスはしとらんのや


 お店に行ったワイは当然せくしーと相席、そこに注文を取りにくるA子ちゃん


   A子「いらっしゃいませ、ハカセさん、せくしーさん」

 せくしー「こんにちは~、A子ちゃん」

   ワイ「あ、A子。ワイはローストビーフサンドとアイスコーヒーで」

 せくしー「私は、エビとアボカドのサンドイッチと、アイスミルクティーを」


 まあ全員元同僚やから基本は和やかよ 


  アニキ「ああ、せくしー。いらっしゃい」

 せくしー「アニキさん、こんにちは~」(手をフリフリ

   A子「あ、私も私も」(手をフリフリ

  アニキ「あ、はは……」

 

 そう、せくしーとA子はライバルでなく協力者

 いかに二人してアニキの嫁になるか画策しとる

 理想の結婚式はアニキを挟むようにウェディングドレスの二人が立つ形だとか

 どんな戦場でも臆さない勇猛果敢な戦士アニキが冷や汗をたらしとる


   ワイ「A子。やっぱり追加このマーブルクッキーもお願いできる?」

   A子「はい、かしこまりましたー」


 なのでお菓子でもつまみつつタジタジなアニキを観覧しよかなーって


774:名無しの戦闘員

 重婚とかアニキ舐めてんのか?!


775:名無しの戦闘員

 それはそれとしてハカセ下世話ぁ?!


776:ハカセ

 でもほんとは?


777:名無しの戦闘員

 正直俺も興味ある!


778:名無しの戦闘員

 モテモテアニキは腹立つけどそれはそれとしてお話としては見ていたい!


779:名無しの戦闘員

 この模範的にゃんj民どもめwww


780:ハカセ

 それでこそお前らや

 ってことでまずは腹ごしらえ


 せくしー「ハカセさんのサンドイッチ、美味しそうですね」

   ワイ「そっちのエビとアボガドのやつもいいな。一個交換する?」

 せくしー「わーい、ありがとうございます。そうさせてください」


 ワイら二人だとだいたいこんな感じやね

 ゴリマッチョだと「とりあえず食いたいのは全部頼んで分け合おうぜ!」となる


781:名無しの戦闘員

 異性なのに友達って感じでいいなぁ


782:名無しの戦闘員

 今もリボンを大切にするくらい大好きな友人だからw


783:ハカセ

 からかいを鉄の精神力で耐えきるワイ


 せくしー「A子ちゃんは、アニキさんとうまくやっていますか?」

   A子「ええ、優しくしてもらってます。毎日楽しいです」

 せくしー「むぅ、アニキさん私もかまってくださいよ~」

  アニキ「お、俺か?」

   A子「あ、ずるいです、せくしーさん」

 せくしー「じゃあA子ちゃんも一緒にアニキさんとお風呂に入りましょう」

  アニキ「お、お風呂?!」   


  現在進行形で鉄の精神力を試されるアニキ


   ワイ「ひゃっほう、さすがアニキ! 相変わらずのモテっぷりやな!」

  アニキ「す、すまん、ハカセ。今は妙な煽りやめてくれないか?」


  クッキーぽりぽり、ワイにやにや

  強く賢く気遣いもできるアニキが女の子二人に好き好きされて困惑する姿

  そこからしか摂取できない栄養素がある訳や


783:名無しの戦闘員

 いっしょに…お風呂……?!

 妬ましい…憎らしい……


784:名無しの戦闘員

 やはりアニキも悪の組織の一員か……


785:名無しの戦闘員

 ハカセ楽しそうだなぁ


786:ハカセ

 ぶっちゃけワイからしたら対岸の火事やし

 アニキは大変かもしらんけど、A子やせくしーみたいな可愛らしい女の子に同時に好かれとるんや 

 しっかり悩んで苦労してもらわんとな

 嫉妬やない 断じて嫉妬やない いやマジでな


787:名無しの戦闘員

 確かに好かれている分アニキは他でバランスをとる必要がある


788:名無しの戦闘員

 JKちゃんに、マジモンのせくしーな美女だもんな

 このくらいは当然というか


789:ハカセ

 理解者が多くてワイ歓喜

 

 せくしー「理想としては、私が働いてアニキさんが専業主夫なんですけどねぇ。あ、ハカセさんが起業して、私が秘書ならなお良しです。ハカセさんの会社なら間違いなくホワイトですから」

   A子「私は共働きでも、専業主婦でもいいですよ。ただ、旦那さんと過ごす時間は欲しいかなぁ」

 せくしー「それは私もですねぇ」

  アニキ「ふ、二人とも俺を凝視しないでくれないか?」


 既に結婚後の生活の図面を引いてるせくしーとA子ちゃん

 いやー、クッキーが美味いなぁ


780:名無しの戦闘員

 何故かハカセの企業が未来予想図に組み込まれとるw


781:名無しの戦闘員

 A子ちゃんの言う共働きって「妻と夫が働く」じゃなくて「妻が二人とも働く」だよね


782:名無しの戦闘員

 アニキすげぇな


783:名無しの戦闘員

 ハカセもすごいぞ

 なにせあの顔をまったく有効活用できてないんだから


784:ハカセ

 ワイからしたら簡単に恋人作れる人らの方が変やと思うけど

 見ず知らずの女の子を「お茶しない?」とか誘うなんて正気の沙汰やない

 あと、たい焼き屋のおばちゃんが「イケメンだからおまけね!」って言ってくれたからちゃんと有効活用できとる


785:名無しの戦闘員

 店屋のおばちゃんは若い男には皆イケメンっていうからな


786:名無しの戦闘員

 ていうかアニキわりと優柔不断だったんだ……


787:ハカセ(二人の暴走を応援中)

 しゃーないところはあると思うけどな

 しかしあんな可愛い女の子に見つめられるなんて、アニキが羨ましいわw


785:名無しの戦闘員

 本心隠せてないぞハカセw







「むぅ…………」

「あの、沙雪ちゃん? 見過ぎじゃないかなー、ってボクは思うんだけど。あはは……」


 茜が窘めるけれど、私にはそれに耳を傾ける余裕が一切なかった。




 最近は茜や萌に加えて、美衣那と一緒に遊ぶ機会が多い。

 でも今日は久しぶりに茜と二人で遊びに出かけた。

 四人で遊ぶのも楽しいけど、茜を独り占めも嬉しい。

 一しきり楽しんだ後は、喫茶店ニルでお茶をすることにした。

 

「あ、晴彦さん」

 

 お店でケーキを味わっていると、後から晴彦さんが店に入ってきた。

 声をかけようとしたが、私は思わず固まってしまった。


「レティ、相席でいいか?」

「勿論大丈夫ですよ~、晴彦さん」


 晴彦さんは一人ではなく見知らぬ女性と一緒に入ってきたのだ。

 レティと呼ばれた、軽くウェーブした柔らかい金髪の美女。スタイルもとてもよく、比較すると泣きたくなるくらいの差だ。

 背の高い晴彦さんと並ぶとすごく絵になる。


「え、あの……え?」

「沙雪ちゃん、どうしたの? あ、晴彦さんだ。わー、すっごい美人」

「本当に、び、美人、ね。それにす、すごく親しそう。まさ、まさか恋人同士……?」

「あれ、でも前遊びに行った時は付き合ってる人いないって」

「そうですよねっ。言ってましたよね?」

「何故に敬語?」


 妹である美衣那のお墨付きだ。

 でも友人……という割には、妙に距離を近く感じる。


「ああっ、み、見た? 今、サンドイッチを交換したわ。なんて恐ろしい……」

「え? でも、ボクと沙雪ちゃんもよくケーキの交換するよね?」

「違うの、茜。私達の交換と、男女では意味合いがまるで違うのよ」

「ボク、沙雪ちゃんのこんな姿見るの初めて」


 問題は今の流れだ。

 美女の方がじーっと晴彦さんのサンドイッチを見ていると、彼が優しく微笑んで交換を提案した様子だった。 

 私はあんな無防備な表情向けてもらったことがない。

 あれは相当な親しさがないと出来ない芸当のはず。

 もやもや。私はさらに耳を澄ます


「晴彦さんの秘書……? ど、どういうこと?」

「ねえ、もう直接に聞きに行った方が早くない? というか、わりと近くで騒いでるのにボクたちに気付いた様子無いね?」

「月夜の妖精リーザの力を借りて簡易の結界を張っているわ」

「本気過ぎない?!」


 晴彦さんも大人だから、恋人がいてもおかしくない。

 すごく寛いだ雰囲気だし、英子先輩とも妙に親しそうに見える。

 なんだろう、すごくもやもや。というよりも嫌な気分だ。


「ああ、け、結婚? 主婦とか、そんな話をしている……!」

「どう見ても二人の視線はマスターに向いてるんだけど……」


 私はしばらくの間、晴彦さん達の動向を凝視し続けた。




 ◆



800:ハカセ

 たじだじアニキを堪能したワイは、邪魔するのもなんやし一人で店を出た

 するとフィオナたんとエレスちゃんが声をかけてきた


801:名無しの戦闘員

 それはアニキを見捨てただけでわ……


802:名無しの戦闘員

 あら、もしかしてフィオナちゃん達も店にいたのか?


803:ハカセ

 うん なんか店の中で身隠しの結界張っとった

 ワイは神秘に敏感やからすぐに気付いたけど、エレスちゃんとのティータイムを邪魔されたくないんかな思てあんまりそっちは見んようにしとったんや


804:ハカセ

 フィオナ「ふふ。ハカセさん、奇遇ですね」

  エレス「ええー……」


 涼やかな微笑みで挨拶するフィオナたんと、なんでか疲れたお顔のエレスちゃん

 大丈夫? と声かけたら「はい、なんとか」と曖昧な返事やった


805:名無しの戦闘員

 エレスちゃん変な感じだな


806:名無しの戦闘員

 身隠し、って多分周りに気付かれないようにする結界みたいなやつだろ?

 もしかしたらエレスちゃん、フィオナちゃんにお悩み相談でもしてたんじゃない?


807:ハカセ

 あー、フィオナたんの方が先輩っぽいしそれはあるか

 実際「ハカセさん、すみません。今日は一人で帰ります……」ってちょっと元気ない様子やったし

 なんやろ、心配やからワイも気にかけておくわ


807:名無しの戦闘員

 そろそろ忘れてるかもしれないけどお前敵だからな?


808:名無しの戦闘員

 むしろ悩みの種だろハルヴィエド統括幹部代理w


809:ハカセ

 それを言っちゃあおしまいよ、ってやつや

 まあワイとしてはフィオナたんと帰る機会が得られたしラッキーではあったけど

 帰り道、なんかフィオナたんご機嫌で色々とお喋りできたし

 なんかいい感じに仲良くなれとる気がするわ 




 ◆



 独りで店を出る晴彦さんを追おうとした時、先程まで彼と一緒にいた美女に声をかけられた。


「こんにちは~、英子ちゃんに聞きました。貴女が神無月沙雪ちゃんですか?」

「は、はい……」


 いきなりのことでびっくりしたが、美女は微笑み私の耳元でそっと囁く。


「私が好きなのは、ここのマスターです。晴彦さんはただのお友達ですよ」


 そうして彼女は席に戻っていく。

 たった一言で、私の胸のもやもやはきれいさっぱり消えていた。

 だから、さすがの私も気付いてしまった。

 

 ああ、そうか。

 あんな一言で安堵してしまうくらい。

 私は、彼のことが───






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