第89話

 一方、ブロンとバズが放った最上級魔法が上空だけでなく地上にまで猛威を振るい始めた時、魔物の群れに切り込んでいたエルクとルリは、突然辺り一面を暴風と落雷が現れ魔物の群れを蹂躙し始めたので、自分の身を守るためにエルクは全身に仙気を纏い仙気のバリアを張り、ルリは人間形態からフェンリル形態に変身して防御力を上昇させてそのままの勢いで群れの中を魔物を切り込みながら進んで行った。


 エルクとルリは頭上から絶え間なく降り注いでくる暴風や落雷を意にかいすること無く時に目にも止まらぬスピードで回避し、時に片手で振り払い襲い来る暴風や落雷を消滅させながら着実に魔物を屠っていた。


「全く、この暴風や落雷は、ブロンとバズの仕業だな。飛空魔物を倒してくれるのは大いにありがたい事だけど、何も最上級魔法を打たなくても良いんじゃないかな。実際にあの二人なら上級魔法――もっと言えば中級魔法でもグリフォンやワイバーンなら魔法の属性しだいだけど、余裕を持って倒すことが出来ると思うんだよね。俺はさ、それにそうすれば、絶賛魔物の群れだけじゃなく俺達にも降り注いでいるこの暴風や落雷も降り注いで来ない訳だしね」


『エルク、そうは言ってもあの二人も勿論そうだけれど、あなたの従魔である者達は皆あなたの事をある種の神の様に崇拝しているから、どうにかしてあなたの役に立ちたいと思って必要以上に張り切ってしまって必要以上の力を振るってしまうのよ。まあ、私は皆とは違ってあなたの事を神の様に崇拝すると言うよりは……私はあなたと生涯を共にしたいから崇拝とかじゃなくてもっと仲良く――もっと愛し合いたいの』


「え、ええ、何て言ったんだ。この魔物達の声がうるさ過ぎて最後の方、何て言ったのか全然聞こえなかったんだけど、もう一度言ってくれないか」


『な、何でもないわよ。そんなこと気にしなくて良いからとっとと魔物達を殲滅してしまうわよ。……何で一番大事なところを聞いていないのよ――もの凄い覚悟で言ったのに魔物の……ばかやろう』


 ルリはエルクに気にするなと言い先に魔物の群れに向かわせると、誰にも聞こえないようなとても小さい声で『何で一番大事なところを聞いていないのよ――もの凄い覚悟で言ったのに魔物の……ばかやろう』と呟くと、先に群れへ向かったエルクの後を追って群れへ突撃すると、先程魔物の大きすぎる声のせいで自分の一世一代の告白をエルクに聞いてもらえなかったことに激怒して、目につく魔物を片っ端から屠って行った。


 ルリの激怒ぶりにそれを傍らで見ていたエルクは、ルリが何故そんなに怒っているのかわからずに、只々困惑しながら魔物の殲滅に当たっていた。


 それから暫くして頭上からの暴風や落雷の嵐は止みエルクとルリは仙術、火の型、【火拳】【龍鎗炎弾】や氷魔法【アイスジャベリン】の連射などで、オリハルコン級魔物を屠り去り魔物の群れも残すところ後は、ヒヒイロガネ級魔物が三体だけとなった。


「ふう~、やっとここまで来たな。ルリ、ここからは力の出し惜しみは無しだぞ。相手の脅威度はお前と同等なんだからな」


『そんなこと……わかっているわよ。ここからは最初っから全力で行くわ。エルク、私に付いて来れるかしら』


「当たり前だろ。俺は何時でもお前の隣で戦うって決めてるんだよ。――それに俺達には後ろに頼れる仲間もいるしな。何も心配はいらないだろ」


『そうね。それじゃあ、そろそろ行きましょうか?』


「ああ、行こう」


 そして、今、このマロクス辺境伯領の辺境の街マスイを襲った未曾有の危機であるアダマンタイト級ダンジョン『煉獄龍の猛威』の大氾濫の最終決戦が幕を開けるのであった。







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記憶喪失の魔獣使い、ゴールド級パーティを追放されたんだが、ジョブの魔獣使いが進化したので新たな仲間と成り上がる グリゴリ @yokaranumono

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