第188話 悪戦苦闘
「足を止めるな! 取り囲まれるぞ! 動き続けろ!」
ダニアの女戦士たちは死と
深夜の戦場は混乱を極めていて、もう本家も分家もなかった。
とにかく赤毛の女たちは互いを守り合うようにして必死に敵に応戦する。
しかしダニアの女たちよりも圧倒的に敵の数が多く、戦場は黒い
戦場にはすでに戦死して動かぬ死体となった女戦士の姿が散見される。
おそらく3割ほどの戦士がすでに命を落としているだろう。
長く戦場で戦ってきた彼女たちだから分かる。
完全な負け戦だった。
生き残っている女たちは必死の奮戦を見せているが、後はジリジリと時間をかけて数を減らされ、全滅するのが目に見えていた。
女たちは戦えない彼らを先に逃がしたのだ。
「くそっ!
ナタリーは
本家に所属する双子の弓兵であるナタリーとナタリアも命がけの戦いを続けていた。
だが2人の武器は弓であり、こうした乱戦の中ではその効果を
しかも全身を重厚な装甲で
2人はその正確な射撃の腕で
「チッ! これじゃアタシら役立たずじゃないか!」
ナタリアは矢を投げ捨てて、腰から剣を抜き放った。
ナタリーも同様に弓を投げ捨てる。
だが、2人は弓兵として特化した兵士だ。
剣の腕は人並みでしかない。
慣れない乱戦の中で背後から音もなく
双子の片割れであるナタリーがそれに気付いた時には、すでに
「ナ、ナタリアァァッ!」
「くあああっ!」
背中を斬りつけられたナタリアが、悲鳴を上げながら倒れ込んだ。
切り裂かれたその背におびただしい量の血が
それを見たナタリーは逆上し、
「て、てめぇぇぇぇぇ! よくもナタリアを!」
怒りのままにナタリーは剣をメチャクチャに振り下ろし、幾度もその
敵の
それでも
「てめえぇぇぇぇぇ! ぶっ殺してやる!」
ナタリーは
すぐ目の前にボロボロの黒い歯を
だが……
目の前で動かなくなった
「落ち着け! 馬鹿野郎!」
そう言ってナタリーを引き立たせたのは槍を片手に憤然と立つベラだった。
ナタリーはハッと我に返り、ベラの両肩を両手で
「ベ、ベラ先輩! ナタリアが!」
「今ソニアが見てる!」
うつ
「……まだ助かる」
そう言うとソニアは自分の腰帯を解いてナタリアの胴体に巻きつけ、応急的な止血を
その間、ベラは近付いて来る敵を寄せ付けないよう猛然と槍を振るいまくる。
「おい! ナタリー! てめえもダニアの女なら根性決めて戦え! でなきゃナタリアもアタシらも全員死ぬだけだ!」
そう言うとベラは平手でナタリーの
「おまえが弓を捨ててどうすんだ! アタシらはしょせん一芸女だろ。ブリジットみたいに何でも出来るわけじゃねえ。ならその一芸にしがみつけよ!」
ベラの言葉にハッとしたナタリーは、先ほど投げ捨てた弓を拾い上げる。
「そうだ……アタシにはこれしかないんだ」
「やるぞ! こんなところで死んでたまるか!」
ベラが次々と槍を振るって周囲の
そこにナタリーは次々と矢を射かけて、
ソニアは傷ついたナタリアを肩に担ぐ。
そこに聞き慣れた声がかけられた。
「おまえたち! 生きていたか!」
そう言って現れたのは
武芸にも
ベラはすぐに彼女の
「ユーフェミア。無事だったか」
ソニアの言葉にユーフェミアは
「……アタシはな。だが……カミラとドリスが死んだ」
その話にベラもソニアも
カミラとドリス。
それは十刃会の中でも最年長の
本家の幹部にも死人が出てしまった。
それは重い事実だった。
「分家の十血会にも被害が出ているようだ。とにかく全滅だけは避けねばならん。一点突破でここから離脱するぞ。仲間を集めろ。分家にも声をかけるんだ」
ユーフェミアは即座に決断する。
負け戦であっても負け方というのは重要だ。
生き残れば反撃の機会は必ずやってくる。
だが皆が死んでしまえば、その機会も永遠に失われることになる。
ダニア本家の面々は悔しさを押し殺し、ユーフェミアの言葉に従って生き残りに全力をかけるべく
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