第24話 どうして現役世代が謝るの?

 モモコはピエラたちに、「もう死んだヤツの罪滅ぼしなどを、現役がする必要はない」と告げた。


 ピエラは、呆然としている。「その発想はなかった」と言わんばかりに。


 鶏ダンゴ鍋が煮える音だけが、静寂の中で鳴り続けていた。


「オレも同意見だ。当事者に詫びを入れさせよう」


『上の世代のやらかしを下の世代に丸投げ』ってのは、最近でも我が国で問題視されている。当事者が悪いってのに。


「わかるわ。だからボクも、あんまり乗り気じゃないのよね」


 コントみたいな謝罪方法を見た限り、オレたちもピエラから本気度は感じなかった。不満があったんだな。


「いい方法がある。このやり方なら、ご先祖に直接ダメージが行く」


 モモコがアイテムボックスから、粘土人形を取り出す。


「ご先祖由来の品ってある?」

「あるわよ」


 ピエラは先祖のノームが所持していた杖を、モモコに差し出した。


 モモコは、杖を粘土に押し込んだ。


「この状態で殴ったら、相手の魂に『激辛の刑』がくだされる。どうぞ」


 ピエラはモモコに粘土人形をもらう。直後、地面に落として足で踏んづけた。


『アギャアアア!』という声が、粘土人形から漏れ出す。


 コピーも可能で、いくらでも大量生産できる。


「どこで手に入れたの、こんなの?」

「ネクロマンサーを倒したときにドロップした」


 使い所がわからず、そのままにしていたのだ。


「早速使ってみるね」


 ピエラが速攻で人形を複製した。ドリスさんにコピーを渡す。


 楽しそうに、ドリスさんたちが人形をシバいている。


 領地に、ノームの絶叫がこだました。


「ああ。これさえあれば、もう謝罪の旅なんて行かなくて済むね」

「おしおきも激辛なので、さして罪悪感はないはず」


 ドリスさんたちの様子を見た限りでは、ノームの悪行もイタズラ程度のようだ。深刻な悪事ではなかったらしい。


「ええ。ありがとう」

「相手先にタダで渡して、好きにしてもらえばいい」

「夢がひろがりんぐね!」


 速攻で、ピエラは伝書鳩を召喚して、足に手紙をくくりつけた。両親に連絡を入れて合流することにしたらしい。


「港町ワントープにいるはずよ」


 目的地が決まった。では旅立つとしよう。


「ではドリスさん、お世話になりました」

「お気をつけて。では我々はこれで」


 ドリスさんたちは、帰っていった。


 ルイとピエラが風呂に入っている間、オレとモモコは鍋と食器を洗う。


「あっという間に鍋が空になったな。驚いた」


 野菜の欠片すらない。モモコのおにぎりも、シメのうどんもキレイになくなった。


「みんな食べてくれてよかった」

「ああ。お前も手伝ってくれてありがとうな」

「明日から、長旅になるな」


 ココに来て、初の遠出だ。

 いつもは素材集めのため、近場のダンジョンを巡ってばかりだった。どんな素材が手に入るかわからなかったから、お試ししかできなかったのである。

 今回からは、新鮮な気持ちで冒険だ。 


「そうだわ。キャンプ用品とか、必要なんじゃ?」


 湯の方から、ピエラの声が上がった。


「いらないモジャ。寝るときは、オイラのポータルでここに帰ってくるモジャ」


 性別不詳のウニボーが、質問に答える。


 アイテム整理なども、この街に戻ってから行えばいいだろう。


「そうね。あなたのワープがあるのよね」

「便利だなぁ。うらやましい」 


 二人の会話を聞いて、大事なことに気づく。


 家の周囲をグルっと観察して、モモコのかなり大変だとわかったようだ。



「やばい。客間を作ってない!」



 このままでは、固いリビングで寝てもらうことになる。


「まずいね。今のうちにクラフトしておこう」

「素材は大量にあるからな。一日でできるだろ」


 オレが客間を建設し、モモコが客室用のベッドと家具を揃えた。


 レベルアップの恩恵で、クラフト能力が大幅に向上している。おかげで、数分のうちに客間ができあがった。


「これは見事だな」

「わー。すごいわね! でもいいの? あなたたちの家より大きいみたいだけど」


 オレたちの家より、豪華になってしまっている。


 新しい素材が手に入ったら、家も新築するかな。

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