第23話 お詫びのピコピコハンマー
ピエラが、オレたちのパーティに加わりたいそうだ。
「お前が?」
「ええ。世界の裏側を回るんでしょ? お詫びも兼ねて、役に立ちたいのよ。それに、魔法使いがいた方がいいでしょ?」
「そりゃあな。術士がいるに越したことはないが」
オレたちが話していると、ケラウノスが点滅した。
『ピエラ、クニミツ殿が困っているのである』
「そっかー。一人で決めちゃダメだよね。相談してて」
オレは、モモコと向き合う。
モモコはコクコクとうなずいた。
「会話とか、イヤがってたじゃん」
「キライなんじゃない。ノリが苦手なだけで」
身内に振り回された同類なので、共感はできるという。
「あとさ、気になることがある」
オレは、モモコに耳打ちされた。
「ああ、それは引っかかってたんだよ。わかった」
とりあえず、その話は最後にするとして。
「ルイは?」
「私か? 仲間が増えるのは構わんぞ」
話を聞いていなかったかのように、ルイはひたすら鶏ダンゴを食う。気持ちいいくらいに食うな。それにしても、コイツも妙なのだ。背は高いが、エルフではない。ただ、プロポーションは人間離れしている。
「いやあ、ドラゴンニュートにまで認めてもらえるなんて、ボクも鼻が高いわね」
ピエラの言葉で、オレとモモコは驚く。
「ルイーゼって、ドラゴンだったの?」とモモコが尋ねた。
さも当たり前の様子で、「そうだが?」とルイは返す。
「正確には竜人だな」
ドラゴンと人間の間に、ルイは生まれたそうだ。
「しかし、竜族の王国では弱い方だったのだ」
それで、役立たずの烙印を押されてドリスさんに拾われたと。
「肌を完全に人間化しているからな。シッポも隠しているし」
「そこまでやるのか?」
「驚かせてしまうからなー。それに、ワタシはブレスを吐けないのだ」
ブレスを放てるかどうかが、一人前かどうからしい。
「だから、ドラゴンであることは黙っていたんだよ」
ドラゴンなら、この食欲もうなずける。
「そうだった。ウニボーはどうなんだ? 迷惑をかけたのは、コイツの肉親なわけだが」
「ピエラに害はなさそうモジャ。オイラは大丈夫モジャ」
なら、決まりかな?
「そうそう。お詫びの余興をするわね。あなた、これ持ってくれるかしら?」
ピエラが、ドリスさんにハンマーを持たせた。おいおい、何をやらかす気だ?
「今からボクがダッシュするから、あなたはこれでボクの顔面を殴ってちょうだい」
「大丈夫なのですか?」
「形だけだから」
まるで、コメディアンのハリセンチョップみたいだな。
「いくよー。うおー」
ピエラが、ドリスさんのところまで走ってくる。
『我がサポートする。あなたは、じっとしてくれればいい』
ケラウノスの補助を受けて、ドリスさんが横向きに構えた。
「ウガー」
ドリスさんのピコピコハンマーが、ピエラの顔面にヒットする。
そのまま、ピエラは地面を滑っていった。なるほど。マントは大袈裟なリアクションのためか。
「今のって、お詫びツアーのたびにやってるのか?」
「そうだよ。OK。ご協力ありがとう」
ピエラが、ケラウノスを回収する。
この演出は、ドッキリ番組で見た。騙された人が仕掛け人を、ピコハンで叩くのだ。
「じゃあ、ウチのパーティへようこそ」
「ただし条件がある!」
モモコが、指を一本立てた。
「な、なにかしら?」
「しゃべる武器の作り方を教えて」
目を輝かせながら、モモコがピエラに詰め寄る。
対照的に、ピエラは困った顔になった。
「実は、ボクも知らないのよ。両親が作ったもので。理屈もチンプンカンプンだったわ」
モモコは、うなだれる。
「じゃあ、仕方ない。ようこそ」
「ありがとー、モモコ」
「それと、これはすごく重要なこと」
さらに、モモコは条件を出した。
「どうして、あなたたち現役がお詫びに行っているの? 悪いのはご先祖じゃん」
オレに耳打ちしてきた内容を、モモコがピエラに問いかける。
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