第2話 転生

 俺は目を覚ました。


「あれ、何で俺生きてるんだ? 今確実に死んだはずじゃ?」


「てゆうか、ここ何処だ?」


 あたりはうっそうと茂った森の中だった。

明らかに俺が飛び降りた場所とは違う所だった。


「まぁ、取り敢えず誰もいなさそうだし、歩き回ってみるか」


 しかし、立ち上がった瞬間、異変に気付いた。


「あれ、ここ森だよな? 木がびっしり生えてる。でも一つ一つが小さいぞ」


「それに、なんか物凄い力が強くなったような」


 まさかと思った俺は、自分の手を確認する。


「やっぱり……これ人間の手じゃねぇ!! どういうことだ!!?」


 俺は咄嗟に走り出す。

嘘だろ、これはつまりラノベとかでよく聞く異世界転生って奴だ!! でもどう考えても今の俺は人間じゃねぇ!! 俺が一歩踏みしめるたびに、地面が振動するのを強く感じる。

また、俺の手足の指は四本しかなく、鋭い鈎爪があって、色は青かった。

俺は一体なんなんだ。

そう考えている内に、森の中に小さな泉を見つけた。

すぐに、俺はそれを覗き込む。


「マジかよ!! 俺人間じゃ無くなったじゃん!! なんだよこのヤバそうな怪物は!!?」


 そこに映っていたのは、たれ目で瞳の色は青く、ウーパールーパーの様な形の頭と尻尾、腕は下半身に届く程の長さで、口にはナイフの様な鋭い歯がびっしりと並んでいる、正真正銘の青い怪獣だった。

そうだ、これは現実じゃない。

夢だ走馬灯だ。

だって俺は死んだんだぜ、マンションから飛び降りて。

普通に歩いてる時点でおかしいだろ。


「もし、この森を抜けたらその先は天国なんだ。そしたら、俺は楽になれる」


 しかし、歩いても歩いても出口が見つからない。

まぁ、よく考えればここが何処の森か、そもそも、どんな世界なのかすら分からない。

少なくとも俺の住んでいた世界とは違うとは思うが。


「やっぱりここ、天国ではないな。あの世の物とは思えねぇ。俺は本当に転生したのか?」


 そして、その不安が確信に変わる。

近くの茂みからなんか音がする。


「なんだなんだ? 茂みの奥が騒がしいぞ。もしかして誰かいるのか?」


 茂みに身を隠して、覗いて見ると……いた! 緑のスライムだ! 異世界もののラノベとかアニメとかでよく見る奴だ。

大体スライムって、初心者の冒険者達に、経験値稼ぎの為によく狩られる気の毒なモンスターだ。

そして、ようやく俺は異世界に飛ばされた事を自覚した。

スライムなんて地球には存在する訳無いんだ。


「やっぱり、ここは異世界なんだな。この姿の俺もコイツも、元の世界にはいねぇ」


 だったらやる事は一つ、聞き込みだ。

幸いな事に、相手はスライムだ。

流石に自分より遥かに大きな俺に攻撃してくることは無いだろう。

それに今の俺はモンスターみたいなもんだし、スライムと会話をするぐらいは出来るはずだ。

俺は茂みをまたいでスライムに近づいた。


「うわ! 怪物っす! 食べられちゃうっすよ~!」


 そりゃそうだ。俺はコイツより巨大なモンスター。

ビビるのも無理はない。

だが、これでコイツに言葉が通じる事がわかった。

コイツが何を言っているのか分かったからだ。


「すまねぇな。ちょっと痛いかもしれんが、話をさせてもらうぜ」


 俺はすぐにスライムを捕まえると、がっちりと脇で抱え込んだ。

自分でもびっくりするほどの強い力だった。

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