DVD鑑賞(『ケータリング』の後のお話です)

(DVD鑑賞会。食事も終わりワインお代わりを重ねつつ夜が更ける)

樹「(画面を見つめながら)この映画のここ、好きなんだ。何度見ても胸が熱くなる」

柊「俺もです。困難を乗り越えてお互いの想いがやっと一つになるところ、思わずじわっときますよね」


樹「……僕たちも、そんな風だったね」


柊「——そうでしたね。

 俺、あなたの傍を離れた時、もう二度とあなたには会えないと……というか、もう二度と会わないと、決めたつもりでした。

 そう決めたはずが……あなたが傍にいないことが、あんなにも辛いなんて。

呼吸をするのすら、重くて苦しくて。

 あなたと同じホワイトムスクの香りを纏った人とすれ違ったことがあって……その瞬間、涙がどうしようもなく溢れて、困りました」


樹「あの時、もし君を諦めていたら、今頃僕は自分自身を全てどこかへ投げ出していただろう。

 何が何でも、もう一度君を取り戻したくて。心からそう願ったからこそ、僕は自分の道を切り開くことができたんだ。

 人生や運命にただ流されていくだけだった僕を、今の僕に変えてくれたのは、君だよ」


柊「……その言葉、そっくりあなたに返します。

 あなたが、ガソリンスタンドでバイトするただのフリーターだった俺を見つけ出してくれたから……だから俺は今、あなたと一緒にこうして幸せの中にいる。

この幸せを作ったのは、あなたですよ」


樹「(思わずじわっと目を潤ませ、柊をぎゅうっと抱き寄せる)

 ——愛してる。

 どんなに時が流れても、この想いは、変わらない」

柊「俺もです。

 あなたへの想いは、決して変わりません。何があっても」


(抱擁から思い切り甘いキス)

樹「……」

柊「……ん…っ……樹さん……

 ……待って」

樹「(耳元で甘く囁く)——わかるだろ? もう待てない」

柊「(きっぱり)いえ、それは困ります」

樹「え」

柊「今日借りてきたDVDの本数から考えると、今夜中にあと2本は観ないと期限までに全て消化することができません。延滞料金は払いたくないですし。それに俺はその後キッチンの片づけもありますから、タイムスケジュール的に今そっちへ流れる選択肢は諦めるほかないかと思われます。

 ということで、残念ですが引き続きしっかり鑑賞していきましょう」


樹「……

『鑑賞会からそっちへ流れていくのがこういう時間の楽しみ方じゃないのか……違うのか!??』」


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