VSキラーアント(※ステータス表記あり)

 最深部の手前でシルが言う。


「召喚スポットはこのあたりだけど……なんか強めの敵がいるね」

「強めの敵?」

「多分キラーアントの親玉だと思う」

「おそらく『クイーンキラーアント』でござるな。要は女王アリでござる。精鋭の『ナイトキラーアント』に身を守らせているので注意が必要でござる」


 だんだん平静を保てるようになってきたカナタが説明する。

 ふーむ、女王アリか。

 どうやらそれを倒さないと召喚スポットまでたどり着けなさそうだ。


「あらかじめ誰がなんの相手をするか分担を決めておいた方が良さそうだな。それじゃあイオナとセフィラはナイトキラーアントを任せていいか?」

「任せなさい!」

「必ずやりとげます!」


 カナタは……


「それでは拙者もナイトキラーアントの相手をいたそう。あれは数が多いでござるからな」

「いいのか?」

「うむ。前にアルムの街を防衛したとき、イオナ殿とセフィラ殿とは一緒に戦ったこともあるゆえ、連携も問題なしでござる」


 イオナとセフィラも頷いている。


「わかった。じゃあ、それで行こう。俺とシルで女王アリの相手だな」

「アリなんかに負けないよ~」


 方針も決まったので突入する。


『ギシャアアアアアアアアアアアアアアア!』


 そこは巨大な広間だ。

 奥には女王アリが見上げるほどの巨体をさらしている。

 その手前には騎士アリが二十体ほど。


 召喚スポットは……あった!


 女王アリの奥だ。

 遠めだが、なかなかのサイズに見える。

 『大地ノ大土竜』が入っていたスポットと同じか、少し大きいくらいじゃないか?

 これはぜひとも手に入れたい。


「【蔓操術】!」


 植物のツルを放って女王アリの体に巻き付ける。

 そのままツルを縮めて一気に距離を縮める。

 騎士アリのほうはイオナたちが引きつけてくれている。

 俺はこのまま女王アリを倒せばいい。


 さてどうするかな。

 今まで倒した虫系の魔物だと……効き目が良かったのはあれか。


「【召喚:『樹ノ幻惑蝶』】!」

『ギシャアッ!?』


 敵を放心させる鱗粉によって隙を作る。

 どうもこれは知能が低い魔物に効果が高いようだ。


 次は足だな。

 女王アリの足を関節から斬って倒れさせる。

 とどめだ。


 ザシュッ!


『ギシュウ……ウウ……』


 女王アリを倒した。


「やったわね、ロイ、シル!」

「素晴らしいお手並みでした」

「あっという間だったでござるなー」


 騎士アリたちもイオナたちによって討伐されている。


「そっちもお疲れ様。……あんなに数がいたのに早かったな」

「カナタが強すぎなのよ。油断すると動きが目で追えないくらいだったわ」


 イオナが言うと、カナタは照れ笑いを浮かべた。


「洞窟に入ってから、情けない姿を見せたでござるからな。名誉挽回したかったでござるよ」

「助かったよ。悪いな、協力させて」

「いえいえでござる」


 さて、邪魔なアリたちも倒したことだしいよいよ召喚スポットだ。

 女王アリの個室のような小部屋がある。

 そこにはアリの卵が大量に残っていた。


「セフィラ、カナタ。俺たちが契約している間、これの処分を任せていいか?」

「かしこまりました」

「了解でござる」

「頼んだ。【我は汝との契約を望む】」


 シル、イオナとともに召喚スポットの中に入る。


『――我を捕まえてみせよ』


 狭い空間の中には……なんだあれ。

 なんか光の塊みたいなのが浮いてる。

 あれを捕まえればいいのか?


「あーっ!」


 シルが声を上げる。


「どうした?」

「私あれ知ってる! ロイ、絶対契約したほうがいいよ!」

「そ、そうなのか?」

「うん!」


 シルのこんな反応は初めてだ。

 よほど強力な契約対象なんだろうか。


「なによ、捕まえるだけでいいの? 簡単じゃない」


 イオナがすたすたと歩いていき、光の塊を捕まえようとする。


 シュンッ。


「え? ……あれ?」


 光の塊はいきなり消滅し、イオナの手は空振り。

 光の塊はイオナの後方に再出現する。

 ……なんだ、今の?


「【召喚:『天空ノ翔鳥』】」


 空を飛べる召喚獣を呼び出す。


「あれを捕まえろ!」

『キュアアアアッ!』


 『天空ノ翔鳥』が空を飛び光の塊を捕まえようとする。


 シュンッ。


 再び光の塊は消え、別の場所に再出現。

 『天空ノ翔鳥』は何度も突撃するが……


 シュンッ、シュンッ、シュンッ。


『キュアッ……!?』


 駄目だ、全然捕まえられる気がしない。


「ロイ、それじゃ駄目だよ! あれの能力は――」


『助言を禁ず。禁を破ればその時点で失格とする』


「なんでさケチー!」


 シルはあの光の塊について知っているようだが、能力を伝えるとこっちの反則負けになるらしい。

 厄介な。

 仕方ない、自分で考えよう。


 どうもあの光の塊は、自由に出たり消えたりしているように見えるな。

 となると見てから追いかけていては間に合わないか?

 あ、そうだ。


「【召喚:『樹ノ悪食蛇』】」


 『色彩の樹林』で契約した蛇型の召喚獣を呼び出す。


「あれの魔力を察知して、捕まえてくれ」

『シャアッ』


 『樹ノ悪食蛇』は魔力を探り当てる能力を持っている。これはスキルとは別で単なる召喚獣の性質らしい。

 普通の蛇が熱で獲物を見つけるようなものと考えていいだろう。


『シャアアアアアアアアアア!』

『――』


 樹属性の蛇型使い魔が光の塊に噛みつく。

 よし、狙い通り!

 目で追っていて間に合わないなら、目で追わなければいいのだ。


『汝を我の主と認める』


 『樹ノ悪食蛇』が光の塊を捕まえたことで、契約は終了した。

 召喚スポットから現実世界に戻ってくる。


「やったね、ロイ!」

「召喚獣のスキルじゃなくて本体の性質を利用するなんて。さすがだわ」

「ありがとな、二人とも」


 シルとイオナの二人とハイタッチする。


「おかえりでござるー」

「おかえりなさいませ、ロイ様。無事に契約できましたか?」


 待たせていたカナタとセフィラがそう言って迎えてくれる。

 見ると、周囲のキラーアントの卵はすべて破壊し終わっていた。

 仕事の早い二人である。


「ああ、なんとかな」


 さあ、ステータスの確認だ。


ロイ

<召喚士>

▷魔術:【召喚】【送還】

▷スキル:【フィードバック】

▷召喚獣

煉獄ノ雌竜イオナ(力上昇Ⅲ/魔力上昇Ⅲ/スキル【火炎付与】/スキル【火炎耐性】)

水ノ重亀(耐久上昇Ⅱ)

水ノ子蟹×2(耐久上昇Ⅰ)

水ノ子井守(敏捷上昇Ⅰ)

水ノ子蝦蟇(敏捷上昇Ⅰ)

天空ノ翔鳥(敏捷上昇Ⅱ/スキル【飛行】)

風ノ子蜂(力上昇Ⅰ)×3

風ノ子梟(魔力上昇Ⅰ)

大地ノ穴土竜(力上昇Ⅰ/耐久上昇Ⅰ/スキル【掘削】)

地ノ子蟻(力上昇Ⅰ)×2

地ノ子甲虫(耐久上昇Ⅰ)

樹ノ蔓茸(スキル【蔓操術】)

樹ノ悪食蛇(スキル【状態異常耐性】)

樹ノ幻惑蝶(スキル【幻惑粉】)

樹ノ子鼠(敏捷上昇Ⅰ)×3

樹ノ子百足(力上昇Ⅰ)

光ノ子蛍(魔力上昇Ⅰ)

▷召喚武装

導ノ剣:あらゆるものへの道筋を示す。

New!空渡ノ長靴:視界の先に渡る。


 『空渡ノ長靴』。

 これがさっきの光の塊の名前のようだ。


 というかこれ、召喚武装だったのか!

 シルが反応していたのはそれが理由だったのかもしれない。

 召喚武装はシルに続いて二度目の契約だ。


 一体どんな効果があるんだろうか。

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