第15話 四番隊副隊長

 次の日

 思い切ってリバイアサンに挑むなんて言ったが、いざとなるとやっぱり怖いな。

大通りを歩きながら、そんな事を考えていると、行きつけのカフェを見かけた。


「ここのパフェ美味しいんだよな。食べて気合入れよう!」


 俺は見た目に似合わず、雑食性みたいだ。

だから、人間と同じ食生活をしても、体に異常は無い。

今の所は。

中に入ると、見覚えのある少女が、カウンターに立っていた。


「あれって……確か四番隊の副隊長だ!」


 たしか、ライムって言ったよな? 何か困ってるようだな。


「あわわわ!! 財布持ってくるの忘れちゃったよぉぉぉ!!」


 どうやら財布を持ってくるのを忘れてしまった様だ。

はぁ……仕方ねぇな。

俺は持っていた百メガをカウンターに置いた。


「これ、一つお願いします」


 突然俺が割り込んだ為、店員は困惑する。


「お客様、順番は守ったほうが……」


「コイツ、俺の連れだから、俺が代わりに払うわ」


「え!!?」


 ライムと店員は目を見開いて驚いていた。

驚いた理由は違うだろうけど。

そして、俺は二人分代金を支払った。


「それでは、レンタルする椅子をお選びください」


 この世界では、住民の体格にばらつきがある為、それぞれのサイズに合わせた椅子をレンタルするのが、前世の外食との違いである。


「俺はいつも通り、Lサイズの背もたれ無しで、お前は?」


 俺がライムに尋ねる。


「う、うん。Mサイズの背もたれ有りでお願いします」


 何で背もたれまで選べるかというと、住民の中には尻尾が生えている者もいる。

リザードマンとか。

俺も尻尾が生えているから、背もたれがあると邪魔で座ることが出来ない。

だから、多種多様な種族が共生するこの街では、背もたれが有るか無いかを選べる飲食店が多い。

有難い事だ。


「あの、すみません。奢ってもらう感じになって。必ずお返ししますので……」


 ライムは申し訳ない様子でうつ向いている。


「別にいいぜ。俺達リバイアサンを狩る同士だろ」


「仲間のピンチにこれくらい安いもんさ」


「はうぅぅぅ、ごめんなさい。ありがとうございます」


 俺からしたら安い出費だしな。

ライムは少し安心したのか、少し笑みを浮かべた。


「改めて、シリウスだ。よろしく」


「ライムです……ライム・レウスフィールドです。よろしくお願いします」


 俺達は改めて自己紹介をする。


「ライムはさ、四番隊の副隊長なんだろ。隊長のマインとはどんな関係なんだ?」


 俺が尋ねると、ライムは頬を少し赤らめて恥ずかしそうに言う。


「お姉ちゃんみたいな人……」


「あの人は、独りぼっちだったわたしにも優しくしてくれたのです」


「確かに優し気な雰囲気とか似てるかもな、なんか姉妹みたいだな」


 俺がそう言うと、ライムは何か言いにくそうに答える。


「あの……わたし男の子です」


「へ? 今なんて?」


「わたし男です」


 ちょっと待て!! この顔で男!!? 冗談だろ!!? どっからどう見ても美少女だろ!! そこら辺の女より可愛いじゃねぇか!!!


「つまり、お前男と言う事は、生えてるのか!!?」


「ん?」


 俺は超デリカシーの無い質問をしているが、ライムはその意図を理解していなく、キョトンとしていた。

いや、天然かよ!!


「とにかく、俺達は仲間なんだ。遠慮して敬語なんて使わなくてもいいんだぜ」


「ああ、そうだ!! お前、副隊長って事は強いんだろ。ちょっと特訓付き合ってくれよ!!」


 いくら何でも鍛錬なしで伝説の怪物に挑むのは無理があるからな。


「わたしはそんなだけど……」


「でも、わかりました! 助けてくれたお礼です! 隊長にも聞いてみます!」


「よろしく頼むぜ!!」


 その後、俺とライムとマインによる、一か月間の打倒リバイアサン作戦が始まった。








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