第182話 姫さんの好意
俺たちは【擬似幻影龍】に乗ってエトランゼに向かう。
「わぁ!? 凄い! 空を飛ぶってこんな感じなのね!」
蒼髪を靡かせながら両手を大きく広げるアルシェ姫に俺は怒鳴る。
「馬鹿っ! 顔を出すな! 危ないだろうが!」
大きな声で怒ったのだが奴は笑っていた。
「何がおかしいんだ?」
「いえ、今のやりとりが私の好きだった物語のシーンと似ていてついおかしくなってしまいました」
「ふ〜ん...。まあ良いけどさ。お前に落ちて死なれると俺が困るんだよ。お前の証言がないと俺たちは一生この町でも犯罪者扱いのままなんだからな」
俺の言葉に彼女は目を輝かせている。
「それってつまり、今私が必要とされているって事ですか!?」
(なんだこいつ...。妙に嬉しそうにしやがって)
そこまで考えるとこいつの内面がなんとなく分かってきた。
(こいつ...もしかしてオタクか!? 怒られても喜んでいるってなかなか重症だぞ!?)
しかし俺だって同じかもしれない。
もしも自分の知っているアニメなんかと同じような会話が目の前で起きたらテンションが上がるかもしれない。
まあ、クズ王にボコボコにされる前の俺だったらの話だがな。
今な俺なら同じような展開が目の前で起こっても恐らくその状況をどうしようかと考えを張り巡らせているだろう。
つくづく思うが俺も変わったな...。
何というか一瞬だけこの世界でなら俺も漫画やアニメの主人公のように大活躍できるんじゃなんて思っていた時代が懐かしい。
まあ、召喚されたのは俺ではなく優樹なんだがな...。
そこまで考えるとおかしい点に気がついた。
(あれっ? 巻き添えになっただけの俺が【弱体術師】なんていう雑魚職に就くのは分かるが、なんで選ばれたはずの優樹が【回復術師】なんて言う微妙な役職になったんだ?)
そう、彼女の役職を考えるのならば【武闘家】やその上級職である【武闘家戦士】などに就くのが普通だ。
【回復術師】なんていう職業じゃ優樹を選ぶメリットなどほとんど無い。
いや...、現実でのステータスが多少なりともこちらでのステータスに影響するのならばむしろありだと判断されたのか?
考えれば考えるほど深みに入ってしまうが、今更そんな事を考えてもしょうがない。
俺はため息を吐きながら隣でうるさい姫さんの頭を掴みながら【擬似幻影龍】を走らせるのでした。
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