第189話 期待の眼差し

 俺は比較的弱い魔物が出る場所でアルシェのレベルを上げる。


「姫さん、スライムの亜種がでたぞ、倒してみろ」


「はいっ!」


 元気よく挨拶をした彼女は見事な太刀筋でスライムを一刀両断した。


『EXP30を入手しました。アルシェのレベルが上がります』


「あっ! レベルが上がった感じがします」


 などと言う彼女に俺は思わず呟いた。


「お前...、本当に今日初めて戦うのか?」


「はい? 一応お城で剣のお稽古は受けていましたよ?」


「ああ...、相手は?」


「今は泣き騎士団長です。けれどあの時見た彼の戦う姿を見てかなり手加減されていたのは分かりますけどね」


「なるほどな」


 手加減されていたとは言え騎士団長に仕込まれていたのであればあのくらいの動きは予想できるな。


 んっ? 待てよ? という事はもしかしてこいつ...、意外と使えるのか?


 俺は思わず彼女に命令してみた。


「今回の標的であるレベル14程度の相手であるレイダーホース3頭の討伐だが、2頭を倒した後でお前に最後の一頭を任せてみようと思うができるか?」


 その言葉に彼女は頷いた。


「はい、【弱体術師】様が後ろについてくださるならきっと成し遂げて見せますよ」


 彼女のその言葉に俺はほんのちょっとだけ期待してしまう。


(俺たちには今まで壁役が居なかったからな。シュナには無茶をさせていたと思うしこれからはこいつにも役に立ってもらわなくてはな)


 俺は彼女に視線をうつしながらも期待の眼差しを送るのでした。

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