念願の加入。夢のイケメンパーティー。

「私がヴァン王子のパーティーに?」


 この国の王子、ヴァン。金髪のイケメン。ゲームで私が一番推していたキャラだ。

 その彼が、今なんと言った? 私を自分のパーティーに入れる!?

 なんということだ。私はまだ寝てるのか?


「はい! 行きます。行かせていただきます。絶対行きます!」


 彼の気が変わらない内に、私はすかさず返事をした。


「おいラグナ。マジか?」


 ベジタボたち三人が、私のそばでヒソヒソ声で話し出す。


「絶対嫌がらせされるぞ」

「お前、正気か? まともな扱い受けるわけないって」


 何を言っているんだこの人たちは。

 そんな訳ない。ヴァン様が、私にそんなことする訳、ない!


「きっと大丈夫。私は行くよ。君たち、もっと人を信用したほうがいい」


 こうして私は、ヴァン王子と一緒に行動出来ることになったのだ。


「あいつドMだな」


 後ろから意味の分からない言葉が聞こえた。




「ふう。連れてきたぞ」


 私はヴァン様に連れられて、彼のパーティーに合流した。


「あ、ラグナさん!」


 聞きなれた声。そこには、あのアリスがいた。

 おお、彼女も順調に他の攻略対象と交流を深めていたか。さすが主人公だ。


「本当はお前なんて誘いたくは無かったのだがな。お前がいないと彼女が参加しないって言うから仕方なくだ。それに、お前が変なことをしないか見張っておいてやる」


 おおう。そういうことだったのか。ついにヴァン様が、私を認めてくれたのかと思ったのに。

 いやしかし、一歩前進。ここで役に立てば、今後も誘ってくれるかもしれない。頑張ろう。


「揃ったのか」


 木の影から、長髪サラサラの眼鏡男子が現れた。

 ヒューバー! まさか彼も同じパーティー!?


 おおお。こんな近くでヒューバーを見るのは初めて。

 流石に攻略対象キャラは、他のキャラより一際イケメンだ。眼鏡というアイテムが、彼の個性を引き立たせている。


「あ、あの、ラグナです。よろしくお願いします」

「ふん。問題児か。迷惑はかけてくれるなよ」


 見かけ通りのクールな言い回しだ。なんだかゾクゾクする。

 彼もそんなにコミュニケーションが得意な方ではないのだが、頭がいいのでなんだかんだ皆から頼りにされる。そんなキャラだ。


 意外にも、攻略対象が三人揃ったパーティー。これは偶然か、それとも何か補正が働いているのだろうか。

 どちらにしても、アリスの好感度上げを邪魔しないように気を付けなければ。


 クラスでいくつかに別れたパーティーは、順に森の中に入って行った。


「俺たちも行くぞ。お前は邪魔をしないように、後ろからついてこい」


 はい。後方支援はお任せください。

 私たちはヴァンを先頭に、森の中に足を踏み入れた。


「緊張しますね。ラグナさん」

「そうだね。まあこの森には、弱い敵しかいないから大丈夫だよ」

「さすがラグナさん。頼りになりますね」


 彼女たちは、外で戦うのこれが初めてか。修業を始めた頃を思い出すな。

 確かに私も、初めての戦いは緊張した。変な方に魔法をぶっ放したり、剣がどこかにすっ飛んでいったり、カタリナには色々迷惑かけたなあ。


「おいお前、無駄口たたいてるんじゃない。しっかり見張ってろ」

「ご、ごめんなさい。話してないと落ち着かなくて」

「いやいや、アリスさんのことではないんだ。こいつに緊張感がないから」


 はい。すみません。


「出たぞ! スライムだ」


 森に入ってしばらくすると、目の前に可愛いスライムが二匹現れた。

 おお。久しぶりにスライムを見たな。元気にしているようでよかったよかった。


「まずは俺が魔法でけん制する!」

「回復はお任せください!」


 男子二人が前に出る。

 流石イケメンたち。頼りになるなあ。これならアリスの好感度も上がるだろう。


 火魔法<ファイアブレット>


 ヴァンの魔法は、スライムの頭上を越えて飛んで行った。

 あああ。ヒューバーの攻撃も、見事に大きく空ぶっている。


「くっ! 素早い奴らめ」


 悔しそうなヴァン様の表情、いただきました!


「手強いですね。ヴァン王子、もっと魔法お願いします」

「任せておけ!」


 うーん。しかし、どうにも戦闘が進まない。最初ってこんなもんだっけ?

 ああ。あんなに無駄に魔法使って。体もぜんぜん動かせてないなあ。


 しょうがない。ちょっとだけ魔法で……。

 私はバレないように、そっとパーティーメンバーにサポート魔法をかけた。


「よし! そこだあ!」


 ヴァンの魔法がスライムを捉えた。二匹のスライムは、炎に包まれてこんがり焼かれている。


「ナイスです。ヴァン王子!」


 ヴァンに向かって、ヒューバーはすかさず回復魔法をかけた。

 今、かける必要ある?

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