第17話
街に侵入してきた魔物は一掃され、街の人々の傷は全て治療された。
まさに完全勝利。
「さすがは女神の力だ」
俺はくたくたになった身体を全力で飛ばしていた。
力を出し尽くしてしまったがために飛ぶので精いっぱいだ。
「なるべく人のいないところが良い……」
俺が生きていることはまだ知られていないはず。
最後の力を振り絞りながら俺は崩れた家屋の陰に着地した。
翼を片づけておおよそ神と勘違いされるものを全て仕舞う。
「これで身バレは防げるか」
「お疲れ様です。もうバレてますよ」
は?
俺はダラダラの首を声のした方へ向けた。
「…………聖女様がどうかなさいましたか?」
「先程は名前で呼んでくださいましたよね? フィーと呼んでください。そうでなかったら大声を出しますよ」
周囲を見るにまだ俺が神の力を使っていたとはバレていないようだ。
「悪かったよフィー。……これでいいか?」
フィーはパァっと満面の笑みを浮かべ、俺に飛びついてきた。
「ありがとうございます。私はあの時からずっとずっと貴方様をお慕いしておりました。……やっと、やっと、私は今幸せを感じてます」
ぎゅっと俺に抱き着いてくる。
痛いなぁ。俺は今へとへとなんだ。
「俺のことも名前で良いよ。レストって言うんだ」
「レスト、レスト様ですね。わかりました。それでレスト様」
何度か口の中で俺の名を繰り返し、佇まいを整えて改めてフィーが俺の名を呼んだ。
「なに?」
「私はレスト様をお慕いしております」
「はい。そうですか」
「……怒りますよ?」
「怒ってどうぞ……。うそだって、痛い痛い」
再び俺に抱き着き、これでもかと締め付けてくる。
そんなほほえましいやら、見苦しい時は別の声によって止められた。
「何してるんですか?」
「お疲れスイネ。おかげで助かったよ。ああ、そういえばフィーにはまだ言ってなかったな。助かったよフィー」
「当然ですよ! 私はレスト様のためなら何だってしますから!」
「何してるんですか?」
スイネが立ったまま見下ろしてくるせいで、目元が暗く見えてしまう。
「怒ってる?」
「さあ? どうみえますか?」
「怒ってるように見えます」
俺が言うとスイネは俺に張り付いているフィーに掴みかかった。
「離れてください。レストさんが迷惑がってます」
「ああ、レスト様。レスト様。どうか私の気持ちを受け取ってください。もうレスト様なしでは……」
「離れてください!!」
スイネが更に力を込めてフィーを掴んで引きはがした。
「私とレスト様の愛を割こうとしないでください。貴方は誰ですか!?」
あー、これは長くなるやつか。面倒だ。
「やめやめ、そういった話は俺がいないところでしてくれ。それよりもスイネ、書類はあるか?」
あの時は時間がなかったが今なら読める。
俺はスイネから教会から持ち去ってきたものを受け取った。
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