サルージャ・イノスは入院している妹の治療費を稼ぐため、王立ハルバーク騎士団に所属していた。しかしサルージャの上司は性格に難があり、サルージャを便利な道具のように扱っていた。
「別にこれは脅しじゃぁないんだよ? 俺の親戚に、たまたまファリシアちゃんの入院する医療機関の関係者がいるってだけの話さ。俺の言うことが聞けなかったら、どうなるか分かってるよな?」
可愛い妹のため、体を壊してでも騎士の仕事をこなしていたサルージャだったが、ある日、仕事中に意識を失って倒れてしまう。生死の境を助けてくれたのは、偶然その場に居合わせた幼馴染エレーナだった。
「うちに来ませんか?」
エレーナのいる新しい職場に行くことにしたサルージャ。顔合わせ初日、彼は言語魔術師として規格外の能力を見せ、みんなから尊敬される存在になった。さらにエレーナが紹介してくれた病院に良い治癒術師がいて、妹の退院が予定よりも早まるという良いことづくめ。
一方その頃、便利に使っていたサルージャに去られてしまった上司は、冷血漢と有名な騎士団長と一緒に魔獣討伐に参加しており……。
これは、夢を失い絶望に苛まれていた才能ある少年が、幼馴染と再会し、希望を取り戻して今を生きる物語。