第352話 【この世全ての悪心】の能力③

 俺は杖を振り翳しながらこう呟いた。


「【出血付与】」


 その瞬間、奴らの体から不可解な程に勢いよく血柱が噴出した。


 綺麗な赤色で夜空が染め上げられ、まるで血の花火のようでとても綺麗である。


「な...なんだ!? 急に体から血が!!!」


 驚きの声を上げる奴らに俺はこう呟いた。


「諸君らには俺が【出血】のデバフを与えた」


「なんだと!? ここまで勢いよく出血を促すデバフなんて聞いた事がないぞ!?」


「くくく...、今お前達が相手にしているのは誰だ?」


「...はっ!」


 そう、今更俺が【弱体術師】であると自覚したのだろう。


 奴らの出血状態を解除する方法は2つしかない。


 一つは魔法や回復薬による治療。


 そしてもう一つは術者である俺を殺す事だ。


「まかせてください! 俺が皆さんの出血状態を治します!」


 と優しげな青年が出血している者に状態異常回復の魔法をかける。


「これで...」


 確かに一瞬だけ傷口が塞がったのだが...。


 ブシュ!!! と言う音と共に再び出血が始まる。


「おい! とまらねぇぞ!!」


「そ...そんなはずは! では回復薬では...」


 そう言いながら回復薬を仲間にぶっかける青年だったが...。


 治した側から直ぐに出血が始まるのだ。


「馬鹿な! 一つ1万ラピスする高性能な回復薬ですよ!? 治らないはずがありません!」


 驚く青年を俺は呆れた顔で見つめる。


「単に君の回復薬や魔法が俺の妨害魔力を治し切れていないのでは? もっともっと沢山回復薬と魔法を使えば1人くらいは助かるかもしれんな〜」


「ぐっ!」


 青年を嘲笑う俺に奴らは無意味な特攻を続けてくるのでした。

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