釣り合わない

(柊、休憩室で総務課の桜田に詰め寄られる)

桜田「三崎さん。……私、これまでとどこか違いませんか?」

柊「えっ……えーっと……あっ、背が伸びた……とか??」

桜田「背が伸びる訳ないじゃないですかっ!」

柊「えっじゃあ、んー……」

桜田「……(ちょっと悲しげに)わからないですか?

 パーマかけたんです。ゆるいウェーブに、カラーも少し明るくしてみたんですけど……

 あ、それと今日はもう一つ違うところがあります! 今度は当ててください!」

柊「うーん……ごめん、わかんない」

桜田「もー。口紅です! 前より明るいピンクにしたんです!

 三崎さん、そんなにいろいろ鈍くちゃ、お相手ががっかりしますよ?」

柊「あーその心配はないなー。むしろ俺より鈍いし。ロゴが小さいTシャツとか分かりにくかったりすると、ちょいちょい後ろ前に着てるんだよね。俺が教えるまで気づかないから、時々黙ってそれ見てクスクス笑ってる」


桜田「…………」


(いきなり背後から声)

樹「ん? 楽しそうだね君たち?」

柊「うあっ、いっ……じゃなくて副社長っ」

桜田「あっ副社長! お疲れ様ですっ!」

柊「あーまずい、ちょっと長話しちゃったなー! じゃ俺失礼しますっ!」

(慌ててぴゅーっと逃げ去る)


樹「……(優しく微笑んで話しかける)桜田さん、彼とは何の話だったのかな?」

桜田「えっその、三崎さんのお付き合いしてる方のことをちょっと……その方、歳ももう30らしいのに、Tシャツ後ろ前でも気づかないとか随分鈍いみたいで……何だか三崎さんとぜんっぜん釣り合わない気がするんですけど」

樹「……何!?(思わずキッとムキになる)そんなことはないだろ!!」

桜田「……副社長? どうされたんですか……?」

樹「えっ、あーいや……そっそれはそれでまあかわいいじゃないかと……」

桜田「そうでしょうか? 30でそのズボラっぷりは相当イタいレベルじゃないですか?」


樹「……(内心歯ぎしり)君もはっきり言う子だねぇーははっ!

『くっ……こんなこと屁でもないとは知っててもなんかむちゃくちゃ悔しい……っっ!!』」


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