第36話 思わぬデートに

「そ、そうね。ボクも見たいところがあるのよ」


 ピエラも、ルイと話を合わせる。


 なぜか、二人がニヤニヤしながら話し合う。「ねー」とか言いながら。


「ギルドまでは一緒についていくわ。そこからは、個別で行動しましょう」

「あとクニミツは当日、モモコとずっと一緒にいてやれ」


 ルイが、オレを指差す。


「あ、オイラもここでのんびりお留守番しているモジャ。領地のチェックがしたいモジャ」


 ウニボーまで。

 ひとまず、当日は各々で別行動することに。



 朝早くから、モモコはシャワーを浴びていた。水シャワーでサッと身体を流し、「よし」と言いつつまた温かいシャワーに切り替える。はじめからホットのシャワーを使えばいいのに。




 ワントープの街へ戻って、ギルドに報告をした。


「スキュラなんて大型の魔族がいたんですね。それで、あのエリア一帯のモンスターが凶暴化していたと。例の巨大ウミガメも、そこから来たのでしょう」


 ギルドが、改めて調査隊を出してくれることに。


「ではワタシはここで」


 ルイは寺院経由の依頼を掲示板から剥がして、持っていく。


「ボクも、これに用事があったんだよね」


 錬金術関連の素材集めのため、ピエラもギルドを後にした。


 さて、この後は自由時間だが。


「クエストでも、適当にこなすか? それか、銃の調整か」

「戦闘ばっかりだったから、違うことがしたい」

「じゃあ、領地の整備とか」

「領地の人がしてくれるし、モジャモジャが見てくれてる」


 まいったな。仕事がなくなったサラリーマンみたいになっちまった。


「手頃なところを回る。クニミツ、ついてきて」


 モモコに連れられて、街を見て回る。


「水着が売ってる。入ろう」


 洋服売り場に、水着が置いてあった。港町で海が近いからだろうか。海水浴ができるとは。


「庶民的な値段だな」


 価格もお手頃だ。


「ちょっといいか?」


 店員を呼び、海水浴について聞く。


「ここの海は、泳いでもいいのか? たとえば、貴族などのVIPのプライベートビーチだから、ヘタに入ると怒られるとか」

「とんでもございません。ちゃんと身分ごとに区切られていますので、トラブルの心配はございません」


 ならいいか。


「クニミツは、どの水着がいい?」


 モモコがオレに、二着の水着を見せてきた。


「ヒモだけってのは、ヤバくねえか?」


 一着は、ほぼ布面積がない。


「せっかく異世界に来たんだから、ちょっと大胆になりたい」


 知り合いなんて、誰もいないからな。


「オレは、オーソドックスな方がいいかな。これもこれで、際どいし」


 普通のビキニを、オレは指差す。変に冒険されても、目のやり場に困るだけだ。


「じゃあ、こっちにする」


 案外あっさりと、モモコは折れる。


「いいのか?」

「ホントは、こっちが限界だったり」


 モモコは、赤面した。


 ムリしていたのかよ。


 水着を買って、海へ向かう。


 一般向けの海水浴場だからか、家族連れが多い。カップルなどもチラホラいて、オレはついついモモコを意識してしまう。


「いいのか?」

「私たちは夫婦だから、問題ない」


 そうだったな。冒険ばかりで、ついつい忘れてしまいがちだが。


 オレはすぐに着替え終わったが、モモコはまだのようだ。


 今のうちに、海水浴場でパラソルや水分を買っておく。


 店頭の屋台で、魚介を焼いているではないか。


 酒こそ飲まないが、オレは焼いたエビやホタテに興味をそそられた。


「ホタテをくれ」

「あいよ」


 焼き加減のちょうどいいホタテに、しょうゆをかけて、と。


 うん。最高だ。味付けがしょうゆだけなのに、ホタテに味が染みていて満足できる。


 これくらい気持ちを反らしておかないと、モモコの水着姿なんてマトモに見られない。ヒモなんて着られた日には。


「おまたせ」

「おう。先に始めさせてえええええ!?」


 現れたモモコは、選ばなかったはずのヒモビキニを着ていた。

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