第18話


 ふむふむ。


 俺は受け取った書類を読んだ。


「フィーも読んで」


「はい、これは?」


「教会から奪ってきた」


「え……、わかりました。レスト様がそう仰るなら」


 一瞬動揺したもののフィーは首肯して読み始めた。


 しばらくして。


「これが私の信じてきた教会の真実ですか……」


「それに書いてることが本当ならそうなんだろう」


「信じられません」


「何が書いてあったんですか?」


 スイネが俺に尋ねる。フィーが口を覆って戸惑っているのがよほど刺激的だったのか目が座っていた。


「教会の悪事だよ。野盗とか殺し屋とのパイプや国への賄賂。身近なところだと下っ端女性信者へのあれとか」


 一応女性の前なのではぐらかしたが伝わったらしい。


 スイネとフィーの表情はあまり良いものではなかった。


「許せません」


 資料に目を通したフィーが呟く。


 これほどの悪事だ。聖女様からすれば卒倒ものだ。


 でもな、これだけじゃないんだよな。


 俺は仮説の段階ではあるものの限りなく真実に近いであろうことを二人に話すことにした。


 助けてもらった二人になら話しても良い。


 と、その前に。


「俺がどうして神の力を使えるか知らないよな?」


 以前スイネには教えたがフィーはまだ知らないはずだ。


「レスト様は神の代行者のような存在だと思っていました。でなければあれほど神聖を帯びられるわけがありません」


 神に頼まれたと言えば神の代行者でもあるのか……。神喰らいでも代行者どっちでもいいけど、正直に言ったほうが良いか。


「似てるけど違う。俺は女神を食べて力を奪ったんだ。常識的に考えられないかもしれないけど、これが真実だ」


 俺はフィーに何を期待しているのだろう。受け入れて欲しいのか、それとも拒絶して欲しいのか。


 ハッ、受け入れて欲しいに決まってる。


「へー、そうなんですか」


 スイネは興味ないとばかりに言った。


「私は……、女神さまの力を最も有効に使ってくださるレスト様に渡ってよかったと思います」


「スイネ、フィー」


 俺はなんだか嬉しくなって、家族を失ってからのことを二人に話した。



 それからしばらくして。


「教会の悪事でまだ話してないことがあったんだ」


 歓談していた中、急に思い出した俺は話題を戻した。


 二人は表情を変えた俺に合わせて真剣な眼差しを向けてくる。


「多分、教会に居た司教は他の宗教の信者だ。俺の力に抗うことができる手段はそれしかない」


 女神の信者であるなら加護の量を俺が調節できる。だが、他の神の信者の場合は俺の管轄外なのでどうしようもない。


「魔物を街に呼び寄せたのもそれが理由と思う。そうなると、街の人を殺して捧げるってのは、女神じゃなくて他の神に捧げようとしてた可能性が高いな」


「二重信者って可能なんですか?」


 スイネの問いにフィーが答える。


「神の特性によります。ですが、他の宗教に潜伏できるような信者を持つ神の噂は僅かに聞きます。恐らくそれでしょう」


 他の宗教の信者と仮定するなら色々話が通る。


 俺が女神の力を使っても聖職者たちから上手く情報が取れなかったのは他の神の加護で邪魔をされていたのだろう。


「やるしかないか」


「やるって?」


「殺しに行くんだ」


 もしかしたら上層部は全員他の宗教に染まってるかもしれないな。


 全員殺してやるよ。

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