第448話 解放
いざ将軍と戦うとなった時、少しでも相手の情報は知っておくべきことだ。そうでもないと格上に対して下剋上なんてできるわけがない。
だから力天使のミハエルに聞いてみたはいいものの、
「すみません、これと言った弱点は思いつきません」
「ですよねー……」
「格下の天使である私から見れば格上の天使は誰しも完璧にしか見えないのです」
そりゃそうか。
「せめて!将軍の戦法とか……戦い方とかはわからない?」
「大鎌を使った肉弾戦がメインです。その身体能力と大鎌術は座天使の中でトップクラス。これにはヴァルキリーの方々も一目を置かれてます」
「ヴァルキリー?」
おいおい新情報出てきたぞ?
「ヴァルキリーとは半神……亜神の一種です。鎧を身につけ、天使の翼を生やし槍と魔法を使う戦闘に特化した亜神です」
亜神かぁ、そういえば私を蘇らせるためにキツネの亜神にあったという話を聞いた。キツネと聞くとどうしてもうちのユーリを想像してしまう……。
「じゃあ、キツネの亜神っていうのは……あれはなんだったの?」
「神社に祀られていたあの亜神ですね。亜神とはいえ、その中でも等級は下の方で『土地神』クラスです」
あーもう頭混乱してきた……。亜神で土地神で?
わからないからツムちゃんわかりやすく説明頼んだ!
《亜神の中には等級があり、亜神の中で力の弱い者は土地神と呼ばれ、中堅クラスが半神と呼ばれ、力の強い者たちが弱神と呼ばれます》
ちょっとわかった。
「あなたの蘇らせるためには神に至らなければいけない。つまり神格を得る必要があるとキツネの亜神は言っていましたね」
「そうそう、結局神……では全然ないよね?」
神に至っていたら今頃現世に居られないもの。
「どうやら神に至るのではなく神格を得るだけで十分だったようです……私の早とちりで『ミハエル』には余計なプレッシャーを与えてしまいました……反省してます」
《神格は文字通り神に至るための資格のことを指します。当然神格だけがあったとしても神になることはできません》
でも、神格って神の証なんじゃ?
《それは亜神含めて全ての神が神格を持っているからそう言われているのです。実際は神格を持っていても神に至れていない者など無数に……いえ、少し盛りました。ちょっとくらいはいるはずです》
へぇ、意外といるものなのね。マレスティーナは持っていそうだな……。
そしてあのクソ女神は神の中でも別格な存在なのだろう?さっさとマレスティーナには神になってもらいたいものだ。
《クソ女神は最低でも上位神もしくはそれ以上の可能性があります。世界を創り管理するのは上位神の役目。そして、上位神は無闇に地上へ干渉できません。主も早く神になってください》
ア、ハイ……。
「そろそろ話を戻しましょうか。座天使である『将軍』はもちろん神格を持っています。ですが、今はまだそれだけです。ヴァルキリーに一目を置かれているとは言っても、それは『座天使のわりにはいい動きをする』程度の認識。つまり、神にはまだほど通りということです」
まあ、モノホンの神様だったらとっくに私はボコボコにされていたことだろう。将軍の戦闘スタイルは前回見た時と変わっているところは特にない様子だし、私は将軍を近づけさせないように魔法をもっと磨くべきか?
「あ、一つ言い忘れていました」
「うん?」
「もし、天使を倒す機会があるのであればこれは知っておくにこしたことはありません。天使には心臓が二つあります」
「はい?」
心臓二個あんの?
《正確にいえば、天使という本体の中に一つ……そして、地上で活動しているような天使とウリ二つの姿にもう一つあります》
え、てことはもし地上にいる将軍を倒せたとしても、天界の方にもう一人将軍がいるから問題ないということ?
《そういうことになりますね。これは上位三隊の天使だけの話なので、下級中級は心臓が一つしかないので安心してください》
安心できるか!
「え、やばくない?普通に今ピンチじゃない?将軍を運よく倒せたとしても、結局は天界の方から話伝わっちゃうっていうかもう伝わってる?」
やばいやばいやばいやばい!
「落ち着け私……いや、落ち着いても無駄か」
こればっかりは私はどうしようもない。
「一番いい結果は、将軍が部下を一新して新しい体制を作ってくれることだけど……」
そうすれば一応根本的な日ノ本の体制問題は解決されることになる。
「大丈夫ですよ」
ミハエルは私の独り言を聞いてそう言った。
「私にはわかります。あなたならきっと彼女を『解放』できるでしょう」
「解放?」
「さて、そろそろ私は戻らなくては。あまり長い時間憑依するとこの子の体が危険なので」
「あ……わかりました」
そう言って力天使のミハエルは気配を消して何処かへと去っていった。
(解放できる?一体どういう意味?)
その意味深な台詞の意味を考えてみたが、その日一日意味を思いつくことはなかった。
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