第447話 役割

 さてさて、これからもまた忙しくなりそうである。というわけで、ツムちゃん先生まずは何をすべきでしょうか?


 《先生なのは主の方では?》


 細かいことは気にしないの。


 ひとまず国王に現在の状況報告は済んだことだし、食料の方はマレスティーナの方が何とかしてくれるらしい。というよりも旧公爵領……つまりうちがいつの間にか農家へと変貌していたのは驚きである。


 食料援助はとてもありがたい。おかげで私はゆっくりと事を進めることが出来るのだから。


 《現状で最も優先すべき事項は革命軍の組織化です》


 組織化と言っても兵士はもう揃ってるよ?


 《その兵士たちはもうすでに戦う気力が残っていません》


 あ、はい。


 《第二に、革命軍の知名度を上げることです。『レオ』がすでに工作に移っていますが、状況証拠だけだと説得力が薄いことでしょう》


 え、なんでよ。明らかに異次元の戦いをしたみたいなクレーターをいくつか作れば十分じゃない?


 《ですが、その状況証拠を見る人がいなければ意味がない……戦場だった場所に足を運ばせるのはよほどの物好きか狂人のどちらかです。故に、私は目撃者を作るべきだと思います》


 目撃者……つまり、反乱軍と革命軍が戦っているところを直接見せなくちゃいけないのか。


「こりゃあ大変だ」


 レオ君のクレーターづくりに変更はないものの、新たな証言を得るためにもここは手の空いているものに動いてもらわねばならない。


「ということで、ライ様。お力をお借りしてもよろしいですか?」


 転移で戻ってきた私は速攻で屋敷へ向かいライ様に会った。


「つまり、私の人脈が使いたいということですね?」


「ええそうです。あと、できるだけライ様自身が手招いたことがバレないようにお願いします」


「それは、我々が疑われないためと」


「話が早くて助かります」


「そういうことなら、私は今すぐ知り合いに声をかけてくるわ。その知り合いからまた別の知り合いへ話を伝えて……ま、真実を話さなければバレようがないし、バレたとしてもお金で買収しましょう♪」


 お、おう……。


 ライ様にはライ様の知人の知人のそのまた……と、そして最後に協力してくれるその誰かに馬車で戦場近くへ向かってもらうことにしよう。


 別に馬車じゃなくてもいいが……この国には少なからず冒険者がいる。そしてもう一つ、傭兵もいた。


 傭兵とは冒険者とは少し違い、冒険者が対魔物に対し、傭兵は対人が主な仕事だ。


 冒険者か傭兵そのどちから、できれば両方にその光景を目撃させる。できるだけ目撃者の人数は多く、さらに発言力があり、なおかつ私たちとのかかわりが薄い人を集める必要がある。


 ここだけ聞くととても大変な作業に聞こえる。まあ、実際大変だろう。


 《ついでに適当な一般市民を拾って馬車へ乗せることをお勧めします》


 いざという時のために市民の声も反映!これで完璧!


「問題は反乱軍と革命軍が戦うということよね」


 反乱軍だった人を革命軍に仕立て上げる手はずになっているからなぁ。同時に存在できない二つの組織をどうやって戦わせるのか……。


「それはまたおいおい考えていかないと」


 まだ日にちはある。根気強く考えていれば何か思いつくだろう。


 なので、ツムちゃんあとは任せた。


 《は?》


「よろしく!」


 《……かしこまりました》


 流石ツムちゃん、頼りになる。


「今日はちょっと疲れたな」


 朝から色々とやっていたらもう夕方だ。


「全く、大人は大変ね」


 《仮死状態期間を引けば、主はまだ子供です。ガキです》


 おっと?言葉のとげが痛いぞ?


 ごめんごめん、私もちゃんと考えるよ。人任せにはしない……人なのかはわからないけど。


 《それでいいのです》


「そうだ、まだ手の空いている人いるじゃん」


 急いで借りている家へと戻る。


 部屋の中へと戻るとそこにはもう反乱軍の代表としてきた男の人はすでに帰宅したようで、兵士たちの反応も消えていた。


 そこにはユーリとミハエルがただただ気まずそうにしていた。


 ユーリは特に気にしていないものの、ミハエルは苦笑いでどうしたものかと考えていそうな顔をしている。


「ミハエルさん!」


「あ、はい!なんですか?」


「ミハエルさんには確か天使の方の『ミハエル』がいるのよね?」


「ええ、私はその方の力を少しだけお借りすることが出来ます」


「もしかして、天使と交代できたりする?」


「交代ですか?」


 つまり、天使ミハエルが喋ることが出来るのか、ということである。


「出来ると思います」


「じゃあちょっとお願いしてもいい?」


「分かりました」


 特にこれと言った特別な変化は訪れない。だが、私ははっきりとミハエルのhなっている気配が変わったのを感じた。


 どこか神聖そうな気配がミハエルの体から放たれる。


「お呼びですか?」


「あなたが力天使のミハエルさん?」


「いかにも」


 話している時の声もそのまんま一緒、見た目も同じことが相まって本当に違いが分かりづらい。


「力天使ということは、座天使は知っている?」


「勿論。神の台座……つまり、世界を運びし者。上位天使に数えられる方々です」


「じゃあ、この国にいる座天使についても知っているわね。少し教えてほしいことがあるの――。

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