第80話 死闘!激闘!パーティの戦いです

「ええっと・・・・・・ここどこ?」


眩しい光が消えたと思ったら、目の前の景色が・・・さっきと違う?

これって・・・まさか転移!?

じゃあみんなは!?


「うーー、もうっ! いきなり何すんのよあいつ!」

「ボスガス爆発?」

「ここはどこだろう? ボスの間・・・じゃないよね?」

「ああ。どうやら別の場所のようだ。フィラストの転移トラップと似た感じがした」


うん、大丈夫、みんないる・・・ってあれ!?

「クーラ先生は?」


みんな回りを見回すけど・・・やっぱりいない。

「僕達だけ跳ばされたのか、クーラ先生は別の場所に跳ばされたのか・・・」


どっちだろう・・・


「うーん、もしさっきのゴブリンソーサラーがこの転移をやったんだとしたら、跳ばされたのは僕達だけ、じゃないかな」

「ノルト・・・その根拠は?」


うん、僕も聞きたい。


「ほら、あのゴブリンソーサラーって僕達を跳ばす前に、殺された恨み!みたいな事を言ってたじゃない。って事は多分、これまでボス戦に参加してこなかったクーラ先生は・・・」

「そっか、対象外って事ね」

「うん。その可能性が高い気がする」


なるほど・・・ノルトの言う通りかも。


「となると、今回は私達だけで対処する必要があるって事ね。じゃあ・・・ってその前に、この空間ってどうなってるのかしら。ちょっと視て・・・ってダメか。あたしじゃこの階層の中だけで限界っぽいわね。カルア、出来るだけ広い範囲で遠見をお願い」

「分かった。ちょっと待ってて」


自分を中心に範囲を広げていって・・・

ん? 結構広い? このままだとちょっと大変かも。だったら少し魔力循環して・・・

あれ!?


「空間が・・・閉じてる?」

「何? それどう言う事? もうちょっと詳しく」

「ええっと、ここって大きな四角い空間になっていて、僕達がいるこの場所はその上の隅あたりなんだ。それでこの空間ってどうやら3階層みたいなんだけど、その外側はまったく視えないんだ」

「つまりどう言う事よ?」

「うん。ここは・・・さっきまで僕達がいた場所と、繋がっていないみたいなんだ」


そう、ここには外に繋がる階段や通路がどこにも無い。

そして、そういう場所を僕は・・・知ってる!


「じゃあ何? 今あたし達って、転移でしか行き来できない場所にいるってわけ?」

「そうなんだ。つまりここは・・・大きな『魔物部屋』みたいな場所、って事なんだ」

「魔物部屋・・・だとしたら・・・ここから出る方法って・・・」

「うん、可能性としてはふたつ。ひとつは出てくる全ての魔物を倒す事。これはここが魔物部屋だった場合のルールだね。もうひとつは隠しダンジョンだった場合。この場合はボスを倒せばいい」


でも今回はたぶん・・・


「隠しダンジョン、の方よね」

「だと思う。ここ3階層あるし、ゴブリンソーサラーが『真なる最下層』なんて言ってたし」

「・・・よし! それならさっさとボスを倒して帰りましょ。何だ、たったそれだけの事じゃない!」


そう言われると、ホントに簡単な事みたいな気がしてきた。

こういうところがやっぱりアーシュだなあ・・・


「あ、でもちょっと待って」

ここで、考える男ノルト。

「クーラ先生があの場に残されているのなら、間違いなく僕達の救出に動いているはずだよ。ここに来る手段があるのかどうか分からないけど、それも頭に入れておく必要はあると思う。だからさ、僕達で何とかするのは賛成だけど、先生達の合流も待ちながら慎重に進むのがいいと思うんだ。あまり急がず、ゆっくりとね」


「ふーむ・・・」

ノルトの案にアーシュもちょっと考えて・・・

「そうね、ま、そんな急ぐ事もないか。よし、じゃあみんな、じっくりゆっくり踏破するわよ!」


まず最初にやる事は、さっき把握した3階層分の地図の作成。

「ふふん、せっかくの隠しダンジョンなんだから、慎重にじっくりと抜けなく完全踏破しなきゃ。宝箱とかも根こそぎ見つけ出すわよ!」


ああ、これ多分、地図に宝箱の位置とか書いたら怒られるパターンだ。

ネタバレ禁止!って。

うん、なら魔法で探すのはやめとこうっと。

把握しちゃえばきっと全部視えるけど・・・それじゃあ楽しくないしねっ!




こうして歩き出した僕達だけど・・・

「おうコラ! なにガンくれてんだオラ! なんか文句あんのカ!? ああン!?」

センスの悪い服を着た、柄の悪いゴブリンに絡まれた。


そのゴブリンを見るアーシュの目は、「うわぁ・・・」って感じ。

「ふん! 何よあんた、だっさい格好して!?」

「んだコラ? てめえもしかしてニンゲンかオラ? オレっちをゴブドウ一家いっかのモンと分かって言ってんのかコラ!?」


うーん・・・このゴブリン、しゃべるんだけど内容薄めでコラとオラが多め。

っていうか、ゴブドウ一家いっかって何?


「知らないわよゴブドウ一家なんて! 何よそれ? ぶどう農家!?」

「あんだとコラ! てめえふざけてんじゃねえぞオラ! ゴブドウ一家いっかっていったらこのシマを仕切る極道ゴブリン組織だろうがオラ! どうだ恐れ入ったかコラ!!」


それを聞いてますます冷たい目になるアーシュ。

「ふーん、つまりあんたはそこの下っ端のチンピラゴブリンって奴な訳ね」

「んだオラ! 誰がチンピラゴブリンだコラ! オレっちは立派な『サブゴブリン』だぞオラ!!」

「サブゴブリンねえ・・・新種かしら?」

「かもね。しゃべってるし」


「はあ、何だかこいつって大した情報も持ってなさそうな下っ端だし、もう話す必要ないわ。せっかくだから進化したスティールの実験台になってもらいましょ。カルア、もういいわよ」

「んだコラてめえコラ訳わかんねえ事言っ」

「スティール」


「ふむ、ちゃんとスティール出来たわね。まあこいつも雑魚っぽかったけど、しゃべれるくらいだから普通のゴブリンよりはきっと強いでしょ。ちゃんと進化してるって事かしら」

「かな? 何だか実感は全然無いけど」

「ま、そのうち別のも出てくるでしょ。あそうだ、こいつは一応収納ね。新種だったらギルドに届け出なきゃ」


こうして先に進み・・・


「んだコラ」

「スティール」

「てめえコラ」

「スティール」

「あんだコ」

「スティール」

「てめ」

「スティール」

「お」

「スティール」


さっきから出てくるのはサブゴブリンばっかり。

しかも一匹ずつ。

ナニコレ・・・?



そして僕達は進み続け・・・


「ねえ、これ何かしら?」

「ええっと・・・階段、に見えるけど」

「やっぱり、あたしの見間違いじゃない、か・・・」

「うん」

「・・・」


言いたい事は分かるよアーシュ・・・


「もう何なのよココ!? 何で完全踏破して雑魚しか出て来ないのよ!? ボスはどうしたのよ!? 何で宝箱のひとつも無いのよ!? 『真なる最下層』なんでしょ!? もっと頑張んなさいよ!!」



そんな訳で、下の階層へ!

って、何だかすっかり気が抜けちゃったんだけど・・・




「ねえノルト、『真なる最下層』って事はさ、きっとここって第6階層よりも下って事だよね。って事はさっきの場所が第7階層で、今いるこの階層は第8階層って事かな?」

「うん、そう考えるのが自然な気がするよね。ホントのところは分からないけど、今はそう呼ぶのがいいんじゃないかな」

「そうね、あたしもそれでいいと思うわ!」

「じゃあそうしようか。それでこの第8階層なんだけどさ、何か今までと雰囲気が違わない?」


まあ、雰囲気って言うか・・・


「そうだね。まるで『建物の中』にいるみたいな感じだよね」


そう、まるで学校とかみたいに、普通に廊下や壁なんかがあって。

あ、扉発見。

「入るわよ」


ガチャッ

扉を開くと、その向こうには・・・

「オウオウ、何だテメエラ! ゴブドウ一家の『事務所』に何の用ダ?」


「はぁ・・・またサブゴブリン?」

うんざりした顔のアーシュ。


「オウ、オレはサブじゃねエ、マサゴブリンってもんダ。テメエらサブの奴に用なのカ?」


ちょっと違ったみたい。

確かに見た目も服装とかもちょっと違うかも。あとしゃべり方も。


「ふん、雑魚なんかに用は無いわ。あたしたちはここのボスをぶっ飛ばして家に帰りたいだけよ」

「何だとオウ、そいつは聞き捨てならねえナ。 だったらオレはオレの役目を果たすぜオウ!」


そう言ってマサゴブリンは立ち上がり、

「カチコミだアァァァァ!! 冒険者がカチコミに来やがったアアァァァァァ!!」

「いきなりうるさいっ! カルアっ!」

「はいはい、スティール」

うん、こいつも普通にスティール出来るみたいだね。


「どうやらあいつ、仲間を呼んだみたいだよ。奥からドタドタと音が近付いて来る」

「凍らす? それとも蒸し焼き? どっちにする?」

「俺が蹴散らすか?」

「今は体力と魔力は温存、この場はカルアに任せるわよ」


そう言ってアーシュは僕を見てにっこり笑い、

「私、一度これ言ってみたかったのよね。・・・カルさんや、やっておしまいなさい!」


うわぁ、これってあのセリフじゃ!?

あの物語でたまに出てくる謎のご老人の・・・



そして僕は目の前のマサだかサブだか極彩色の服の雑魚っぽいゴブリンをまとめて、

「スティール」

で、その後は収納を使って部屋に放り込む。だって進むのに邪魔だし。


「一応マサゴブリンとかいう奴も何匹か持って帰るか」

真面目なアーシュ、共通ボックスに雑魚っぽいゴブリン――もう「雑魚ざこリン」でいいや――を収納。

「あ、待って。一応こいつらの持ってた武器みたいなのも持っていこうよ」

ノルトは何か気になったみたいで、雑魚リン達が持ってた短刀とか黒い金属っぽい何かを収納。


「じゃ、今のうちに進むわよ。さっきあいつ、ここの事を『事務所』って呼んでたわね。よし、これから『事務所』を完全踏破、良さそうな物は根こそぎ持って帰るわよ!」


はは・・・アーシュ、それじゃまるで盗賊団みたいだよ。

だってほら、ここって普通の建物内みたいに見えるから・・・


「止まりやがれコラ!! このチャカが見えねえかオラ! 撃つぞコラ!?」

廊下の先で、雑魚リンが黒い何かを向けて叫んでる。

「『チャカ』ってあの黒いのかしら? あれって魔道具か何か? 撃つとか言ってたから試しに撃たせてみる?」

「そうだね。でも念のため、障壁とか結界を張ってからにしたほうがいいと思うよ」

さすがノルト、慎重派。


「なら両方試しましょ。あたしが外側に障壁、カルアが内側に界壁ね」

「了解」


そして雑魚リンが手に持った黒いのから何かが飛んできて・・・アーシュの障壁を貫通して界壁で止まった。

「へえ、これって金属の塊かしら? この障壁を抜けるんだから結構威力があるわね」

「そっか、あれってつぶてを飛ばす魔道具っぽいね。普通に魔法を使った方が早そうだけど」

「案外そうとも限らないかもよカルア君。ふふふ、これは帰ったら分解が必要だね」


雑魚リンはスティールしちゃってあっさり終了、さあ行こ行こ。

あ、でも周りに移動型の界壁を展開しとこう。チャカ対策にね。


地図を見ながらあちこちの部屋を開けて探索してるんだけど・・・

さっきからすっと、コラとかオウとかうるさいだけの雑魚リンしか出てこない。

この階層もこんな感じなのかなあ・・・

たまに撃ってくるチャカは界壁で防御出来るし、雑魚リンはスティール一発だし。


たまには何か違う事が起きないかなあ・・・って思ってたら、

「あれ? これって宝箱じゃない!?」

アーシュが宝箱を見つけた!

おおっ!!


そしてワクワク顔のアーシュがその宝箱を開けて・・・

「ちょっと何よコレ!?」

箱の中に入ってたのはチャカ。何種類かの大きなチャカや小さなチャカ。

それを見て一瞬で不機嫌になるアーシュと、楽しそうにチャカを収納してくノルト。


それを見ててふと気になったんだけど、

「ねえ、アーシュは宝箱に何が入っていたら嬉しい?」

「そうね・・・お金や宝石は別にいらないし・・・やっぱり珍しいアイテムとか魔剣みたいな伝説の武器とかね!」

「なるほど・・・あ、もしかしたらさ、『チャカ』も伝説の武器とかかもよ」

「ええぇ、アレがぁ!? でも、もしそうだとしても・・・アレ使ってたのって見るからに雑魚っぽいあいつらよ?」

「あははは・・・そう聞くと確かにあまり嬉しくないかも」

「でしょー?」



そんな感じで探索は進み、いよいよボスの間っぽい最後の部屋に到着っと。

「今度こそ・・・今度こそちゃんとしたボスがいますように!」

アーシュ、それはあまりお願いしないほうが・・・

それにさっきからずっと静かなワルツとネッガー、もしかして飽きちゃった?


「さあ、みんな集中! ボス戦、気合い入れて行くよ!」



ボスの間で待っていたのは、数匹のサブゴブリンとマサゴブリン、それと初めて見るタイプのゴブリンが1匹。

どことなく艶々つやつやとしたピンストライプのスーツを着て、他の雑魚リンとは何かちょっと違う感じ?

「こいつらがその冒険者ですカ」

「そうですアニキ! 他の奴らはみんなこいつらニ・・・」


そのゴブリンは、僕達に向かってゆっくりと近づいてきた。

「「「「「アニキ!!」」」」」

「まったク、母の気まぐれにも困ったものでス。せっかく地上への大侵攻の準備が順調に進んでいるというのニ、こんな連中の始末をやれなどト・・・」


ええっと・・・こいつは「アニキゴブリン」って事でいいのかな?

「あなたたちヲ『本部』に向かわせる訳にはいきませン。ここで私が食い止めまス!」

そいつはそう言って、全身に魔力を纏った。

「さア! 掛かって来なさい冒険者どモ!」



「全員戦闘準備! カルア、先制のスティール!」

「スティール!」


アニキゴブリンを残し、他の雑魚リンは魔石に。

「クッ・・・今のハ・・・そうですカ、魔石に直接攻撃ヲ・・・まさかニンゲンにそのような技術が開発されていようとハ・・・これは確かに我らにとって脅威、ですネッ!!」

そう言いながら突っ込んできたアニキゴブリン!

咄嗟に張ったアーシュの障壁を片手で破り去り、そのまま僕達に迫る!


「やらせん!」

そのアニキゴブリンを止めたのは、いつもの頼れる前衛ネッガー。

「ほウ、やりますネ。面白イッ!!」


そこから始まる近接戦闘。

「いい? あいつとネッガーの距離が開いた瞬間に魔法をぶち込むわよ! カルアはいつもとは逆方向の結界であいつを囲んで! ノルトとワルツは攻撃魔法を準備!」


僕達がその時を待つ間に戦闘は続く。

そして一瞬の隙を突いたネッガーの前蹴りをアニキゴブリンがガードし、その勢いで後ろに押し飛ばされる。


今っ!!

「『結界』っ!!」

「フッ!!」


なっ!? 避けられた!?


「危ない危なイ。今のは中々いい判断でしたヨ。しかしそんな溜めの大きい魔法が当たるなどと思わないで下さイ!!」

「まだよっ! このまま全員一斉攻撃! 面でぶち当てろーーっ!!」

「「「応っ!!」」」


僕とノルトの大量の『火山弾』、ワルツの氷の、アーシュの白い『火球』!

それらが一斉にアニキゴブリンを包み込み、そこにワルツが

「激☆加熱」

小さな氷の散弾が一斉に爆発した。


「っ!? 『界壁』っ!!」

部屋中を荒れ狂う衝撃! それが収まると部屋中に舞い散る塵で視界が・・・

「ちっ、『風』よ!」

アーシュの『風魔法』により塵は部屋から押し出され、視界はクリアに。

そして見えてきたのは、擦り切れてボロボロになったスーツを纏った・・・

「カルア、あいつにスティールを試して」

「分かった。『スティール』! ・・・ダメか」


「今のは素晴らしい攻撃でしタ。これは流石に少シ・・・ナッ!? ワタシのスーツガ!? ・・・母より・・・母よりいただいた、大切なスーツがアアアァァァァァッ!!」

傷だらけのアニキゴブリンから、急激に膨れ上がる魔力!?

まさか、まさかこいつも怒りでゴブラオに!?

・・・いや、ちょっと違うみたい。これって・・・発狂モード!?


「界壁を解除してくれ。俺が出る」

「ネッガー・・・」

「やれるの?」

アーシュの問いにネッガーは少し考え、

「倒すのは難しいだろう。だが俺は結界に入ったままで攻撃できんからな。外で相手をしてるから、その間に次の手を考えてくれ」

「・・・分かった、気を付けるのよネッガー。じゃあカルアお願い」


そしてネッガーとアニキゴブリンの第2ラウンド。

目で追うのがやっとの高速戦闘が再開された。

でもさっきまでと違って、今のネッガーは剣を手にしている。

今のアニキゴブリンはそれ程危険な相手って事なのか・・・


「ノルト、何か作戦ある?」

「今考え中」

「分かったわ」


これがノルトの『シンク』スキルか。

きっと凄い速さでいろんな事を考えてるんだろうな。

ネッガー、作戦が決まるまでもう暫く頑張って!!


そしてネッガーとアニキゴブリンの戦いはますます激しくなっていく・・・




あ、ノルト何か閃いた?

「カルア君、ひとつ訊きたいんだけど、君の結界って後から形とか変えられる?」

「うん、出来るよ」

「よし! じゃあ作戦決定だ。いいかいみんな、まず・・・」


そしてノルトが話したその作戦は・・・

凄い! これなら・・・いけるっ!!


「さあ作戦開始よ! カルア!」

「うんっ! 『結界』」

反対の壁一面に結界、やりたい放題の逆向きで!


「ネッガー! 剣を棒にチェンジ! 奴を向こうの壁に撥ね飛ばしなさい!」

「おうっ!!」

ネッガーがアニキゴブリンの胴を上下に両断する勢いで剣を横に振ると、避け切れないと踏んだアニキゴブリンは、胴体の魔力を鎧のように固めてそれを受ける。

が、ここでネッガーはその武器を剣から撲撲ボコボコ棒にチェンジっ!!


「ナニッ!?」

撲撲ボコボコ棒からあり得ない程の衝撃を受けたアニキゴブリンはそのまま結界に衝突、でもその結界は外から中へ一方通行だから、そのまま中に吸い込まれる。

「次! 行けワルツっ!!」

「おおぉ」

ワルツはアニキゴブリンのいない辺りの結界内に最大サイズの氷を撃ち込む。


「今よ! 結界を縮めて!」

アニキゴブリンの体より少し大きい程度までサイズ変更っ!

その足元には壁に押されてワルツの氷が転がっていき・・・


「激☆加熱」


結界の中で、静かに大爆発。

きっとあの中ではとんでもない音が鳴り響いてるんだろうけど。


そして結界の内側の壁には一面水が貼り付き・・・


「ワルツ、こっちと同じくらいまで温度下げて」

「程よく、『冷却』」

「いくらあいつでも流石にこれなら・・・ってまだ生きてるじゃない! ゴブリンの癖にゴキブリ並みの生命力ね! これからゴキブリンって呼ぼうかしら」

「でもあの様子だったら、もうスティール出来るんじゃないかな。カルア君、やってみてよ」

「よし、じゃあ『スティール』」


そしてアニキゴブリンは二度と動かなくなり、僕たちはその魔石を手に入れた。

「解除」

結界を解除すると同時に床に広がるバケツ2杯分の水、そして自慢のスーツが欠片も残っていないアニキゴブリンの裸の死骸がポツンと。

「こいつもお持ち帰りね」


その収納を終えたところで、急に何かに気づいたみたいに表情を曇らせたアーシュ。

「あ・・・でもこいつら全部カルアの『スティール』で魔石を抜いたのよね。もし魔石を見せろとか言われたらどうしよう・・・帰ったら相談しなきゃ」


ああ、言われてみれば確かに。

僕もこういうところに気付くようにならなくっちゃ!

って、なれるのかなぁ・・・?


「ふふん! 今回はパーティ全員で掴み取った勝利ね! あーーでも疲れたぁ! みんな、ここで食事してたっぷり休憩! 下に行くのは完全回復してからよ! 次はもっと強い奴が出てくるかもしれないんだから!!」




次がいよいよ『真なる最下層』の最下層。

確かアニキゴブリンは『本部』って言ってたよね。

『本部』か・・・もの凄く強いボスとか出てきそうだよ・・・

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