怒りの表現

(連休に一泊で小旅行の計画をしていたが、樹の仕事の都合でやむなく直前にキャンセル。その土曜の夜遅く帰宅した樹)


樹「……(恐る恐る)ただいまー。

 ……柊くん、寝ちゃったのかな……いつもはこの時間だったら起きて待っててくれるのに……そりゃ怒ってるよな、今朝もめちゃくちゃむすっとしてたもんなー。

(家の中を見回す)……ん? でも、なんだかあっちもこっちもピッカピカになってるような……

 もしかして、機嫌直して家の掃除とか念入りにしてくれたのか?……え、ほんと?? やだーー嬉しいっっ!!♪♪」


(ウキウキとスーツを着替えてキッチンへ)

樹「お、ここもなんかいい匂いが漂ってるぞ♪……ん、この鍋だ」

(蓋を開けて鍋の中身をしばらくじっと見つめる)

「…………

(俄かにざあーーっと青ざめて)……思い出した……。

 前に柊くんと大喧嘩して、彼がものすごく機嫌悪い時に作ってたのが、これだった……半端なくじっくり煮込んだ完璧な仕上がりのビーフシチュー……。

 思い切り怒りが煮込まれてる気がして、食べられなかったんだっけ……。

 ってことはこの掃除も……この隅々まで完璧なピッカピカ具合は、それだけ激しい怒りを掃除に注いだ結果……

 としか思えない……

(一気にパニックモード)うあーーー、これまずい!!! マジでまずいっっっ!!!!」



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