第16話

 誰だあいつ? スーツを着てるから恐らく護国軍だろうけど……。


「エストにタキオン。素晴らしいチームだな。ここは1つ、提案をしよう。私とともにあの化け物を倒さないか?」


 はぁ? 信じられるかってんだこのやろう。不意打ちだってあり得るじゃねえか。

 するとその男は笑った。


「はっはっは。まぁ信じないのも無理はない。申し遅れた。護国軍大佐、テイゾウ・ナカムラだ。以後宜しく。あ、背後に気をつけろ。」


 背後を向くと、そこには大剣が迫っていた。それを間一髪で避ける。危なかった〜!

そうそう! 今戦闘中だったんだ!

 それにしてもテイゾウ・ナカムラって……逆さにするとナカムラ テイゾウ。名前のニュアンスが日本人だ。こーゆー人もいるんだな。


「エスト! とりあえずコイツと戦うぞ!」


 うーん。まあ、しょうがないか。


「決まりだな。大佐の実力をとくと見るがいい! 《焔体ファイアボディー》!」


 テイゾウの体が燃え上がった。熱い! そして弱そう! そして俺は役に立たなそう!

 あまりの熱さに敵も、俺までも引き下がった。


「妹が世話になってるな!」


 と言って、タキオンは何処からともなく鉾先の黒い槍を出した。その槍は強そうというよりも、不思議な圧力がかかっているような感じである。

 雑魚は逃げ出すレベルのものだろう。現に俺も逃げ出しそうになった。


「お前はじっと見てろ。」


 と言われ、危険性も考慮して天井に張り付いて見ることにした。なんか蜘蛛になった気分。

 始まったか。タキオンが高速かつ不規則に動き出した。その動きを追う敵をテイゾウは打撃を続けて意識を散らしているようだ。

 敵同士なのになかなか感心させるチームプレイである。

 から見えない斬撃が繰り出された。


「《凍体アイスボディー》!」


 テイゾウはその瞬間に凍りつき、身を守ったようである。一方タキオンは防御手段がないのか、それともそういう作戦なのか、何もしないで攻撃を食らっていた。大体分かってきたな。

 恐らく鎌鼬かまいたちとかだろ。ちなみに鎌鼬とは日本の怪異であり、鋭い傷を負わせるが痛みはないというものである。俺は痛かったけど俺は人間じゃないので除こう。

 昔は真空により起こっていると言われたが、色々無理だと言われて他の説がある。だけどもし、コイツが真空を生み出せるとしたら不可能ではない。とすると全方範囲攻撃の理由も説明できる。


「面倒な奴だな。【捲土重来けんどじゅうらい】!」


 再びテイゾウの体が燃え上がり、殴りかかった。そしてに強烈な一撃を与えた。すると、その拳から結界が出てきた。

 は結界に弾かれ、弾かれたところにまた結界が現れるといった感じになり、壁に叩きつけられた。すご……。

 そしてすぐさまタキオンが槍での腹を何度も突き刺す。もうこっちが無双しているのである。

 しかし、とどめを刺そうとしたところでタキオンの動きが止まった。矛先にはの結界があった。


「遅かったか……!」


 の体が青く光った。

 その刹那、空間が青白く光り、焼けるような強烈な痛みに襲われた。




 目が開いた。生きてる……。

 倒れていた体をなんとか起こすと、目の前にはタキオンとテイゾウが倒れていた。


「―――! おい!」


 返事がない。かなりの重症であることは間違いないようだ。

 俺は天井に張り付いていたから軽症で済んだようだが二人はそのまま受けたため、かなりの重症である。薬を飲んでふっかーつ! みたいなレベルではない。

 そしてここに立っているのは俺とだけだ。当然敵うはずがない。痛みを堪えて立ち上がる。

 は様子を見ているようだ。完全に油断している―――! 俺はタキオンの懐を探った。

 あるな。俺は再び立ち上がり、弓を構えた。


「喰らえ!」


 弓から青い矢が放たれた。その矢は圧倒的なエネルギーを発し、の結界を破壊した。

 が結界を破壊されてから再び使うのには時間があった。恐らく結界というものは破壊されると再び出すのに時間が掛かるのだろう。剣を抜いた。


「お前がどう来ようと、受け止めてやるよ!」


 その時――――感じた。何もないところから、刃のようなものが飛んでくるのを。

 それを剣で受け止める。どうやら俺は鎌鼬攻撃を受け止めることに成功したようだ。負ける気がしない。

 は表情こそないもののかなり動揺したようだ。次々と飛んでくる斬撃を受け止める。

 そしてゆっくりと近づく。そしての巨体の足に触れた。


「《粘着性》!」


 の右足をしっかりと抱える。そして俺は振り回し出した。重いが、この重さでもこのスキルはくっついたままである。

 は体勢を大きく崩している。

 そして……スキルを解除した。遠心力によっては放り投げられ、頑丈な壁にぶつかった。動きがない。

 やはり、目はないが、目が回ったところに頑丈な壁に激突したため気を失っているのだろう


「トドメだ! 《巨神の加護アルゴスエンチャント》!」


 俺はに向けて走り出し、剣を逆手に持った。そしてその巨体を大きく斬り裂いたのだった。

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