一気に読める、ロマンス、感動作です!
孤独な少女と、孤独な少年が出逢う。
クリスタルの音叉が、繊細な音で響きあうように、ふたりは共鳴しあい、思いやり、労わりあいながら、恋を育んでゆく。
ふたりは、魔界の姫と、護衛の騎士で……
……そんな様子が、やわらかい文章、とても読みやすい文章で、丁寧に描かれています。
筋書きもおもしろく、よく練られていて、まるで上質なオペラを観ているかのよう。
黒薔薇の庭に、朽ちたブランコ……ヨーロッパ調の舞台設定もステキです。
純粋で、まっすぐな思い。
心ゆさぶられる、エモーション。(エモさ)
……そうした熱いものを感じたい方には、ぜひおすすめの短編です!!
作者様の大人気作『精霊王の末裔』のジュキとレモに、前世があるとしたら、この作品。
ふたりは何度生まれ変わっても、まっすぐに愛し合うのでしょう――
そこは魔界。既に勇者により魔王討伐され、人間の管理下にある世界。
そんな中で魔王の力を継承したが故に幽閉された令嬢レモネッラと、四天王ホワイトドラゴンの強く優美な令息ジュキエーレ、その二人の恋物語。
本作の見所は、やはりヒロインのレモネッラの心の強さとヒーローたるジュキエーレの優しさ。強い力を持つ二人に対して厳しい世界に抵抗し、葛藤する姿だと思います。
幼い頃から育んだ絆と想い、それが否定され、分かたれて、しかしそれ故に。
心が強いのに過去の想いを大切にし、力が強いのに周囲に心を配る優しさを持つ二人の恋の行方を、是非ご堪能ください!
ところで、本作のメインの二人の名前を見て、「あれ?」と思われた方もいると思われます。
本作、先日のカクコンにも一次通過された人気作の「精霊王の末裔~」、その原型とも言える作品です。
テイストはこちらの方がシリアスですが、筆者様の柔らかい筆致とユーモアある物語は共通していますので、もし精霊王の末裔を面白いと思われた方、こちらも覗いてみてはいかがでしょうか?
厳しくも美しい世界を楽しめる本作、決して長くはないので、手に取って見てはいかがでしょうか。