第4話 イスペルダム

 スライムの案内の元、イスペルダムにたどり着いた。


「でっかい街だな!」


 本当に大きな街だ東京並みにデカい。

俺が驚いていると、スライムが話しかけてくる。


「街に来たのは良いっすけど、これからどうするつもりっすか?」


 確かにそうだ。展開が早すぎて、この後どうするか考えて無かった。


「そうだな。取り敢えず日雇いの仕事でも探すか。お金ぐらいは持っておかないとな」


「お金ぐらいはって、あんたモンスターっすよね」


 スライムは呆れた様に言う。


「だけど、一部のモンスターも一緒に住んでるって言ってただろ。ほら、あそこにだっているじゃねぇか」


 俺達の視線の先にはゴブリンの親子が買い物をしていた。


「一部のモンスターと言っても、人間にとって害が少ないモンスターに限るっす。あんたの場合、素性も分からない上、大型のモンスターっすからね。それに……周りを見るっす」


 言われた通り周りを見渡すと、周囲からの視線を強く感じた。ヒソヒソと俺達を見て何かを話している。


「何だ? このモンスター? 見たことないぞ」


「明らかにヤバそうよ」


「大体、こんなデカいモンスターが人里に何の用だよ」


「何かスライム抱えてるし、食べるつもりなの? 怖いわ~」


 やべぇ、白い目で見られてるな。

昔の俺を思い出すな。


「ある意味懐かしいな……」


「何か言ったっすか?」


「なんでもねぇよ」


 俺は軽くスライムを流しつつも、尋ねる。


「だがスライム、このようだと仕事見つけるのも大変そうだな」


「今頃気付いたんすか?」


 俺が溜息をついていると、スライムが不満そうな口調でいった。


「後、さっきからスライムって呼んでるっすけど、僕にはユラって言う名前があるっす」


 そういえば、俺達名乗って無かったっけ。


「そうか悪いな。ユラって言うのか」


「俺の名前は……」


「おい!そこのモンスター!」


 俺が名乗ろうとすると謎の男に声を掛けられた。

その瞬間意識がぼやけて眠くなってきた。

俺はそのまま眠りに落ちた。



 目を覚ますと檻の中だった。


「何だここは?」


 俺は街にいた筈だろ? なんでこんな所に閉じ込められているんだ? 薄暗いし誰もいねぇし気味の悪い場所だぜ。

俺は記憶を整理してみる。


「確か、誰かに急に声を掛けられて、気付いてら眠っていた。もしかしていわゆる催眠術か?」


「そういえば、ユラはどうしたんだ?」


 そんな事を考えていると、サングラスをつけた柄の悪そうな男たちが数人、檻の中に入って来た。


「来い!」


「は!? いきなり何だよ!?」


 すると、後の男たちに周囲を囲まれると、すぐに魔法陣の様なものを展開し、そこから出た鎖の様なもので拘束された。


「おい!! 何すんだよ!! 離せ!!」


 俺は抵抗するが、がっちりと手足をロックされて動けない。

これ、アニメでみた感じだとバインドに近い。 

ていう事はこの世界は異世界で魔法があるのか?


「行くぞ、これからお前は俺達の兵隊だ」


「兵隊ってどういう事だ? 後、ユラはどこへやった!!?」


「行けばわかる」


 そして、俺は男たちに連れられ外に出る。

外は闘牛場を思わせる様な造りだった。

周囲には大勢の柄の悪そうな観客がいた。

これはまさかと思っていると、出口は締め出され、俺を連行した男たちはいなくなっていた。


「はぁ!!? どういう事だよ!! 何でお前らいなくなってんの!!?」


 そう嘆いていると、向かいの出口から「ズシン!! ズシン!!」と何かの足音がする。

なんだなんだ!? 何が始まるんだよ!? 中から出てきたのは、屈強なトロールだった。

体格は今の俺よりも少し大きく、五メートルぐらいだった。

唖然としてつい口をポカンと開けていると、突然アナウンスが流れる。


「今回の試合は制限時間は無制限!! どちらかを先頭不能にしたら勝利!! どの攻撃も有効打として認める!!」


 時間無制限!? 攻撃は何でもあり!? どちらかが先頭不能!? ふざけてんのか!!? つまりこれ、完全に路上の喧嘩じゃねぇか!! そんなのに出るなんて俺は許可してないぞ!! そもそも俺は喧嘩で勝ったことがねぇんだぞ!!


「ぶっ殺せ!! トロール!!」


「無名!! テメェにいくら賭けたと思ってんだよ!! 根性見せろや馬鹿野郎!!!」


「処刑だ処刑!!!」


 しかし、会場のボルテージは最高潮。

雨あられの様にヤジが飛んでくる。

やべぇ、マジで闘うのかこれ。


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