二章 王都の予知姫

カナタの誘い(※ステータス表記あり)

 アルムの街の復興は数日である程度落ち着いてきた。


 というのも、他の街から冒険者やら大工やらがすぐに応援に駆け付けたからだ。

 手配したのは冒険者ギルドのトップだという。

 この状況を予想していたのか?

 ……まさかなあ。


「はふっ、はむっ! ばくばくっ」

「ふん、まあまあね」

「美味しいです」


 俺たちは今、屋台で買った串肉を、街の中心を流れる川沿いに座って食べている。

 俺はふとセフィラに尋ねた。


「エルフって肉を食べてもいいのか? なんか噂だと野菜と果物しか食べないって……」

「いえ、普通に食べますよ。ただエルフは魔力を含むもののほうが口にあうので、魔力植物なんかを調理して食べる文化がありますね」

「へえ」


 魔力植物って、ポーションの材料とかになるアレか?

 あんまり食材として見たことはなかったな。


「むっ、召喚スポットの気配!」

「なに!?」

「こっちこっち!」


 立ち上がり、走り出したシルの後を追う。川辺にあるのは確かに召喚スポットだった。

 サイズは十センチ程度。

 あまり強くはなさそうだが……触れてみるか。


「【我を汝との契約を望む】」


 ――数分後。


「みなさん、今までどこに行っていたんですか……?」


 無事に契約を終えてきた俺たちを見てセフィラが困惑したような顔をしていた。

 あ、そうか。

 セフィラの前で契約するのは初めてだった。


「悪い、説明するの忘れてたな。俺は<召喚士>で、召喚契約のときは召喚スポットの中に入るんだ。シルとイオナは俺と契約してるから一緒に入れる」

「そうだったんですね。……では、新しい契約ができたということですか?」

「ああ」


 俺は自分のステータスを確認する。



ロイ

<召喚士>

▷魔術:【召喚】【送還】

▷スキル:【フィードバック】

▷召喚獣

煉獄ノ雌竜イオナ(力上昇Ⅲ/魔力上昇Ⅲ/スキル【火炎付与】/スキル【火炎耐性】)

水ノ重亀(耐久上昇Ⅱ)

水ノ子蟹×2(耐久上昇Ⅰ)

水ノ子井守(敏捷上昇Ⅰ)

水ノ子蝦蟇(敏捷上昇Ⅰ)

天空ノ翔鳥(敏捷上昇Ⅱ/スキル【飛行】)

風ノ子蜂(力上昇Ⅰ)×3

風ノ子梟(魔力上昇Ⅰ)

大地ノ穴土竜(力上昇Ⅰ/耐久上昇Ⅰ/スキル【掘削】)

地ノ子蟻(力上昇Ⅰ)×2

地ノ子甲虫(耐久上昇Ⅰ)

樹ノ蔓茸(スキル【蔓操術】)

樹ノ悪食蛇(スキル【状態異常耐性】)

樹ノ幻惑蝶(スキル【幻惑粉】)

樹ノ子鼠(敏捷上昇Ⅰ)×3

樹ノ子百足(力上昇Ⅰ)

New!光ノ子蛍(魔力上昇Ⅰ)

▷召喚武装

導ノ剣:あらゆるものへの道筋を示す。



 一番下の『光ノ子蛍』というのが新しく手に入った召喚獣だ。


「【召喚:『光ノ子蛍』】」


 呼び出すと、五センチほどの蛍が現れた。

 昼間なのに腹部の光がはっきり見える。


「綺麗だね~」

「光属性の神獣……珍しいものを引いたわね」


 シルとイオナが口々に言う。


「イオナ、珍しいっていうのは?」

「光属性の神って神界に少ないのよ。だからその眷属の神獣も少ないの。この蛍、小さいけど貴重な存在なのよ」


 そうなのか。

 戦闘では役に立たなさそうだけど……いや、暗い場所を探索するときに明かりになるか。

 松明がいらなくなると考えると、かなりありがたいかもしれない。


 と。


「ロイ殿ぉー!」


 黒髪に袴姿の異国の少女、カナタがこっちに駆けてくる。


「カナタ。どうかしたのか?」

「ロイ殿を探していたのでござるよ。さっそくでござるが、ロイ殿はこれからなにか予定はあるでござるか?」

「特にないな」


 今はトラブルも抱えていないことだし。


「それはよかった! 実は拙者の友人がロイ殿に会いたがっておる。本来ならあちらが出向くべきでござるが、あれは多忙の身ゆえかなわなんだ。ロイ殿に足労いただけると助かるでござるよ」

「こっちから会いに行けばいいのか。どこに行けばいいんだ?」

「王都でござる!」


 ……王都か。


「セフィラ、嫌じゃないか?」


 確かセフィラが売られていた闇市とやらが開かれたのは王都だったはず。嫌な記憶が呼び起されたりしないだろうか。


「ロイ様と出会う前のことを気になさっているのでしたら、平気です。今ロイ様のそばにいられる幸せで埋め合わされていますから」

「そ、そうか。それならいいんだ」


 こんなに正面から好意を示されると恥ずかしいんだが。


「シルとイオナもいいか?」

「いいよー! 王都ってどんなところか楽しみ!」

「ロイが行くなら当然どこにだってついていくわよ」

「わかった。……それじゃあカナタ、その申し出を受けるよ」

「ありがとうでござる!」


 合意も取れたところで、次の目的地が王都に決まった。

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