第293話 極上のディナー⑤

「次はケロナ様が作った魚料理、シバタータのハーブクリームソテーになります」


 再びあのグロテスクなハーブクリームを見なくてはいけないのかと思うとせっかく増進した食欲が停滞してしまうと思った矢先...。


「んっ? クリームの色が白くなっている?」


 先ほどのハーブクリームは確かに緑っぽい色だったのを思い出すと違和感があるが、まだ白色ならばフレンチドレッシングみたいなのでマシである。


「これなら、まあ...」


 魚のソテーにフレンチドレッシングとは何を考えているんだ? と思わずにいられないがまあ良いだろう。


 少しだけ魚のソテーにつけて口に含むと...!


「...程よいフレンチドレッシングの酸味が魚の旨味を浮き立てているのか!?」


 明らかに旨味が増しているからこそ驚きを隠せない。


 絶対に合わないであろう素材を使い合わせてしまうケロナの料理センスは本物だ。


 俺もラカラも飲むようにソテーを頬張ってしまった。



「「ふぅ...」」


 お腹が膨れてきたが次はソルベだ。


 こればっかりは改良の余地がないだろうとたかをくくっていると...。


「こちらケロナ様がお作りになられたトルカッハのソルベになります」


(んっ? こんな物あったかな?)


 先ほどまでなかったお菓子のような物がソルベの横に添えられていた。


 どうやらクラッカーみたいな物のようだ。


(ふっ、流石のケロナもこれは改良の余地がなかったみたいだな。クラッカーを置くだけとは、今までの改良に比べると弱いな!)


 そう思いながらクラッカーを食べた後にソルベを食べる。


 すると...!


(ん!? さっきよりもソルベが美味しく感じる!?)


 そう、先ほどのクラッカーはソテーの味消しの意味もあったのだ。


 まさかソルベ自体がメインディッシュの前の味消しに使われる代物だと言うのに、ソルベをも楽しんで貰おうと言う配慮に感服した。


(流石ケロナだな。プロよりもプロしてるんじゃないか?)


 そう思いながら次のメインディッシュを楽しみに待っている自分がいるのでした。

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