第151話 【建築士】の勇者
俺たちは取り敢えず時計台の中に入り爺さんの話を聞いていた。
「おお! 思った通り中の構造も焼失以前の物じゃ! 良くやってくれた!」
などと言われるが俺はここで一つ推測を立てた。
(この爺さんの反応を見る限り、前にここの時計台を建てたのはきっと俺と同じ【弱体術師】だろうな。それにしても【建築士】の勇者って...。もうちょっとまともな勇者名にしてやれよ)
何から何まで同じだと言われると以前の【弱体術師】がこの建物を建てて放置していったのだと思われる。
俺がその核心に触れた瞬間だった。
『【弱体術師の旅路】が加筆されました。EX【建築技術向上】【弱体化成効率UP】を取得しました。魔法【攻撃弱体化・特大】【防御弱体化・特大】【速度弱体化・特大】【知力弱体化・大】【ナーフスペル】を取得しました』
どうやら本の中で【弱体術師】が歩みを進めたようだな。
メニュー画面に有用そうなEXスキルと魔法が各種確認できた。
(【ナーフスペル】?)
聞きなれないその技を確認する。
『【ナーフスペル】この呪文を当てられた相手は完全耐性を強制的に強耐性にまで落とされ、それ以外の相手には弱体化がかかりやすくなる』
すごく有能な魔法で凄く驚いた。
(なんだよこのチート魔法は! この魔法を当てる必要はあるけれど完全耐性持ちを貫通出来るのは流石に強いだろ!)
俺が驚いていると爺さんが声をかけてくる。
「兄さん、満足したぞ! 報酬は何を支払えばいいんだ?」
「あ..ああ、この時計台を直したのは【弱体術師】だと言う噂を立てて欲しいんだ」
その言葉に爺さんは不機嫌そうな表情をうかべた。
「なぜそんな事を? もしかして兄さんが...!?」
勘のいい爺さんに俺は正体を現す。
「ああ、俺が【弱体術師】だ」
「そんなばかな! わし見た【弱体術師】は違う顔じゃったぞ!」
「やっぱりな...。爺さんが俺に支払う報酬はまさにそれだ。【弱体術師】が時計台を焼き焦がした犯人ではなかったとこの町中に触れ回って欲しいんだよ。長年時計台の管理を任されていた爺さんの話なら町の連中も耳を傾けるだろうからな」
「分かった! 任せとけ!」
と胸を叩く爺さんに俺は笑顔を向ける。
(これでよし、少しは【弱体術師】の悪い評判も緩和してくれるだろう)
俺は満足感を得ながらも、【弱体術師の旅路】の続きを眺めているのでした。
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