最終話 懐古主義オッサンと中二病JKは、いつまでも無双しない

「ん? モモコは、どうしちゃったモジャ。ちょっと苦しいモジャ、モモコ」


 急に、ウニボーの声が元に戻った。


「ああ、ゴメン。モジャモジャ」


 モモコが、ウニボーを離す。


「お前、本当にウニボーか?」

「クニミツは、何を言っているモジャ? オイラは最初からウニボーだモジャ」

「今まで自分が何をしていたか、わかるか?」

「寝てたモジャ。魔王の瘴気にあてられて、防御障壁を作るので必死だったからモジャ」


 桃矢とうやと融合して魔王の力を得たことは、まったく覚えていないようだ。


「お前のおかげで勝てたぞ。ありがとうな」

「とんでもないモジャ。平和が戻ったのは、クニミツたちのおかげだモジャ。礼を言うのは、こっちモジャー」


 鬼龍との戦いを終えて、オレたちは地上へ帰る。


 やはり、地上にも魔物の大群が出ていたようで。ルイやピエラたちのおかげで、被害も出なくて済んだらしい。


「おお、クニミツの旦那にモモコの姉御! ごきげんようでさあ!」


 なんと、死んだはずのスケロクが生きていた。

 アンデッドだから生きていたという表現はおかしいのだが、元気にピエラの護衛についている。

 隣には、スケチヨも一緒だ。

 一万を超えるスケルトンたちも。


「ボクも、びっくりしているのよ。どうしたの?」


 ピエラが、スケルトンに問いかけた。


「なんか、冥界から力が流れ込んだんでさあ。で、その力を浴びたらいつの間にか地上に帰っていたんでさあ。ありゃあ、なんだったんでしょうなぁ?」


 スケロクが、腕を組む。


 おそらく、桃矢のおかげだろう。彼が魔王としての力を、スケルトンたちに分け与えたのだ。


「その代わり、今までの経験値は落としてしまいやした。イチから鍛え直しでさあ。ガハハハ!」


 スケロクたちは、上位種であるリッチからただのスケルトンに変わった。なのに、豪快に笑っている。


 とにかく、無事でなによりだ。


「街に平和は戻ったみたいだな」

「ああ。クニミツの判断のおかげだ」


 ルイが、剣をしまう。


「全員があの場にいたら、街の異変に気づかなかった。ありがとう、クニミツ」

「いや。オレは、当然のことをしたまでだ」


 オレたちは、領土へ戻った。



 




 それから一ヶ月、オレたちは相変わらず旅を続けている。


 面白そうな素材を集めてはクラフトし、領土も少しずつ開拓と、割と忙しい。


 全部自分でやるって、大変なんだな。


 そんなことを考えながら、オレは日課である夕飯を作る。モモコも家事を手伝いたいと言うから、一緒に作った。


「おなかすいたモジャ」

「そうよね。いただきましょう」


 ウニボーとピエラが、風呂から出てくる。


「うまそうだな、クニミツ」


 ルイが、ボールに入ったツナマヨの匂いをかぐ。


 今日はツナが手に入ったから、ツナマヨで生野菜を食うことにした。


 みんなで手を合わせ、食事にする。


「だんだん、野菜がおいしくなってる」


 今までそんなに野菜を取ろうとしなかったモモコが、セロリをかじっていた。


「このセロリ、大きくて歯ごたえがあって好き」

「よかった。作った甲斐があったぜ」


 形は微妙だが、味は保証する。


「いつもなら、好きなものしか食べない印象だったが、どうした?」


 聞くと、モモコが「んふふ」と笑う。



「赤ちゃんできた」



 モモコが、腹をさする。まだ大きい変化はない。だが、モモコの中には確実に、命が宿っているのだ。


「マジか? 避妊の魔法があったはずだが?」

「実は、だいぶ前から使ってなかっんだよね?」


 こいつ……。


「おめでとう」


 オレは、モモコを抱きしめた。


「よかったモジャー」


 ウニボーが、飛び上がる。


「おめでとうモモコ。こんなにうれしいことはない」

「新しい家族ができるって、素敵ね」


 みんなも拍手して、祝福してくれた。


 これで、オレも父親か。


「まだ性別とか、わかってないけど」

「どっちでもいい。ホントにおめでとう」

「ありがと。名前は二代目ピンクドラゴンロザ・ドラッヘにしようかなって」


 そこは中二的なネームにしなくていい。




 そんな感じで、オレたちの日常は続く。


 懐古主義なオッサンのオレと、中二病JKのモモコは、いつまでも無双しない。

 

                           (おわり)

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懐古主義オッサンと中二病JKは、無双しない 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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