第38話

~東都鉄道運行指令予備室~

「早く応援に来てください!」

「ひとつ前の実例なんて十年以上前のものしかないんだぞ?」

「あれ?それも倉庫の奥にあるんじゃなかったっけ?」

「どうやって出すの?」

「いやわからん」

「確かあそこって運行長以上の人しか入れないんじゃなかったっけ?」

「なんで知ってるん?」

「あら、忘れた?私は情報管理室の人間よ?」

「あ、そっか...って言っちゃダメでしょ!?」

「そ、そんなこと言ってられないでしょう?」

「それもそうね....」

「はやく、高橋運行長を探さないと...」

「どうしたんだ?ざわざわしているようだが、列車のダイヤにずれでも生じたのか?」

「あ、高橋運行長!、おはようございます」

「おはようございます」

「おはようございます」

「おはようございます」

「おはようございます」

「ああ、おはよう、それで?なにがあったんだ?」

「今から十分ほど前に....その、男性の声で『男性優先乗車権を使いたい』って...」

「真田運行士」

「は、はい」

「今日は熱があるのか?....その、言いにくいんだが....現実と妄想の区別はちゃんとつけたほうがいいぞ」

「な、なんてこと言うんですか!私はちゃんと聞いたんです、この耳で!」

「良い耳鼻科を教えてやろう」

「むきー!」

「現実でむきーとか言うやつ初めて見ましたよ、先輩」

「うるさいわね」

「それで?本当に来たのか?前来たのって十年以上前だろ?」

「きました!」

「....資料を持ってくるから少し待ってろ、その間に指定された時刻の電車を予め男性優先列車にすることを全社員に通達し、その車両は....そうだな、確か半年前くらいに入った新型車両ってすぐに準備できるか?」

「荷台は車庫にありますが一台は現在使用中です」

「車庫にある車両のうち、より傷の少ない、綺麗な方を優先して整備しろ、ただし、万一の時を考えてこの権利を施行した場合、予備車両としてもう片方もその男性型が乗られている車両の後ろにぴったりとついていくから片方の列車の整備もしっかりとな」

「了解しました、整備室に伝えておきます」

「あと、男性の出迎えに関してだがこの指令室に一人残して後の全員はいくから、今のうちにその一人を決めておけ」

「「「「はっ!」」」」

「すぐ戻る」

バタン

「さて...」

「そうね....」

「やりましょうか?」

「恨みっこなしだからね?」

「いくわよ!」

「「「「最初はぐー....じゃんけん、ポン!!!」」」」

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