第86話 埋葬

 俺たちはフォルトの埋葬を済ませた後に一日だけ喪に服した。


 シュナには悪いが俺たちもやる事がある。


 この町でずっと止まっていく訳にはいかないのだ。


「シュナ、そろそろ行くぞ」


「はい、僕も覚悟を決めました。ですからもう大丈夫です」


 そして気になっていた彼女の言葉使いにそろそろツッコんで行こうか。


「シュナ。所でお前は何で急に僕とか言い出したんだ?」


「ああ、はい。僕は元々男の子だからです」


「...はい?」


 いきなり衝撃の事実を言われたのでインパクトが強い。


 どっからどう見ても少女にしか見えないのに男かこいつ!


 最近流行りの男の娘ってか? まあ俺にそっちのけはないがな。


「なんで女装してたんだ?」


「それは...、僕が男だとバレると他の貴族がレイスタン家の領地と富欲しさに婚姻を結ばそうとしてくると父様が言っていたからです。なので僕が独り立ちするまでは女装をして周りを欺きなさいと教えられて育っていました」


 その言葉に俺は「はぁ...」と息が漏れる。


(自分の息子に女装をさせて周りを欺かせるとか...。あの男どんだけ先の事を考えてんだよ...)


 逆に有能すぎて怖くなってきたので俺ももしかしたらシュナの成長の為の布石とかに思われていたんじゃないだろうな? と勘繰ってしまう。


 もしかしたらこの死さえもシュナの精神的成長のためとか言い出しそうで怖いな...。


 いや、流石にそれはないか...。


 俺は奴の墓を見ながら、シュナの事を任された事を実感しているのでした。

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