第10話 スキルツリー
モモコが、オレの嫁になると言い出した。
「ちょっと待て。いいのかオレが夫で!?」
「いい。あんたいい人だし、こっちには他に頼れる人もいないし。変なヤツに絡まれるよりは、クニミツがいい」
えらい消極的な理由だな!
「命の恩人だし」
「いや、オレら結果的に死んだじゃねえか」
オレはモモコを、車に乗せて逃走した。
とはいえ、その直後に崖へと転落してしまい、ここにいる。
「責任感じてるんだ」
モモコも一応、気にしてくれていたのか。
「別にかまわないよ。寄りかかった船だ。最後まで付き合うさ」
「ありがと」
「でも、将来のことだぞ」
「龍洞院の名前を、一刻も早く消したかった」
ああ。そうだったのか。本当に、家がイヤなんだな。
「迷惑?」
「いや。いいさ」
オレは、配偶者の項目欄にモモコの名を入れる。
「家族になろう。頼れる夫になれるかわからんけど」
「頼られたいって気持ちがあるなら、十分うれしいよ」
よし。これで名実ともに夫婦となった。
「おめでとうございます。でしたらわたくしナターリエが立会人となります。祝福を」
「どうもありがとう」
受付嬢のエルフ、ナターリエが、オレたちのために祈ってくれる。
「ではステータス表を」
「いや。オレはもう持ってるんだ」
オレとモモコが、端末を差し出す。
「ヤバいのか? オーバーテクノロジーすぎるとか」
「特に問題はありません。いやあそれにしても、女神から直接支給されるとは」
ナターリエが端末を調べながら、オレのステータスを確認をした。
「みんな紙だね。ステータス表とか、もっと大きい金属板だった」
「オレたちの端末は、拡大縮小機能があるな」
他の冒険者たちのステータス表を覗き見する。
四回折りの金属板に、スキルツリーが書かれていた。
それにスキルポイントを打ち込んで、スキルを手に入れる仕組みのようである。
ただ、ツリー形式だ。欲しいスキルに到達するまでは、レベルとポイントを要求される。
「お二人の職業欄も驚きました。低いレベルで上級職でいらしたので」
「そうなんだよな」
スキルツリーの内容は、他の冒険者と変わらない。
だがオレたちは初期レベルの段階で、上級職を選べるようだ。
他の冒険者たちは、初級職をある程度経てからでないとオレたちのような職業は選べないらしい。
いろんな過程をすっ飛ばしているんだよな。
「ステータスやスキル等のご説明も不要ですね? 端末が教えてくれるようですし」
スキルについての説明書がついているのも、この端末のすごいところだ。
「依頼書はあちらの掲示板に貼ってありますので、気になるものは端末にメモしておいてください」
「OKだ」
例の魔王の残党を討伐する依頼もあるな。
気になる依頼だけチェックだけしておいて、新居へ向かう。
街外れの林って言っていた。とすると、ここか。
「おお、これは本当にボロいな」
見せてもらった小屋は、雑草どころか木まで生えていた。井戸は枯れ、小屋からは広葉樹が天井を突き破っている。
「リノベーション、お願いしたほうがよかったか?」
オレがうなだれていると、モモコは腕をまくった。
「これくらいがいい。クラフトの出番」
「そうだったな」
オレは、クラフトの主なやり方を学ぶ。
「クラフト」
木の中に生えている大木に、オレは手を当てた。
のこぎりなどを必要とせずに、木は丸太へと変化する。
モモコは、風魔法で草むしりをしていた。
みるみるうちに、作業場が広くなっていく。
「で、作業台を置くか」
「うん。クラフト」
ある程度の広さを確保した後、モモコは【作業台】を開発した。材料は少量の木材と、岩である。
「鉄ってない? 作業台に必要なんだって」
「あるぞ」
オレは、ドロップ品の剣やヨロイをモモコに提供した。
「これで……いけた」
作業台が完成する。
見た目はミシンの台といえばいいか、長細いスタンディングデスクを思わせた。
「これで、銃の製造に一歩近づいたな」
「だね」
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