第269話 【感情の勇者】②

「【束縛】!」


 俺はまず小娘の動きを止める為に【束縛】の魔法を放つ!


 妨害魔力の高まりにより凄まじい速度と強度を持つ鎖が奴に向かって飛んでいく!


「なっ!? 早っ!?」


 間一髪のところで躱すやつの動きはトロい。


「どうした? その様子では後3発も避けられそうにないな」


「言ってろ! 私はまだ諦めてない」


「なに...?」


 口元を拭きながらこちらを見据える彼女の瞳は全く衰えてなどいなかった。


「お前如きがこの絶望的状況で何かできるのか?」


「さあね。私はいつも自分のできる事をやるだけだから...」


 彼女はそう呟くと小瓶を見つめていた。


「サラ...レイナ...。今一度挫けそうな私に力を貸して!」


 誰かの名前を呟いた彼女の雰囲気が変わる。


「...【極限リミテッド】【蒼極】!!!!」


 そう叫んだ瞬間に彼女の髪の色がまっ青な蒼に染まる!


「な...なんだ? それは?」


 俺自身彼女の変貌ぶりに驚くしかなかった。


「これは私の【極限の力】そしてこれが、私の【蛙雷雷速】だ!!!」


 彼女の体から蒼きイナズマが迸り、身体能力を大幅に底上げしている!


「まずい!!」


 今この時ほど【闇の波動】のクールタイムを呪った事はない。


 俺の目にも見えない光の如く速さで俺に近づき小瓶の中の物を振り撒く彼女!


 その小瓶の中の粉が俺の体に付着すると熱を発した!


「ぐあああああ!? 熱い!? なんだこれは!?」


 その問いに彼女が答える。


「薬に詳しい魔女と光の力を持つ聖女が2人で作り出した聖なる粉だよ。呪いを解く強力な光属性の魔法が込められているんだ」


「おのれぇぇ!! 俺がこんな粉如きでぇぇぇ!!!」


 その時になって和希本来の意識が戻ってくるのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る