第328話 仮想の栄華

「ずき...! 和希!!!!」


「はっ!?」


 俺は優樹の声で飛び起きた。


「何ボーっとしてるの? 早く皆の所に行かないと!」


「えっ? えっ?」


 驚く俺に優樹はパシンと背中を叩く。


「シャキッとしないさい! あなたは私たちのリーダーなんだから!」


「はっ? まあそうだな」


 俺は彼女の言葉にゆっくりと視線を向ける。


「もう! もう少しで魔王軍との戦争だってのにリーダーがそんなんじゃあ先が思いやられるでしょ? ほらっ! 早くシャキッとする!」


 パンっと俺の両方の頬をパンッと優しく叩く。


「よしっ! これで大丈夫! さっ! 行こっ!」


「...ってちょっと待て! まだ1ヶ月くらい戦争まで時間はあるだろ!?」


 俺の問いに彼女はこう答えた。


「和希大丈夫? 戦うのが辛いのは分かるけどさ、私たちは勇者なんだから魔王軍と戦い続けないといけないんだよ?」


「...それは分かっているが、突然時間が早まったのか?」


「いや、普通に時間が経過しただけだけど?」


(んっ? なんだか妙に話が食い合わないな。まあ良いか。クラスアップはまだしてないがどうにかしてみよう)


 そう思いながら優樹に言われるがまま彼女の後に続いて仲間達の元に向かったのだが...。


「えっ...?」


 俺はそこに現れたメンバーに驚愕していた。


「よう! 高坂! 遅かったじゃないか!」


「全く...準備に手間取ったんですか?」


「佐藤!? 石川!?」


 そう! 佐藤がシュガーの姿ではなく元の姿で現れ、石川が何食わぬ顔でその横に立っているのだ。


 それによく見ると3人とも少し大人びているような印象を受ける。


「何をそんな驚いてんだよ」


「全くですね」


 俺を小馬鹿にしたような笑みを浮かべているが、そこにいつものような邪悪さは感じられない。


(...なんだ? 俺は何を見ているんだ?)


 そう思っていると...。


「カズ君! やっと来たんだね!」


 木の影にいた少女がこちらに向かってきた。


「...お前は!!!」


 モヤがかかってはいるがそいつが夢の少女だと理解できる。


「何を驚いているの?」


 キョトンとしている彼女に俺は杖を構えるのでした。

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