第30話 世界の裏側、再び
みんなでウミガメを解体し、使えそうな部位を探す。残念ながら、肉は汚染されていた。
「すっぽんみたいに、食えると思ったんだが」
「こんな瘴気まみれの肉なんて食べたら、モンスターになっちゃうモジャ」
魔法使いに買い取ってもらい、術式の素材にしたほうがマシだとか。
「甲羅は使えそうだ」
「いい装備になるモジャ」
素材を、アイテムボックスに入れる。
「クニミツ、モモコ、今の武器は?」
「火炎放射器。人類の夢」
モモコが、ルイからの質問に武器をかかげながら答える。
銃身にタンクがあり、そこへ魔力を流し込むことによって銃口から火を吹く。
「ルイ、お前はブレスが吐けないのがコンプレックスだって言っていたじゃないか。それを解消してやったんだ」
魔力で打ち出せる火炎放射器を、【重火器錬成】で作ったのである。
「すごいな、クニミツは! ワタシの弱点を、克服させてくれるなんて!」
ルイが、火炎放射器を担ぎながら飛び上がった。
「火炎放射器は、ロマン武器。一度作ってみたかった」
モモコの言うとおりである。やっぱり漢なら一度は「汚物を消毒」してみたい。
「これは、サードウェポンにしよう」
ルイの武装は、片手に持つ聖剣と盾でヒットアンドアウェイスタイルと、防御を捨てて両手斧を振り下ろすインファイトスタイルがあった。
斧は、第一村人である元戦士から使わなくなった戦斧を譲ってもらい改造したものである。
これに、中距離からブレス代わりの火炎放射器を放つスタイルも加えた。
「よし、この武器は
火炎放射器を構えながら、ルイが不敵な笑みを浮かべる。
まあ、オレたちは魔術師を二名連れているから、火炎放射器はそこまで必要ではないのだが。
「ありがとうクニミツ。おかげで面白い術を思いついたわ。はあ!」
壁に向かって、ピエラが手から炎の光線を放つ。ピエラクラスの高位ウィザードとなると、術を自分で作れるようになるのだ。
「火炎放射器と杖を融合させて、熱の光線を撃てるようになったわ。その名も【ブラスト・レイ】よ」
「あーっ、いいなぁ」
熱線のビームか。こっちはこっちで、そそられる。
ピエラには、こちらが作った武器を魔術的に分析してもらうことにしよう。こちらも、さらなる進化が期待できそうだ。
一旦領地に戻って、ピエラの両親に素材の一部を渡す。オレたちが加工する分を取っておいて、残りはワントープのギルドで買い取ってもらった。
ボスの処理が済んだら、いよいよ【世界の裏側】へ向かうことに。
内部は、岩山のように大きな貝類でできた洞窟だった。
「こんな化け物が潜んでいたんだ。向こう側はえらいことになっているだろうな」
「油断できないモジャ」
やはりというか、海産物モンスターがほとんどだ。人間と同じくらいデカいイソギンチャクなど、並の冒険者だったらトラウマモノだろう。
「ブラスト・レイ」
まあ、ほとんどがピエラの火炎ビームで溶けていったが。
巨大カニの他に、カニの甲羅に包まれた人間が現れた。
「なんだこいつら? やたら戦闘慣れしているぞ!」
カニ人間が、異様に強い。固い防御力に任せた、力押しキャラだと思っていたのに。
「だったら、隙間を縫う!」
甲羅の破壊を断念して、モモコは光でできた剣を抜いた。懐へ飛び込んで、関節部分へ斬りかかる。
死に際のカニ人間が、モモコの首をはねようとハサミで刺突してきた。
「させるか!」
ハサミを蹴って、オレはモモコを抱き寄せる。
「ありがと」
「おうよ。しかし、なんだこの強さは?」
頭のカブトから、人間の骨らしきものが覗いていた。
オレは、兜を足でゆっくりと外す。
「冒険者だ! こいつら、中に入れた冒険者をモンスターに変えているのか!?」
これは一旦、死体を持ち帰ったほうがいいかもしれない。例の村人に、確かめてもらえば。
「ワントープの寺院へ持っていくモジャ。もしかしたら、蘇生できるかもしれないモジャ」
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