幼馴染と一緒に勇者召喚されたのに【弱体術師】となってしまった俺は弱いと言う理由だけで幼馴染と引き裂かれ王国から迫害を受けたのでもう知りません

第172話 勇者VS騎士団長

「頑張ってください！　佐藤様！」

「ああ！　俺に任せてくれアルシェちゃん！」

　そう言いながら突進攻撃を繰り出す佐藤だったが...。

「ふっ...。なんだその突きは？」

「はっ？」

　グレイスは佐藤の突き攻撃を簡単に受け流し背中を斬りつけた。

「ぐっ！　流石に騎士団長って所か。なかなかやるようだな」

「そう言う君は期待はずれだな。これなら【弱体術師】の隣にいた猫人の方が手強かったぞ？」

「ぬかせ！　そう言って俺の動揺を誘っているんだろう？　その手には乗らん！」

　佐藤はそう叫びながら電撃魔法を唱えた。

「くらえ！　勇者の聖なる雷を！！」

　唸る雷撃が騎士団長に襲い掛かる！

　それを見たグレイスが鼻で笑っていた。

「何が勇者の聖なる雷だ。その程度の雷など私には届かない！　【アンチマジック】！　【騎士団の盾】！」

　魔法効果を打ち消す魔法と魔法耐性を得る魔法を放つグレイスに電撃魔法が直撃した！

「どうだ！　これで少しは思い知ったか！」

　勝ち誇る佐藤の前に騎士団長は平然として立っていた。

「嘘だろ！？　【勇者】の魔法だぞ！？」

「やれやれ。【勇者】も落ちたものだな。この程度で世界を救う？　夢物語も大概にしろよ。三下風情が！」

　素早い動きで佐藤の体を次々と切り付ける！！

「ぐああああ！！！！」

　激しい叫び声を上げながらその場に膝を付く佐藤。

「ぐっ...！　【回復魔法】」

「おやおや、もう【回復魔法】を使うのか？　案外脆い者だな【勇者】って奴は」

「くそっ！　黙れ！　こうなったら勇者の必殺技を見せてやる！」

　佐藤はそう叫ぶと雷雲を呼び出した。

「これだけは使いたくなかったんだがなぁ...。お前が悪いんだぞ？　グレイス...」

　静かにそう呟く佐藤は剣を大きく掲げる。

「【勇者の一撃】」

　そう呟いた佐藤の剣に先ほどまでとは桁違いの電撃が乗る！

　雷雲から落としたであろう自然の雷の一撃をその剣に宿したのだ！

「これが魔王をも葬りさる【勇者の一撃】！　威力がありすぎてたから使うのは戦争時のボス戦だけにと決めていたんだがな！」

　溜まりに溜まった電撃を一気に放出する！！！

「くらえグレイス！　【勇者の一撃】！！！」

　大気が震えるほどの凄まじい一撃が振り下ろされる！

　それはまさしく自然の雷に匹敵する一撃！

　並大抵の者ならば一瞬で消し飛ぶだろう！

「はぁ...はぁ...。どうだ！」

　息切れをしながら膝を付く佐藤。

　勝ちを確信しにニヤける彼だったが...。

「ふむ。流石【勇者】の一撃。なかなかの威力だ」

　少々のダメージを受けた程度な様子だった。

「なっ！？　俺の最強最大の技だぞ！！　ドラゴンゾンビすら一撃で屠った大技なのになんでお前にはそれだけのダメージしか入っていないんだ！？」

　驚く佐藤に説明を始める騎士団長。

「なぁに、簡単な話さ。ドラゴンゾンビは負の感情から生まれるドラゴンだ。対する私は聖の感情から誕生する聖騎士。そしてまた【勇者】も聖の感情に隣接する者だ。つまり君の攻撃は基本的に私にダメージを与えられないんだよ。つまりこの勝負は基本的な剣術勝負と言う事になるね」

「な...なんだと！？」

「さてと勇者様。私に剣術で勝てるかな？」

　再度剣を構えるグレイスにどうやって戦えばいいのか見失う佐藤なのだった...。