弐
「――死ね」
身長三メートルの大男に変じた
「【
その拳が、消し飛んだ。
「な――ッ!?」
今や正体を現した筋骨隆々の
「キサマ、ヱ―テルはもうないと――」
「【AMEN】ッ!」
さらに、
「ええ、スッカラカンでしたよ」
千晶は南部式の硝煙を『ふぅっ』と吹き散らしながら、笑う。
「体内の、ヱ―テルはね」
「キ、キサマ、謀ッタナァァアアアアッ!?」
「こちらの
さらにもう片方の足を撃つ千晶。
「
「ひゃんっ!? コラ千晶、いきなり尻尾をつかむな!」
咲の麦わら帽子が脱げて、中から銀色に輝く髪が出てくる。
さらに、髪の間からはキツネのような耳。
そして尻からは八本の光り輝く尻尾が生えており、そのうち一本を千晶が左手でぎゅっと握っている。
その一本が、千晶の腕の中に吸い込まれていく。
と同時、千晶が握る南部式が直視できないほどの光を帯びはじめる。
千晶が
「【AMEN】ッ!」
❖ ❖ ❖
「二本も使うな、
「相手は
「減っているだろうが!」
「一晩も寝れば、また戻るじゃないですか」
「いちいち尻尾を握られて、私の尊厳が減るんだ!」
咲が――姉の忘れ形見がぷりぷりと怒っている。
「はいはい、ごめんなさいってば」
千晶はそんな咲の頭を撫でる。
「こら、ごまかそうとするな、莫迦千晶――」
ポカポカとこちらの胸板を叩いてくる咲だが、本気で怒っている
――
彼女の母――千晶にとっての姉――の死に伴い、未熟なまま九尾狐を受け入れた咲は未だ、九尾狐の力を制御できていない。
だから、銀髪や耳、尻尾という形で九尾狐の膨大なヱ―テルが体内から溢れ出てしまっているのだ。
「【オン・アラハシャノウ――
千晶の瞳が光を帯びる。
「う~ん……今のが主力だと思っていたのですが、より大きなヱ―テル反応がいますね。残り七本というのはちょっと心許ない。咲、しっぽ、もっと生やせません?」
「無茶を言うな――ひゃん!? し、尻をまさぐるなヘンタイ千晶ッ!!」
「この撫で心地、良き――へぶぇッ!?」
咲が
「いててて……当たり所が悪かったら死にますからねコレ?」
「死ね、ヘンタイお尻ソムリヱ!」
「咲を引き取ってからもう一年になりますか。最近ますます姉さんに似てきたんじゃありませんか?」
「そ、そうか? お前は母のことが大好きだったから――」
「あー……でも、胸の方はまだまだ」
「死ねぇッ!!」
胸をまさぐってくる千晶の頭部に、咲は容赦なく
❖ ❖ ❖
「
咲と二人、屋敷の中を歩き回りながら千晶が言う。
「
「まさか
「そんな大物に出てこられた日には、神戸が滅びますって。でも、もう何人もの
――阿ノ玖多羅咲訓練生、
「莫迦にするな。
「よくできました!」
「頭を撫でるな、子ども扱いするな! まったく――お前も
「人をバケモノみたいに……」
「バケモノじゃないか」
「バケモノなのはお互い様でしょう。――と、ここですね」
千晶が壁に触れると、
「ん? 何もないじゃないか――えっ!?」
壁が扉に早変わりする。
「初歩的な認識阻害魔術ですね」
「……初歩的とか言うな」
「あはは。これから一緒に勉強していきましょう――あっ」
ドアを開いて、千晶は固まった。
四体の巨大な
そしてテーブルの上には、今まさに
「――――ッ!!」
千晶は、南部式を握る右手に力を込めた。
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