第98話 栗毛の少女②
「も...もうゆるひてぇ...」
泣きわめまくりながら呂律が回っていない彼女を見てようやく尻叩きをやめる。
「どうだ? 少しは金の恨みを思い知ったか?」
「分かった、分かったから...」
「じゃあちゃんと謝れ。それが最低限の謝罪だ」
彼女はムスッとしながらも「ごめん...」と呟いた。
「なさいは?」
「...ごめんなさい」
こう言うむかつくガキに謝罪の言葉を言わせるのは気持ちいいな。
だが肝心の金が返ってきていない。
「お前、30万以上あった金を一日で使い切るとは何に使ったんだ?」
「...それは言えない」
「...もう一回尻叩きを受けたいのか?」
「...わかった! 言うから! もう尻叩きはやめてくれ!」
お尻を押さえながら俺を睨みつけてくる彼女。
「...実は」
「ああ」
「...30万ラピスと【幻影の宝珠】と言うアイテムを取ってくればクラールって奴が私の事を認めて団員に加えてくれるって言ってくれたんだ! 30万ラピスは渡したから後は【幻影の宝珠】だな!」
などと言う彼女は今の状況を分かっているのか?
「お前...今からその30万ラピスを返して貰いにいく流れになるとは思わないのか?」
「えっ!? そこは兄ちゃんが私と一緒に【幻影の宝珠】を取りに行く流れになるんじゃないのか!?」
こいつは頭の中がお花畑なのか? まあ見た感じこのバラックに住んでいるみたいだし教育などはされていないんだろうな。
「お前、親は?」
「いないよ。ずっと昔にくたばったさ」
「...そうか」
「別にそんな子ここじゃ珍しくないよ。寧ろ私くらいまで成長できただけでも感謝しないとね」
確かに子供の死体もそこら辺に転がっているな。
スラム街の治安も衛生管理も最悪だ。
こんな場所で子供が健やかに育つ可能性など0だろう。
まあ、かと言って他の場所に行こうにも子供の足じゃな...。
こいつにも同情の余地はあるが、それでも付き合ってられない。
「じゃあそのクラールって奴のとこに行くぞ! そして金を返してもらう!」
「そんな事したら私が殺されちまうよ!」
「また尻叩きを受けるのと死ぬのどっちが良い?」
「それどっちにしても地獄じゃんか!!!」
「当たり前だ。お前はそれだけの事をしたんだからな!」
30万を盗むとかだいぶ大きな犯罪だぞ? それを分かって言ってるんだろうな?
「じゃあ分かった」
「おっ? ついに兄ちゃんが私の手伝いを?」
「ああ、その代わりお前には30万ラピスを倍額で返して貰うぞ」
「それってどう言う...」
俺はこの生意気なメスガキに約束の重みを教える為に【人間隷属】のスキルを使うのでした。
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