第33話 【勇者】VS【弱体術師】④

「うぐっ...?」


 よろよろと後ずさる奴に俺は攻撃を入れる。


「おらっ!!」


 ばんっ! と良い音がするがこれもダメージはないのだろう。


 しかし奴の剣を俺の体から剥がす事には成功したのですぐさま回復する。


(危なかった...。もう回復できないぞ...)


 今のが最後の一階だったのでこれ以上は回復できない。


 だが...、おかげでようやくやつを【毒】状態にできた。


「なんだこれ...、気持ち悪りぃ...」


 よろける奴に俺は言ってやる。


「凄まじく状態異常耐久性能の高い防具だな。【弱体術師】の【猛毒付与】を何回も防ぎやがって...。それってどうせ王様から貰った対俺用の防具かなんかなんだろう?」


「...ぐっ!」


 明らかに動きが悪くなる佐藤をサンドバックにする俺。


 勿論奴も反撃してくるのだが、異世界無双していた奴にとってはじめての毒状態はかなり体力を消耗させているようだった。


「さっきまでは楽しそうだったなぁ...。【勇者】様!!!」


 バンバンバンと思いっきりやつを叩いて【毒】状態を延長して【猛毒】状態にしてやった。


「ぐぅぉぉぉぉ!?」


 その場で疼くまる奴に俺は攻撃の手をやめないでいるとブーイングが飛び交いだした。


「キャァァァァ!!!」


「【勇者】様が【弱体術師】なんかにやられてるぞ!!!」


 周りが動揺し出しているが俺には関係ない。


「おらおらおら!!!!」


 俺は何度も何度も奴の体に毒状態を蓄積させて殺すつもりで叩いていた。


 この世界に来て初めて心の中にあった曇りが晴れて行くのを実感した時だった。


 佐藤の横に聖銀で作られた剣が放り込まれたのは。

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