ある竜達と愛おしい民の話2
ウォル達の昔話は一旦昼食を取って中断されたが、また馬で歩いている道中に続きを話してくれた。
「お話の続きして~」
「あぁまだ残っているからな、ずっと話を聞いてるだけだと退屈じゃないか?」
「ううん、面白いよ!エルディランとこの国の事もっと知りたいっ」
「そうか、じゃあ続きはシャールクに」
「任されました!それじゃあ、続きを始めるぜ」
竜と共に戻った人間は、町の人に事情を話した。竜と一緒に行けば新しい土地が見つかると、誰もおらず未開の土地だがそこには平和があると。積み重なる困窮と戦によって疲弊していた町民たちは反対する事無く、竜と共に行くことを選び辿り着いたのがこの地である。
水も無く食料も無い土地だったが争いごとが無いだけで町民たちは十分だった。水が無いなら掘り起こそう、食料が無いのなら育てよう、土地が死んでいるのなら栄養を与えよう町民たちは挫けることなくせっせと新たな楽園を作り始めた。それを指導していたのは町長である人間。その人間の名前は、オーディスまだ25になったばかりの若者だった。
「偉大なる竜よ、私達に安息の地を与えてくれてありがとうございます」
「うむ、それと人間お前の名はなんという」
「はっオーディスです」
「そうか、我はエルディラン名前で呼ぶことを許そう」
「っ光栄です」
「人間達にはこの地は辛いだろう、我が少し手助けてやろう」
エルディランは大地と水、光の属性を持っていたため、大地に栄養を与え水を引く程度の事は簡単だった。より近くで輝く魂を見るため、男はこの人間たちが喜ぶと魂がより輝く。
もっとその輝きを見せておくれ
エルディランの助けもあり、あっという間に人が住める環境になりそれに適応し楽園を築き上げた人間達。周りは砂漠に囲まれこの地に訪れる者は居なかったため、戦に巻き込まれることなくその平穏は続いた。時折戦や国から命からがら逃げてきた者が居たが人間達は快く受け入れ、町は発展していった。
「ありがとうございますエルディラン様」
「突然なんだ?」
「私達はあのまま死を待つだけだったのに、エルディラン様のおかげでここまで楽園を築くことが出来ました、このお礼返せるものではありませんが一生を賭けてお返しいたします」
「・・・・そうか」
「はい、そこでなんですがエルディラン様は欲しいものとか無いですか?」
エルディラン様のおかげでこの町は常に笑顔が絶えない町となった。俺は不敬にもエルディラン様を襲い無理やり力を得ようとしていたのに、慈悲深くそれを許し加護を施し民を救ってくれた。俺に出来る事はまだ少ないが、どんな願いでも叶えたい。貴方様の役に立ちたい。
「欲しいものか・・・」
この地に来てからずっとエルディラン様は民の為に大地を復活させ、魔物を遠ざけ慈悲深く見守って下さった。今ではこの町に欠かせない存在となり、民は全員エルディラン様へ感謝を注ぎ崇拝している。少しでもエルディラン様の役に立ちたい、少しでもエルディラン様を喜ばせたいと。
「では、私が休む場所が欲しい」
「場所ですか?」
「あぁ、ここも良いのだが偶には落ち着ける場所をな」
今エルディラン様は体を縮め、町の中心地に居られている。常に民を見守ってくれている為常に誰かしらがおそばについているようにしているが竜にとって疲れる状況だったのか、それとも民の事が嫌いなのかとふと思ってしまったオーディス
「それは・・・・」
「勘違いするな、私はお前達が嫌いな訳では無い。むしろ、お前達の事を好んでいる。だが、元々私は大地や植物、水に囲まれて生きてきたのだ。ここは、自然が足りない、ここを人間が生活している場所だ勝手に我が好む環境に変えることは不味いだろう?」
竜達は自分と同じ属性が溢れる場所を見つけ出すか、自ら環境を住みやすい場所へと変えるがここは人間が住む場所。それは不味いとエルディランは自重していたのだ。竜が好む場所は人間にとって過酷で綺麗だが、住むには辛い場所だ。人間の住む場所に居るのが辛い訳では無いが、たまには自分の好きな場所で過ごしたい時だってあるのだ。
「我らの事を思って下さりありがとうございます。この地はエルディラン様の物お好きに作り出して構いません。私達はただ従うだけです」
「そうか・・・・では、少しの間ここを離れる」
「はっ」
エルディランはそう言うと逞しい翼を羽ばたかせ町から飛び去って行った。民はオーディスにエルディラン様は何処に行かれたのかと聞かれたが、ただ休みに行っただけど伝えた。それを聞き民は此処はエルディラン様が好む場所では無かったのかと落ち込んだが、ではエルディラン様が好む場所を作り出そうと町を次々と発展させいく。
「全てはエルディラン様の為に」
「きっとエルディランも嬉しかっただろうね」
「クーアは大丈夫なのか?ここは水が少ないだろ?」
「ん~確かに俺は水の属性が強いけど、大地や風も持ってるから大丈夫だよ~」
「良かったクーアは属性が多いんだな」
「うん、相性が悪いのは火と雷ぐらいだね~」
「そうか・・・・・・・」
「?」
ウォルが少し落ち込んでしまったけど、どうしたんだろう?シャールクはウォルを励ますとお話の続きをしてくれた。
そしてエルディランが飛び立ち一ヶ月が経った後、町を大きな影が覆いかぶさった。人々は空を見上げ黄色の鱗をお見た瞬間歓声を上げた。エルディランは何時も過ごしていた場所が少し変わっているの気が付いたが下りれる場所がそこしか無かったため、下りるとオーディスが駆け寄り
「エルディラン様お久しぶりです。ご帰還心よりお喜び申し上げます」
「ふむ、人間の感覚だと久しぶりになるのか」
「エルディラン様がお過ごししやすいように場を整えてみたのですがどうでしょうか」
「うむ・・・・前よりは良くなったな」
エルディランが休む場所には荘厳な神殿のような柱が建てられ、周囲には多くの植物を植え水で囲まれている。床も煉瓦に変わり、一つ一つに細かな装飾がされていた。エルディラン様のためにと職人たちがこの一ヶ月魂を込めて作られた場所は、エルディランも気に入るものだった。
「それは良かったです、職人たちに伝えておきます」
「それで、変わりはないか?」
「住人はまた増えましたが特に病気や異変はありません。町の治安も安定していますし幸せな日々です」
「ふむ・・・・では、オーディスお前が少し町から離れても大丈夫だな?」
「え、大丈夫ですが・・・・俺は何かしてしまったでしょうか?」
「連れて行きたい場所があるのだ」
「分かりました、少しお待ちください」
オーディスはエルディランの望みを叶えるために、急いで自分の補佐をしているエリンに事を伝えると、エリンは「急いでいってください!エルディラン様を待たせるなんてあり得ません!」と顔を鬼にしながら言うので、大慌てで旅の準備を済ませると
「エルディラン様お待たせいたしました」
「うむ、それでは行くぞ」
エルディランはオーディスを背に乗せると、また町を飛び立ちその姿を住民たちは歓声を上げて送った。
「分かった!きっとエルディランは自分の好きな場所に連れてったんだね!」
「お~その通り、何でクーア様分かったんですか?」
「自分の好きな場所は好きな人と一緒に見たいし見せてあげたくなるでしょ?オーディスはエルディランのお気に入りだから、きっとそうだと思ったんだよね」
「なるほど~クーア様の言う通りエルディラン様はオーディス様を自分が作った安息の地へ連れて行ったんです」
やっぱりね!エルディランが作った安息の地ってどんな場所なんだろう?俺が作るとしたら水がいっぱいで植物がたくさん生えてる場所かな~あとウォル達の近くが良いな。
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