第20話 No.2!?
乗り越えたとでも思っていたか?それは嘘だ
「二人共駄目でしょ!営業中なんだから!」
「「はい.......」」
「セイくんを巡る争いなのは分かるけれどね!許容範囲ってものがあるのよ!」
「「はい...........(って違うし!)」」
「一時とはいえお店の雰囲気が悪くなっちゃったからね!苦情が来てもおかしくないんだからね!」
「「はい................」」
「お客さんにも迷惑だからもうメッだよ!」
「「はい.........反省します」」
「よろしい!流石我が娘とその従兄弟」
(何が流石なんだろう.........)
あの後、プンプンした美久母に怒られた。本当に怒っていた?のか分からないがまぁ営業妨害みたいなものだったから当然ではある。
ちなみに後で事実を知った店長(おじさん)からマジレス大説教を受けたのは内緒
おじさん..........マジ怖ぇ.........
❖☖❖☖❖
「激動の月曜日が終わったと思ったらまだ4日もある......」
ガヤガヤとした声がひしめき合う教室の一角で俺とノリィは今日も話している。気だるげな俺とは違って、ノリィは絶好調のようだ
「休みがないのが休み......これがG◯Rか」
「当て字して意味不明になってるじゃねぇか」
「お前踊り狂って死ぬぞ?」
「黙れマジシャンお前は引っ込んでろ」
「そう言うなすぐに詰んでやるから」
「今の会話にそれ入る隙間無いだろ!」
「辛辣だなぁ......」
「ネタの入れ込みは犯罪だって幼稚園児でも知ってるからな」
「入れ込みじゃない、見てから反応してるぞ?」
「お前が人間かどうか怪しくなってきたわ」
「純度100%混じりっけのない宇宙人です!」
「あながち間違ってないんだよな」
「真理に辿りついたようだね」
ネタが渋滞していていちいち反応するのも疲れてくる。無限にネタを振る精神はどこから鍛え上げられてんだか
「まぁこんな会話してるのもいいだけどよ、ちょっと聞いてくれや昨日の出来事」
「昨日っていうと........」
「リリィちゃんの一周年記念ライブだ!!」
「あ...........はい」
「軽い雑談をして!歌を歌って!新衣装もお披露目して撮影会もして!記念グッズ紹介したところまでは分かる!分かるだろう!?」
「お、おう......全体の流れは分かった」
「そこからが.............エグかった」
「ほぉ?」
「とりあえず一緒に見てくれ、まじで驚くから」
そう言ってノリィはスマホを取り出して動画配信サイトの映像を流し始めた。
「とりあえずその場面までスキップするぞ」
「分かった」
『はぁい!!というわけでぇ!最初の方で告知した通り!!!今から皆びっくりするプレゼントをさせていただきます!!!』
そこに映るのは、海のような澄み切った水色の瞳をパッチリと輝かせながら、エメラルドグリーンの長髪と首には青と緑のコントラストが美しいヘッドホン、精霊のような神秘的な服装で話す美少女。
彼女こそがリリィ。
主な配信内容は歌と雑談。
彼女の落ち着きのある声とそこから繰り出される美声は多くの人々を魅了し離さない。今では登録者195万人を
『200万人記念でもあるのでかなり盛大にやりますよぉ!!』
登録者200万人を突破したVtuberだ。
『じゃあ行くよ......3!......2!......1!』
『どうぞぉぉ!!!!』
パッ
画面が切り替わってそこに居たのは
2Dイラストそのままの衣装と髪の色をした
実写のリリィちゃんだった。
『どうでしょうか!!ちょっと初めての実写で緊張しておりますがカメラの方大丈夫でしょうか!』
コメント欄が凄まじい勢いで流れているのが見て分かる。無理もない、登録者200万人超えの個人Vtuberが実写を解禁するなんて馬鹿げている。予め自分の姿を世間に晒している人ならまだ良いものの、今まで誰もその姿を見たことのなかった彼女が初めて本体を晒すんだ、荒れるに決まっている。
ただそれは中身が見劣りした場合に限る。
「な.....ほ、本当にこれがリリィちゃんなのか?」
「ああ、間違いねえよ。裏付けるには十分すぎることをしてるしな」
「はは.......マジか........ちょっとこれは」
「ああ、これは間違いなく」
「「可愛すぎるだろぉ!!!」」
同時に俺たちの意見が久しぶりに
「緑髪ってこんなに人と合うもんなのか!?」
「それだけじゃねぇ!!見ろ!ここを!!」
「な..........で、でかい!!」
「そうだ......俺の
「お..........おう」
「推定...............Hはある」
「人間国宝が顕現してるじゃねぇか.........」
「そう、その通り......この美貌とこのπはまさに神々がもたらした奇跡としか言いようがない」
「天は人に五物を与えるんだな.........」
「俺の愛するリリィちゃんならもっとあげてもいい」
「人間のバランス崩壊するぞ」
「案ずるなリリィちゃん1人で釣り合う」
「かもしれないな............」
その後は、実写の状態で撮影会やら歌などをやっていた。毎秒スパチャが来ていたので驚いたというかもう驚き疲れた。
「お前凄い人に昔から目つけてたんだな」
「当たり前田君だろぉ!!俺が推し事する人なんてそう居ないぜ!」
「そ、そうか........」
「何引いてんのたいっちゃん?」
「お前がリリィちゃんにハマったのって登録者どれぐらいの時だ?」
「ん、だいたい1桁ってところだな」
「ひ、ひとけた.........」
「まぁ巡り合ったって感じで」
「参考程度だがファンクラブの会員ナンバーって」
「一桁だな.........もっと言うとNo.2だな」
「へ、へぇ................」
「だからなんでそんな引くんだよ!!」
「お前案外凄いやつだったりとかするのかな?」
「俺はいつでもどこでも凄いやつだぜ?」
「それは無いとだけ言っておく」
「久しぶりにたいっちゃんがデレてきてくれたから確変入ったかと思ったのにまさか外れるなんてな」
「俺がお前にデレることは絶対に無い!!!」
「ふぅん.....新手のツンデレってことかな?」
「近う寄りやがれ.......往復ビンタで目覚めさせてやるから」
「冗談だって!!分かるよな!?」
「分かってるよ...........でも驚いた」
「ん?何がだ?」
「お前がリリィちゃん好きなのは知ってたけどここまで古参のファンだとは思わなかった」
「俺は最古参であり誰よりもリリィちゃんを推している自信がある!」
「それは過言.....とは言えないなお前の部屋見てるこっちからしたら」
「ファンクラブ(リリィ守護隊)も1番最初に入ったからな!」
「1番?会員No.2って言ってたよな?」
「いや普通No.1になるはずなんだけど.....何故かNo.2だったんだ」
「は?ミスだろそれ」
「俺も最初そう思ってファンクラブの運営に問い合わせてみたんだけど」
「どうせ運営の誰かが1番ってオチだろ?」
「いやそうじゃなくて......意図的に残しているらしいんだ」
「残す?って何のために」
「分からない。リリィちゃんが公式ファンクラブを認める代わりの条件がそれだったらしい。」
「へぇーそんな話もあるんだな」
「多分知ってるのは運営かリリィちゃんくらいだろうな」
「そうだろうな」
しばらくして休み時間が終わり授業が始まった
先生が何か言いながら黒板に文字を書いている
俺たちはそれを見て板書を取り
時折混ぜる先生の問いに合わせて相槌を打ち
また続いていく板書を取る。
そんなループする作業の中で
「..............で」
何度書いても
「..............なんで」
何度書いても
「...............なんで残るんだ?」
先程まで見ていたリリィちゃんの笑顔が焼き付いたまま離れなかった。
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