第296話 極上のディナー⑧

「ふ〜...」


 俺たちは食後のお茶を楽しんでいた。


「ご馳走様でした」


 俺がケロナにそう呟くと「ああ! また食べてくれよな!」と良い笑顔を返してくれる。


「まさかケロナ殿がこれほどまでの料理に腕を持っているとは...!」


 騎士団長であるリュートが今更俺の横でケロナのフルコースを食べていた。


「趣味で料理やってプロのシェフの料理よりも腕前が上だって言うんだから凄いよな。それにあいつはまだあの刀を抜いた事がないんだぜ。あの刀を抜いたらもっと強いと思うんだけどな〜」


 俺が未だに鑑定できない程強力な性能が秘められているケロナの刀に目を向けるリュート。


「ケロナ様は剣士なのですか?」


「ん〜? いやどうだろう? 聞いてみるか」


 俺はケロナを呼んで聞いてみた。


「なあケロナ」


「なんだ和希?」


「お前って剣士なの?」


「...ただの村娘です」


「そういうのは良いから。その刀は使えるのか?」


 その言葉に気まずそうな表情を浮かべる彼女。


「えっと...、今は無理かも」


「どういう事だ?」


「私の愛刀はある程度の力量がないと持つことすら刀が許さない特別仕様なんだよ。一応今は所有者が私って事で持ててはいるけど、お生憎様今の私は体が幼体だからね」


 そう言われたので一応彼女の体を眺める。


(たしかに今のケロナはちんちくりんだよな。こんな小さな体の中になんでこれだけの経験値が入っているのか気になってはいるけど、あまり詮索しない方が良さそうだ)


 俺がそう思っていると彼女は続けてきた。


「刀に本当の意味で実力を認められてないって訳。一応抜く事はできると思うけどそれは凄い刀としての性能しかないと思う」


「凄い刀の時点で充分なんじゃないか?」


「いや、どうせなら刀の力だけで絶対零度の氷を放ち、マグマさえも凍らせたりしたいでしょ!」


「刀の能力だけでマグマが凍るってどういう状況だよ!」


 思わず突っ込んでしまったがケロナならあり得ない話ではない。


 全盛期のケロナの力が見てみたいような気もするが、世界が終わりそうなのでやめておこう。


 俺がはあっと息を漏らすとリュートがケロナにこんなことを申し出た。


「ケロナ様、もしも貴方が宜しければ明日の正午頃にでも私と手合わせ願えませんか?」


「...んっ?」


 俺はリュートの言葉に思わず目が点になるのでした。

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