依頼受領

 SPを割り振って新しくスキルを取ったり、スキルレベルを上げた翌日。俺はまたダンジョン協会の支部に来ていた。


 そして、今は支部のエントランスに設置されてるパソコンの前に座っている。パソコンは複数設置されていて、その全てが木製の仕切りで区切られていた。


 これはダンジョン協会が設置している、企業や団体、個人の依頼クエストを受けたり、検索できるパソコンだ。

 このパソコンには、武器エリアのショーケースに付いてるものと同じスキャナーが付いていて、探索者資格を持っている人は誰でも依頼を受けるために使うことが出来る。


 それで、今日俺がここに来た理由はその依頼を受けるため。


 このパソコンで見れる依頼は全て、ダンジョン協会が管理しているから安全な依頼しかない。

 だから、気づかないうちに犯罪に加担したりすることにはない……はずだ。多分。最近その信用は俺の中では無くなってきてるから断言できないけど。


 一応依頼は協会を通さなくても、個人同士でネットなんかでやり取りは出来るらしい。

 だけど、それだと報酬をごねたり、騙そうとする奴もいるから、基本的に依頼は協会を通したやつの方が安心とのことだ。(受付の人談)


 さ~てと。どれが良いかな……


 依頼にも種類があって、特定のモンスターの素材を納品したり、指定されたものを採取してきてほしいというのがある。

 ランクの高い依頼だとダンジョンに潜る研究者なんかの護衛依頼なんかもあったかな。


 そして、今回この依頼を俺が受けようとしているのは端的に言ってしまえば、お金を稼ぐため。

 いや、別にお金は全然困ってないんだけど、稼いどくに越したことはないだろ?


 結構消費するときには消費するし。

 まだ疾走の短剣はしてはいないけど、メンテナンスなんかもするだろうしな。あとは最悪打ち直ししたり。

 正直どれだけお金を使うことになるかなんて想像もつかないからな。出来る限りお金は稼いでおきたい。

 それに、依頼は報酬でおまけのアイテムももらえることもあるからな。


 あと、魔犬のダンジョンでもレベルがだいぶ上がりにくくなってきていたのもある。

 なら、せっかくだしお金を稼いでおこうという考えだ。


「さてと、俺が選べるのはDランクまでの依頼だからな。良さそうな依頼はっと……」


 依頼にもランクが設定されていて、そのランクはダンジョンと同じようにランクが設定されている。


 このランクも生まれたダンジョンを協会がランク付けするように、依頼も様々な要素から協会がランクを付ける。

 まあ、ここまで言えば察せるかもしれない。

 ええその通り。Dランク以上の依頼もシルバー資格が必要になってます。


 まあDランク以上となると、Cランクダンジョンに入る必要のある依頼だから、それは当然と言えば当然なんだけど。




 とりあえず依頼がずらっと並んでいる画面を、マウスを使ってスクロールして良さそうな依頼を探していく。

 えっと。Dランクより下の依頼でも割の良いやつは……

 スクロールして、依頼の報酬、内容、場所、備考欄をざっと見る。


「お?これ良いんじゃないか?」


 そして、依頼の一覧を見ていく中で一番俺に良さそうな依頼を見つけた。


 依頼の名前はヒール草の採集。

 依頼内容は、ヒール草と呼ばれる薬草をできるだけ多く持ってきてほしいとのこと。報酬は集めたヒール草の量によって決まるらしい。


 そして、調べてみたらヒール草が採集できる近場のダンジョンはEランクダンジョンの新緑のダンジョン。

 新緑のダンジョンは結構近いし今日から行けそうな場所にある。


 正直この集めたヒール草の量によって報酬が決まるのはどうかと思ったが、それでもEランクの新緑のダンジョンなら俺でも余裕だろう。

 今はあまり無理もしたくないしな。


 それに何より……


「一本につき200円か……このダンジョンなら余裕だしちょうど良いな」


 ヒール草一本の値段がかなり上がってる。

 確かダンジョン協会で売るなら100円くらいだったはず。


 それを考えたら単純な値段で二倍だ。


 こんな好条件、なにか裏があるのかとも考えたけど、依頼を出している企業を見てとりあえずその考えは消した。

 依頼を出していた企業は、結愛も所属しているらしい『アストラル』。


 まあ、協会は信用が無くなっていってるけど『アストラル』は信用とまではいかないけど、有名な企業だから大丈夫だろ。


 てか備考をよく読んでみたらスキルの技術向上のため、ポーションを作るのに必要なので集めて欲しいと書いてあったな。


「なるほどな……そういうことだったか」


 理由もしっかりしているし、スキルのレベル上げということなら集めてほしい数が指定されていないのも納得だ。


 基本的にスキルっていうのは取っただけじゃ満足に使えない。


 スキルは使ってこそ効果を発揮するもので、スキルだけじゃなくて本人の技術というものも必要になってくる。

 実際、俺が【短剣術】のスキルを上げていた時だって体に慣らしていってからだった。


 例えば、【短剣術】のスキルレベルが上がると振る時のキレが格段に良くなり、体がスムーズについていくようになる。これがどれだけすごいことなのかは、実際にやってみればわかると思う。


 だけど、それを実感する時はやっぱり実際にそのスキルに関係することをしている時だ。


 俺の場合は【短剣術】と【弓術】の二つ。

 スキルは使っていると、直感的にここはこうした方が良いなとか、こっちの方がやりやすいとかが分かってきて、少しずつ使いやすくなっていくものだ。


 だから、一気に【短剣術】と【弓術】のスキルレベルを上げた時はしばらくスキルに体が振り回されたりもした。


 だから、結局スキルはひたすら練習あるのみ。

 使っていけばスキルレベルは上がらないけど技術は向上するし。


 それにしても、スキルの技術向上のためにヒール草を採集ってことは、【調合】か【錬金術】持ちの人が使うのかな?


 企業に所属してる探索者もいるんだろうけど、練習にはいくらあっても良いもんな。

 ヒール草はポーションに使われるから、かなり需要があるからそうでもしないと協会なんかに売られて終わりだし。


「まあ、これでいいかな」


 特におかしなところもないし、それだけヒール草を求めていた理由も理解できた。


 そして、カーソルを移動させて依頼の受注ボタンを押す。

 受注が完了しましたというメッセージが画面に表示された。


「さてと、じゃあ早速行くとしますかね」


 ついでに新緑のダンジョン関係の依頼を受けて、コボルトの爪がほしいという依頼もあったからそれを受ける。

 コボルトの爪がほしいという依頼に関してはすぐに受付に【アイテムボックス】からコボルトの爪を出して依頼を完了した。


 それから新緑のダンジョンに向かうのだった。


 ちなみに、コボルトの爪の依頼に関しては十体分で報酬は30000円だった。

 意外と高かったです。

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