第1の恋 許されない恋
高校1年の春。私は生まれて初めて【一目惚れ】というものをした。相手は高校の保健の先生。
教室が分からなくて困っていた時に先生が声をかけてくれたのが最初だった。優しい笑顔に優しい声。その全てに私は初めて恋をした。
「先生!先生って恋人とか居るんですか?」
私は先生に聞いてみた。先生は目を見開いたあとにこりと笑みを浮かべ「恋人は居ないけど……奥さんなら居るよ」と告げてきた。私はその言葉に心が傷んだ。あぁこれはしちゃいけない恋だったんだ。この恋は忘れなきゃいけない恋なんだ。私の脳内はその考えばかりがぐるぐると回っていた。先生が「どうかしたか?」といつもみたいに優しく聞いてきたから。私は咄嗟に笑顔を作って「いえ!なんでもないです……!」と告げてその場から立ち去った。それが高校1年の春だった。
時は巡って高校1年の冬。今日は終業式。先生に会えるのは来年の始業式。もう玉砕は決まっているけれど。それでもやっぱりこの気持ちは伝えたくて……気がついたら私は保健室へと走っていた。遠くから「走るな!」と生徒指導の先生が怒鳴っているのを心の中で「ごめんなさい今日だけ許してください」と謝りながら保健室へと走った。
乱れた息を整えながらゆっくりと保健室のドアを開ければ目的の人物はそこに居た。先生は少し驚いた表情を浮かべたあと「どうしたそんなに息を切らせて……怪我人か?」と問いかけてきた。私はゆっくり首を横に振り、息を整え先生の目をじっと見た。少し震える手を隠して私は先生に告げた。
「先生……好きです……あの日声をかけてもらった時からずっと……ずっと好きでした!」
「……そっか。でも俺は……」
「……返事はいりません。奥さんいる事分かってますし……でもどうしても伝えたかったんです。私の気持ちを伝えたかった……」
「……そっか。ありがとうとても嬉しかった」
「先生っ……良いお年を!」
「あぁ良いお年を。また来年な」
高校1年の初恋。そして初めての失恋。でも不思議と苦しくはなかった。「また来年」その言葉だけで私は嬉しかった。許されない恋をしたけれど……私はちゃんと気持ちを伝えられただけで満足だった。さようなら私の初恋。
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