第39話 スキル保持数が増えた!

 ガガガガガガガガ。

 アサルトカービンが火を吹く。

 レッドキャップたちが銃弾を受けバタバタと倒れ、光の粒と化していった。

 

「父さん」

「ん。蓮夜もやりたいのか?」

「絶対にお断りだよ。うるさすぎる。没収ね」

「まだ一回しか連射してないんだが」


 キャンプを発動。父からアサルトカービンを取り上げ、扉の中に放り込んだ。

 紬から銃身が熱いと文句が来たけど、気にせず扉を閉じる。

 

 何てことがありながらも、途中で父に耐性強化をしてもらいつつ70階に到達。

 ここでハタと名案が浮かび、ポンと手を打つ。

 

「父さんもしばらくキャンプの中に入っててもらえるかな?」


 と言いつつ、扉を開け中の紬に声をかける。

 

「もう出番カナ?」

「今の紬だったらソニックスクリーンで何階くらいまでいけそう?」

「おお。キミにしては冴えてるネ。98~100階で丁度いいところがあったら。それまでソロで頑張る?」

「うん。そうする。と言いたいところだけど、85階からは手伝ってもらえないかな。というわけだから、父さんも少し休んでて。そこのおもちゃを触ってていいから」


 ぼりぼりと頭をかき、扉の中に入る父であった。

 彼もそれなりに消耗しているはずなので丁度いい。

 俺? 俺は入口にいた頃と変わらないさ。吸収で体力全快だからね。

 

 98……は死霊系。99……は爬虫類系。100は人型だった。

 ちょっと苦しいが101階も見てみたらボーナス部屋発見! ここは物質系という原初の塔にしかいない系統のモンスター階だったのだ。

 物質系は50階以上でしか出てこないみたいで、原初の塔でも中々お目にかかることはない。

 特徴は硬い。弱点が無い。タフ。その代わりに特殊攻撃がなく鈍重で、ひたすら探索者の体力を奪ってくる嫌らしいモンスターが多い。

 この階も御多分に漏れず、そのようなモンスターだった。

 エメラルドぽい石でできた巨人とルビーのような石でできた巨人の二種類が出現する。

 鈍重とはいえ、99階の爬虫類よりは早い。この辺は101階の他のモンスターに比べて、という注釈がつく。

 何度もになるけど、モンスターは1つ階を登ると結構なステータスアップをするんだ。2階下のモンスターより少し早い程度なら、かなり鈍重であると言える。


「ここだあああ。ここで狩り続けるぞ」

「ゴーレムだよネ。アレ」

「何ゴーレムか鑑定の魔法もスキルもないから分からないけど、5メートルの人型だったらゴーレム系だよな」

「うん。アレ相手ならソニックスクリーンじゃなくてワンタイムの方が消耗が少ないカナ」

「一撃が重いものな。まあ。あいつらなら問題ない」


 父にも出てきてもらって、いざレベリングタイム開始だ!

 エメラルド色とルビー色の巨人ことゴーレムが都合四体。フェイタルポイントはエメラルドが右の足元で、ルビーは首の付け根と体の後ろ側じゃないから狙いやすい。

 

 ドシンドシンと迫って来る間にナイフを四本投擲しあっさり仕留める。

 フェイタルポイントはどれだけ硬いモンスターだろうが、市販品の投げナイフで貫通するし一撃で仕留めることができるのだ。

 楽勝楽勝。どんどん狩るぞ!

 油断しそうになると父と紬が声をかけてくれる。やっぱりパーティっていいよな。

 俺はずっとソロだと思っていたけど、浅岡の影がいてくれた。慢心は敵だと分かっていても、すぐに調子に乗ってしまう俺を諫めてくれる人たちがいて今がある。

 もちろん、ご意見番として連れてきたわけじゃないんだけどな。

 二人に手伝ってもらう場面は必ず出て来る。そのためにもレベル上げ必須なんだ。

 

「分かっていたが、とんでもないな。フェイタルポイントって奴は」

「だよネ。モンスタースキルを自分のものにできる方もずるいと思うけど、フェイタルポイントほどじゃないよネ」


 後ろの二人が何やら言っている。俺もその通りだと思う。

 フェイタルポイントがあるから、どれだけ強いモンスターだろうが倒すことができる。

 吸収でステータスがいくらあがっても敵に攻撃が通らなきゃどうにもならないからね。

 

「モンスターが出て来なくなるまで狩る。もし体力的に問題がで出来そうだったら言ってくれ」

「はあい☆」

「必要ないかもしれないが。発動 スリーアローエクスプレス 敏捷」


 父の強化スキルで俺たち全員の敏捷が大幅にアップする。

 必要無い? いやいや、大助かりだよ。これでより早くモンスターを殲滅することができる。

 

 ――小一時間ほど経過。

 もうモンスターが出て来なくなった。

 以前、101階でレベル上げした紬はそれほどでもないけど、父のレベルは結構上がったぞ。

 紬がレベル120で父が110だ。紬の時より経験値効率が良い気がする。


「蓮夜くん。たぶんもうこれ以上レベルが上がらないヨ」

「階層ごとにレベル上限があるんだっけ」

「うん。上限に達すると『分かる』って聞いてたけど、ほんとだったヨ。分かる」

「そうか。一旦軽食を取ってから登ろうか」

「そうだネ。そうしよう」


 キャンプの扉を開け、中から食糧の入ったリュックサックを取り出す。

 俺にとってもここでのレベル上げは実りが大きいものとなった。

 

 まあ、見てくれよ。

 

『名前:滝蓮夜

 ギルド:影兎シャドゥラビット

 レベル:50

 力:4870

 敏捷:3630

 知性:2420

 固有スキル:吸収

 モンスタースキル:エイミング、真・隠遁、キャンプ、全耐性(大)、力溜め、剛力』 

 

 全耐性(大)が手に入ったんだ! エメラルド色のゴーレムから吸収できた。

 力溜めと剛力はどちらも力を一時的にアップさせるモンスタースキルなので必要ない。

 もう一つ気が付かないか?

 そう、一度にストックできるモンスタースキル数が5から6になったんだ。レベルが上がることによってストックできるモンスタースキルの数が増えると見ている。


 持ってきた携帯食糧(チーズ味)をモグモグしつつ、お互いのステータス状況について情報交換した。


「俺は強化率が上がった程度だな」

「110パーセント上がるんだよな」

「まあな。俺は蓮夜に強化をするためにここにいる。上がれば上がるほど力になれる」

「父さんの身の安全もちゃんと考えてくれよ」


 誰に言ってんだとばかりに父が親指を立てる。

 もう一方の紬であるが、ぶーっと頬を膨らませていた。

 

「何か問題があったの?」

「ううん。蓮夜くんが全耐性をゲットしたから、もう紬ちゃんは要らない子?」

「全くもってそんなことはない。上に登れば登るほど、スクリーンの魔曲が肝になってくるし、ステータスアップの魔曲も同じくだよ」

「蓮夜くんのサポートがパパで、私はパパを護る……。蓮夜くんがよかったああ」

「こらこら」


 あと、そこ。口笛を吹いてはやし立てるんじゃないってば。

 なんて感じで和やかな雰囲気で軽食を取る。

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