トランス
「それにしても本当にすごいわね。よくできてるわ。楓くんかなり器用のステータスが高いでしょ?
少なくともEランクダンジョンに潜るには十分すぎるくらいにレベルは高いと思うんだけど、どうかしら?」
「まぁ、そうですね。一応これからシルバー資格の試験を受けることになってます」
「やっぱり!それなら納得だわ。これだけうまくキラースパイダーの糸を扱えるのって、あまりいないのよね」
これはいいものが作れそうだわ~!そうクネクネしながら言ってる雅さんのテンションはかなり高い。
そんなに嬉しかったのか。
「だけどそれだけじゃないでしょう?器用のステータスが関係するような武器を使ってるのでしょう?」
「そこまでわかるんですか?」
「もちろんよ。アタシだってこれまで多くの探索者を見てきたのよ?
それに探索者の装備のデザインだってしてきたんだから、一目見ればどんな戦い方をしてるのかってことはだいたいわかっちゃうわ~」
さすがプロと言うべき……なのか?
「そうそう、楓くん。この後時間あるかしら?」
「えっと、十八時からヒール草を採集するために新緑のダンジョンに行きますけど、それまでは暇ですけど」
「ならよかったわ。さっきの依頼のお礼に少しだけアタシの作品を見せてあげる。興味もあったみたいだしね。ちょっと待っててちょうだい」
雅さんは自分のデスクらしき場所に戻っていくと、そこから一着の服を取り出した。
それはなんというか……ゴスロリっていうのかな?
そんなフリフリした服だった。
「あ、あの、これはいったい……」
「んふふ~可愛らしい反応してくれるわねぇ。
この服はね、ある探索者の依頼で作ったものでね。アタシのデザインした服の中でも最高傑作と言えるものなのよ」
「へぇ……」
ゴスロリの服を着てる探索者は思い浮かばないから、その依頼したら探索者がどういう人かはわからない。
だけど、雅さんが見せてくれた服は、確かに服に関しては完全素人な俺から見ても良いものだとわかった。
一目見ただけで伝わる凄さがある。
「ねえねえ楓くん。この服を依頼してきた探索者はどんな子だと思う?」
雅さんがニヤリとしながら俺に問いかけてくる。
「うーん、そうですね……すいません。性別が女性という」
「ふふ。そうね。これを依頼してきた探索者は
「乙女ですか……」
まあ、そうだよな。
見た感じ、見た目だけじゃなくて強度もかなり高そうなことがわかる。素材はわからないけど、それなりに高ランクモンスターの素材だと思う。
話が噛み合ってないような気がしないでもないけどそこは気にしない。
「ええ。変わりたいって願っていたわ。だからこの服を作ってあげたの」
「そういうことですか……」
雅さんは、依頼人のことを思い出しているのか、優し気に微笑んでいる。
「この会社の名前にもなってるトランスはね、トランスフォームから取ってるの。トランスフォームは『変化』って意味があったりするわ。だから、この会社は『変わる』ことを大事にしてるのよ。
だから変わりたいって依頼をしてきた人には全力で手助けをするの。それがアタシの仕事であり生きがいでもあるのよ」
「雅さん……」
ヤバい、さっきまでどちらかというとネタよりだった雅さんがめちゃくちゃかっこよく見える。
「だからこうやって依頼を受けてくれて、高品質の素材を持ってきてくれる楓くんみたいな子とは縁を繋いでおきたいわ・け」
雅さんが俺の肩に手を置いてきて耳元で囁いた言葉を聞いて俺は確信した。やっぱり雅さんはただの変t……コホンッ。ただのおネエさんだなって。
「えっと……雅さん離れてくれませんか?」
「あらやだ、ごめんなさい。ついね」
雅さんは俺から離れて、自分のデスクに服を戻して、また帰ってくる。
「それじゃあ早速作業に入るわね。楓くんはどうする?見ていく~?」
「せっかくなので見学していってもいいですか?」
「もちろんよ。遠慮しないで見て行ってちょうだい」
こうして、雅さんの服作りを見させてもらうことになった。
雅さんはスキルと技術どっちも高いのかその仕事ぶりは凄まじく、デザインらしきものを見ながら糸から布へ。布への染色。型紙も使わないで布を切り、手縫いで縫いつけて一着の服を作り上げた。
マジで凄かったです。(小並感)
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