第40話 港町アルセージ

 俺と優樹が教会から出ると塩の香りがした。


 青空いっぱいの晴天を見て優樹は大きく背を伸ばす。


「んん〜! やっぱりここは空気が美味しいね!」


 彼女の笑顔に俺は少しドキッとした。


「あ...ああそうだな」


「まあそれは置いておいて...」


 彼女は深く頭を下げて謝ってきた。


「ごめんね和希! いくら佐藤の奴に隷属させられていたとはいえあんな酷いとして!」


 俺は彼女のその姿を見て怒りが何処かへ飛んでしまった。


『感情の沈静化により【叛逆の意思】【弱者の怒り】【怒りの魔力暴走】【憎悪の杖】の発動を終了します』


 そのメッセージと共に【憎悪の杖】が消えてステータスも元に戻る。


「いや、許すし大丈夫だから顔を上げてくれ!」


「でも...、私は...」


 自分を責めている彼女の姿は見ていて辛い物がある。


 言葉に詰まった俺はどうしようか考えていると...。


「じゃあさ、お詫びとして私がここでの生活を開拓してあげるよ。ここでは私結構人気者なんだよ〜」


 急にいつもの調子に戻る彼女。


 この復帰の速さも彼女の魅力だろう。


「分かった。よろしく頼む」


「頼まれた!」


 彼女は相変わらずの笑顔でニッコリと笑っている。


 その笑顔を間近で見られているという状況に幸福感を覚えるとは以前の俺ならば考えられない事でしょう。


「でみまずは休もうか。優樹も疲れているだろう?」


「じゃあここの領主に会いに行きましょう!」


 いきなり凄い事を提案してくる幼馴染に俺は驚いてしまうのでした。

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